微睡み
「ならば私も明かそう」
縦に下から上に腕を払うと、スゥのその手には大剣が握られてる。
そしてその鞘には黒檀の鳥に三つの月、そして腕を広げる青年の図柄があった。
それを正視した瞬間、ユーナを除く全ての者が顔を白くさせる。
「そんな、ことがあっていいはずが」
グレイの呟きにリーフが虚ろに凍りついた足元から目をあげた。
「あなたは私達を裏切るんだな」
激昂するリーフに触発されたのかグレイも叫ぶ。
「今まで我々を騙していたのか」
「認めない。世界を壊すなど」
憎しみが篭ったマルスにそれを受け止めながら、優しく颯姫は笑う。
「こんな世界などもう私は知らない
だから滅びるなら滅びてしまえばいい」
幸せげに笑う表情とは裏腹なその言葉に誰もが終わりを悟る。
「お願い奪わないで、私から」
泣き叫び、颯姫にすがろうとするユーナ
だが、颯姫はけして首を縦に振らない。
「貴女は我々を謀りながら少し傷付けられただけで」
業を煮やした一人からそんな声が上がった。
だが次の瞬間、凄まじい断末魔が響きわたった。
一人の青年が身体中から血を出しながら地面をのた打ち回る。
「少し?
片目を失明した事は?
謂われない言葉の暴力は?
死んでも可笑しくない暴行は?
これが少しだと言うならば
お前達、人は何を傷付くと言うのだろうな?」
淡々としたこの言葉に誰も反論など出来やしない。
「精々残りの時を過ごすがいい
まあ、穏やかに過ごせるとは限らないだろうがな」
そう言うと颯姫の肩を寄せる。
「ユーナ、と言ったな
帰るが良い、自分の世界にそこで生きろ」
一瞥し、興味なさげに指先をユーナに向ける。
するとユーナが淡い光に包まれ始めた
「嫌、私はここに残る
マルスになにも・・・・」
もがくが光はその輝きを増していき、ユーナはマルスにマルスはユーナに手を伸ばしたが
ユーナは強い輝きを放って消え失せた。
「何故、何故
安らぎと眠りを司り、死を告げる神ス・レガート
と
愛と幸福を司り、生命を育む女神ル・シェンナ
この世界の創造神たる方々に見放された世界など崩壊することが決まってるも同然
それを知ってなお、去ると言われるのか貴女方は」
リーフのその言葉はここにいる、いやこの世界に生きる全ての生物の言葉だ。
「見放されるような事を繰り返して来た人間共が」
「何千億回も二柱の神はお前達の行いを許し、愛してやまないと言った」
「そんな想いを裏切り汚した生物、人間
お前達の振舞いがこの世界の未来を決めたのだ。
なんの落ち度もない、罪なき命を巻き込み破滅へと追い込んだ。」
いつの間にか颯姫達の側に立ち、代弁するかのように告げる三人
「ユーナはこの世界に属する者ではない故
留める事が出来ない。」
事実を告げる颯姫いや、女神ル・シェンナことルゥ
そのルゥを抱き寄せてるのは神ス・レガートことスゥ
「もう、伝えることはない」
それが合図だったかのように雨が降りだした。
どしゃ降りの雨だったがルゥ達にはその水滴は当たることはなく徐々にその姿が薄れていく。
「世界の意思が我々を弾き出そうとしている。」
「もはや我々を内包することが出来なくなったのだな」
目も開けるのもやっとの雨の中をなにか叫ぶマルス
膝を付き、呆然とするリーフ
グレイは頭を抱えている。
そんな光景を最後にルゥ達はこの世界から弾き飛ばされた。