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絶縁

徐々に氷に覆われながら、颯妃はこの場にいる全てを見た。


「愚かしい者達、己の賎しさを後悔するといい」


胸の辺りまで氷つき、それでも睨む事は忘れない。


そして最後に優奈を見て


「認めない。優奈を絶対に認めない、拒絶する」


低く呟いた


すると胸の奥がカッと熱くなる。


それと同時に優奈も同じく胸を軽く押さえて不思議そうにしているのを見ながら、颯妃は完全に氷に覆われた。


白い世界に一人ぼっちで立っていた。


私はどうしたんだろう?


何故か霞みがかっていて思い出せない。


苦しかった気がするが


ぼんやりとしていると、遠くから音が聞こえてきた。


なんだろうか?


気になり一歩踏み出せば、景色は一気に変わった。


赤い夕日に照らされ小さな少女がこちらに背を向けていた。


声を掛けようか迷っていると少女が振り返った。


まだ幼いにも関わらず少女は美しかった。


サクラ色の唇がゆっくりと動くが声は聞こえない。


おかしいのは分かっていたが、唇の動きを辿り颯妃は言葉を完成させた。


「もうあの世界の人間に我はいらないようだ。


去ろう、あんな世界など消えてしまえば良いのさ」


優しい微笑を浮かべながらの言葉に颯妃は少女を凝視する


すると少女がこちらに近寄って、いや違う


知らず知らずに自分が少女に近付いていたようだ。


正面まで来て颯妃は急に涙がこぼれだした。


涙を拭こうとしたが止まることはなかった。


そんな颯妃を少女は優しく抱きしめた


「もう大丈夫、悲しくて苦しいかもしれないけど


あともうちょっとの我慢だよ


来るからね」


ああ、苦しいんだ。


胸の奥底から冷たくてそれでいて掻きむしりたくなるような痛みが溢れ出してきて


我慢するばなんとか出来るのか?


来る?何が来るって言うんだ。


「とても優しい愛をくれる方、すべてを深淵に導く方」


よく分からない。


いや、その前にあなたは誰?ここはどこ?


私は、私は、


思考が追い付かず、パニックが起きた。


少女は頑張って抱きしめる力を強くし、その力強い瞳を颯妃に合わせてきた。


「落ち着いて、ここは貴女にとっては安全な場所よ


誰も貴女を傷付けない。」


安全?傷付けない?


そこでぼんやりとしていた記憶が鮮明になり、溢れた。


「そうだ、私は優奈に、奴らに」


温かい手が背中をさする

「ずっと、ずっと待っていたの


貴女がここに来てくれるのを」


淋しげに笑い、ゆっくりと少女が浮き上がり


颯妃を覗き込む。


「最後の答えよ




私は、ね






貴女自身よ、すべてを記憶するために分かたれた貴女」


頬を軽く触り、少女いや颯妃自身が包み込むように光を広げて行く。


「さぁ、私達が一つに戻る時間よ


恐れないで、次に目覚めた時貴女は・・・・・」


そして颯妃は光に包み込まれながら、ゆっくりと覚醒を始めた。

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