表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

苦しみ

林檎を隠し、力尽きたように横になる


今日はやる事はないゆっくりと休もう


瞼を閉じ、まどろみ始めた頃


叩きつけるように部屋のドアが開く。


瞼を開けることも億劫だ。


だが無視するわけには行かない。


瞼を開けようとしたが、次の瞬間に訪れた衝撃でベットから転がり落ちた。


「良いご身分だな。訓練を無断で休んで昼寝か?


一から教育した方が良いか?」


髪を掴まれ、持ち上げられた。


見上げれば、そこには大嫌いなマルスの姿が映る。


痛みはある


でも麻痺したかのように颯妃の顔色は変わらない。


「来い、その根性を直してやる」


一度髪を離し首元を掴み、マルスは歩き出す。


抵抗する力などない颯妃はそのまま連れて行かれかけ、途中でマルスが止まる。


「この匂い、クラベの匂いか?なぜこの匂いが」


辺りを見回し、マルスがクローゼットに近付き開けた。


そして、隠すように棚の奥の白い布の塊を見つける。


それを剥ぎ取り出てきた実に目が見開かれ


颯妃を床に投げ飛ばした。


「お前、クラベを、森に入ったな」


激しく怒りだしたマルス


床にうずくまる颯妃に追い打ちをかけるように蹴り上げる。


「この実は巫女様だけのための実だ


お前ごときが食べていいものではない


恥を知れ」


罵倒しながらマルスは颯妃を蹴る。


しかし、無抵抗で何の返事も返さない颯妃に苛立ったのか


転がした。


そして、気付く。


弛緩した身体、口の端から血が少量流れていた。


膝をつき、首筋に手で触れ脈を確かめる。


脈は弱いが感じ取れる。


生きてる


よかった、もし死んだのがバレたら巫女様が悲しまれる。


こんな奴のために巫女様が涙を流されるのはとても許せない。


仕方ないしに生かしてやってるのだ。


鼻を鳴らし、颯妃を睨みつけてから去っていく。


そう床に放置して


颯妃が目を覚ましたのはそれから数時間


完全に身体は冷え切り、痛みで動くことも出来なくなっていた。


目を開けるも何かおかしい。


半分真っ暗で何も見えない。


見えていた世界


その世界が半分暗闇になっていたのだ。


もう夜なのだろうか?


激痛に堪え、身体を起こし、辺りを見渡すがやはり左側半分闇が広がっているのみ


「窓のところに、いかないと」


必死に身体を動かし、窓に向かっていく。


だが、躓いたりぶつかったりして平行感覚が定まらない。


瞼を閉じ、それから開くが暗闇だ


見えない


左目が見えなくなってしまった


衝撃が身体を震わせ、その場に崩れ落ちる。


「ど、どうして?私が?


ただ優奈を守りたかっただけなのに


何故こんな事にならないといけないの」


呟き、涙が零れた。


ずっと我慢していた涙がとめどなく流れ落ちていく。


シンッと静まり返った部屋で涙が涸れるまで泣きつづけた。



そして涙が涸れた後、ゆっくりと立ち上がった。


痛む身体で小さなタンスから数少ない衣服等を傷んだ汚れたバックに詰め込む。


着ていた服を脱ぎ捨て、着替える。


「行かないと、もうここには居たくない。


優奈を連れて元の世界に帰るんだ。


まずは帰る術を探さないと」


綺麗な布で左目を覆い、簡単に整理し、バックを抱えて静まり返った部屋の外に出ていく。


ここを通る者は少ない。


だから簡単に抜け出すことが出来るのだ。


確か優奈は神殿とか言う所にいるはず


会いたい。出来るならこんな場所から出て行こうと提案しよう


久しぶりに足取り軽く神殿へと向かう。


意地悪されていないだろうか?


言葉などで苦労していないだろうか?


泣き虫な優奈は泣いてないだろうか?


色々な思いが溢れ出して行く。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ