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泣き出す痛み

長いこの国の歴史の中で、二度伝えられる魔族の襲来


一度目は現在より約400年前


狂暴な下位の魔族を率いて、貴族の魔族達が人間に襲い掛かって来た第一次魔族襲来


二度目は150年前


魔王と名乗る者が上位魔族を多数引き連れて、その巨大な力で人々を支配もしくは破滅させようとやって来た。


どちらもなんの抵抗も出来ず敗れるとされたが、そこに三人の人物が立ち上がった。


第一次に活躍したのは


「光輝の御子」

主に光魔法を得意とし、神官だと言われる、初代の御子


「女王」

国を滅ぼされたハーフエルフ、珍しい重力魔法を駆使し戦った


「鷹」

元奴隷で、魔法が使えず身体能力のみで戦っていたとされる謎多き人物


彼らの圧倒的な力により、世界は救われた。


次に第二次に活躍したのは


「黒魔女」

彼女は、この時代の最高峰とされる魔力を持つ魔女で、「女王」の最後の弟子でもある


「疾風の愛し子」

精霊魔法師、特に「風」に愛された者、後に魔法学院を設立した。


「夢幻の神子」

言霊使い 旅芸人として世界を放浪してたが、神託により神子の位に上がった。


熾烈を極めた戦いを沢山の犠牲をだして止めた三人


だからだろうか


彼の英雄達の生まれ変わり達が再び世界の危機には必ず現れると語るのは


そして今代、三度目の魔族の来襲により


英雄達の生まれ変わりと言われる三人が集められた。


一人は帝国の若き第三皇子であるグレイ


二人目は天才と名高い魔術師のリーフ


そして最後に異世界より召喚されし、巫女ユーナ


現在彼等は帝国王宮に隣接する神殿で時が来るのを待ち構えていた。


そう、ユーナの召喚において巻き込まれた颯妃などのことを一切語らず。


召喚に巻き込んでおきながら国が颯妃にしたのは、王宮の片隅の部屋に必要最低限の食事


ユーナこと優奈との一切の会うことの謝絶


身体への暴力とも言える兵士の訓練、そして精神を傷つける暴言だった。


優奈に会うために颯妃は全てに耐えていた。


たとえ、苦しく寂しくても


傷付き、血を流しても颯妃は一生懸命耐えて待ち侘びていた。


今にも倒れそうなまでに、やせ細り肌は血の気がなくなり真っ白である。


そう気力だけが颯妃を支えていた。


誰にも省みられない日々


大事に胸に下げたペンダントを抱き、癒える事がない傷とともに眠りにつく。


優奈が時とともに颯妃を思い出す回数を減らしているのを知らないまま




フラフラと歩く颯妃


その姿はまるで幽霊のように儚い。


そんな姿を見て、周りにいた者達がコソコソと話し出す。


一様に嫌な顔で笑い、もしくは顔をしかめている。


しかし、颯妃は気付いていない。


周りを気にする事など今の彼女には不可能だ。


最近慣れたはずの空腹感


今日に限っては時折、意識を持っていかれそうになる。


何か口にしなければ


しかし、颯妃に食べ物がもらえる当てはない


だから、仕方ないので王宮裏の森に入って行く。


不慣れな森を進み、綺麗な小川につく


そこで水をがぶ飲みし、今度は食べ物がないか探しに歩きだす


小川沿いを歩いていると、なんとも毒々しい色の実がなっている。


震える手を伸ばし、一つもぎ取る。


そして、川で洗い一口かじった。


甘い、これは色は違うが林檎だ。


一気に食べると、次の実も取りお腹に納める。


何日ぶりだろうか


こうして固形物の食べ物を口に入れるのは


いつも硬いパンが一つと味の薄い具のないスープのみ


時々だが、ビスケットが数枚一緒に出される事も


だがこの数日はビスケットはおろかパンのないほとんどお湯のようなスープのみが出されていた。


久しぶりに食べる林檎に颯妃は少し幸せそうに笑う。


そしていくつかの実をもぎ、来た道を戻っていく。


また来れば良いと考えたのだ。


だから大事そうに林檎を抱き、自室に帰って行く。



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