嘆きの世界
「お願い奪わないで、私から」
涙を零し、地面に崩れ落ちる少女
「あなたは私達を裏切るんだな」
激昂する美しい女性
「今まで騙していたんだな」
逞しく勇ましい男性が鋭い眼差しを向ける。
「認めない。世界を壊すなど」
憎しみが篭った青年の断言
それを受け止めながら、優しく少女は笑う。
「こんな世界など私は知らない
だから勝手に滅びてしまえばいいのよ」
幸せげに笑う表情とは裏腹なその言葉に誰もが氷つく。
擦り傷だらけの体を引きずりながら少女は前を向いて歩く。
周りはそんな少女に目を向ける事はない。
右手首が痛い。捻ったかな。
唇を噛み、痛みを我慢する。
もう少し、部屋に帰れば
そしてもう少しと言うところで角から来た人間に少女は突き飛ばされた。
「悪い、ちっ。お前か」
その人、年の頃20歳前後の青年は尻餅をついた少女に手を伸ばして、少女だと確認して顔を嫌悪に歪める。
嫌な人間、マルスに出会った。
「邪魔だ。通路を塞ぐな。」
謝りもせずに、青年マルスは去って行った。
その後ろ姿を睨んだ後、立ち上がり部屋へと戻って行く。
痛む節々を気遣いながらベッドに横になる。
目をつぶり、疲れた体を休める。
張り付いたセミロングの髪をうっとうしいと感じた。
「頑張らないと、じゃないと護れない。」
眠気が襲い掛かって来るのを我慢しながら、少女夕月颯妃は拳を握る。