そして
深淵の闇の中をルゥとスゥは身を寄せ合い浮かんでいた。
「泣いて、いいんだ。
我慢はしなくて良い。ここには我々しかいない」
胸に抱く愛しい半身
ずっと取り戻したいと願っていた存在
捨て去ると決めた世界でさえ愛しいと嘆く慈愛の象徴
「また世界を生み出そう。
今度は間違った方向に行かないように見守っていこう」
その言葉にルゥが顔を上げる。
「間違った方向などないわ。
生きるもの達がそこで生きようとする輝きこそがその世界の理となるわ」
涙を眦に浮かべ、唇を噛むルゥ
そんなルゥを刹那げに見つめてスゥは顔を近付ける。
「そんな君だから愛しい
ならば次の世界は世界に生きる全ての者達によって作られる世界としよう
我等はただ、見定めるだけで」
なぞるように顔中にキスを落としていく。
くすぐったげに目を細めて寄りかかるルゥ
「スゥ、お願いがある。」
「なんだ?ルゥのためならなんでも叶えよう。」
労るように支えるスゥは滅多に、いやルゥにしか見せない甘い表情で待つ。
「少しの間、眠りに付こうと思う。
とても疲れたんだ。」
「そうだね。今まで受けた傷を癒すには眠りが必要だろう」
髪を透く手に目を瞑り、ルゥは猫のように頬を擦り寄せた。
「私が眠っている間、抱き締めていてくれないか?
もちろん時間が空いた時だけでも良い。
貴方の腕の中で眠れると癒されるのだ。」
顔色を窺うように見上げたルゥ
「貴女が望むなら目覚めるまで抱き締めていよう」
髪の一房に唇を寄せて頷くスゥ
そして二人はしばし見つめ合い、ふれ合うだけの口付けをかわす。
「お休み、ルゥ」
「お休みなさい、スゥ」
ゆっくりと瞼が閉じられ、次の瞬間には寝息が聞こえた。
「ルゥ、君が目覚める日を楽しみに待とう
私が目を開ける度に君の不在を確認し、嘆くあの日々はもうないのだから
目覚めたら、君に一番に言葉を送ろう」
ルゥの頭のてっぺんにキスを落として、スゥも目を閉じた。
「おかえり、私の半身
創世の女神、『ルミナリエティティ』」
きつく抱き締めて、スゥも浅い眠りに付く。
赤いのワンピースの五歳くらい少女の前に真っ白なふわふわのワンピースを着た同じ年くらいの少女が不思議そうに見ている。
「あなたはだれ?」
「私?私は誰だろう?
昔はたくさんの名前が合ったけど」
首を傾げて笑う赤いワンピースの少女
「おなまえがたくさん?へんなの」
「そうね。貴女は名前は?親はどうしたの?」
真っ白なワンピースの少女が目をまん丸にするのをさびしげに笑い、尋ね返す。
「あたし?あたしはゆいな。おかあさんとおとうさんはあそこにいるの」
指差す先にはホテル
「きょうはけっこんしきにきてたの。あなたのおかあさんとおとうさんは?」
無邪気なゆいなに少女が首を振る。
「いないわ。最初から親など」
その答えに泣きそうになるゆいな
「ごめんなさい。ねぇ、かえるいえはあるの」
「帰れないわ。飛び出して来たから
ここにはわたしの帰る居場所はないわ。」
空を見上げた少女にゆいなが手を伸ばして少女の右手を握る。
「なら、うちのこになりなよ。
あたしね、おねえちゃんがほしかったの」
きらきら輝く瞳に頷き返さず、少女が引っ張っていくゆいなを見つめる。
「ゆいな、私は颯姫、夕月颯姫とこれから名乗りますね」
振り返ったゆいなが嬉しそうに「さつきちゃん」と声を上げた。
その笑顔に颯姫が満足そうに微笑みかけた。
そして、二人は出会った。
一応これで完結です。
元々は長い話で短編にするため、元の話の最後辺りを少々手を入れて書き上げました。
大分前に違うサイトで書いて放置していたもので、こちらに登録したのを契機に復活させ
そして完結出来ました。
読んでいただけた上にお気に入り&評価ありがとうございました。
これからもファンタジーを書いていきたいな、と思っております。




