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レリオの欲しい物

作者:CORONA

 大空に浮かび、雲を切り裂いて飛翔する剣。全長100mをゆうに超えるその剣、世界最高峰の高速魔導飛翔艦『アストライア』は現在、南大陸マーサレスに位置する技術大国シュヴァルトライテへとやってきていた。

 周囲に停めてある一般的な飛翔艦と比べてその形、大きさ共に異彩を放つアストライア。そのアストライアの操舵士であるレリオの部屋は、最上層、居住区にあたる階の一角にあった。

 間取りは2LDKと、一人で使うには広すぎる部屋の中は様々な物が乱雑に置かれ、かの変人科学者ハウエンツァの部屋ほどではないが多少の散らかりを見せている。

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」

 そんな部屋のうちの一つ、ダンベルなどのトレーニング機器や様々な銃器が置かれた部屋に、部屋の主であるレリオはいた。

 部屋の中心で上半身裸でダンベルを手に持ちトレーニングに従事するレリオの身体は、普段のレリオからは想像できないほど逞しい。

 レリオの見た目は細い。普段の仕草や行動、着痩せなどを考慮にいれても細い部類にはいるだろう。しかし、実際には身体は逞しい。。

 レリオの主武装であるスナイパーライフルはアンチマテリアルライフルとも呼ばれ、対人狙撃だけではなく戦車や壁越しに攻撃するためにも使われたりする代物である。そのため破壊力は高いがその分反動も凄まじく、下手に素人が射撃すると身体を痛めてしまう。レリオの身体はそれを防ぎ、反動を抑えこみ使いこなすために鍛えこまれた結果だった。

「ふぅー……よし、これで今日のトレーニングは終了だな」

 レリオがトレーニングを終了すると同時に扉が開く音が響く。レリオが部屋の入口に視線を向けると、そこにいたのは蒼色の髪を持つ少年、アストライアの艦長であるノイウェルだった。なぜかは分からないが少し気まずそうな表情を浮かべている。

「お、艦長じゃねーか。俺の部屋にくるとは珍しいな」

「いきなりすまぬな、ノックをしたのだが返事が帰ってこぬから中をのぞかせてもらったらこの部屋から物音がするから入らせてもらった」

「いやいや構わねーよ。気づかない俺が悪いんだ」

 どうやら無断で部屋に入ったことを気にしていたらしい。申し訳なさそうに話すノイウェルにレリオは気さくな笑みを浮かべて返す。どうやらそれで安心したのかノイウェルはホッとした表情を浮かべている。

「それにしても、そなたはなかなかいい身体つきをしておるな。正直驚いたぞ」

「それは俺が普段弱々しく見えるってことか?」

「あ、いや、そういう訳ではないのだが……」

「ま、いいけどさ。俺は前線にでて戦うタイプでもないし、そう見られても仕方がないさ」

 ノイウェルの言葉にそう返すと、ノイウェルは再び気まずそうな表情を浮かべてしまった。それを見て思わず苦笑いを浮かべたレリオは話の話題を変えようと話し始める。

「で、艦長さんはなんの用事できたんだ?遊びに来た分けじゃないんだろ?」

「そ、そうなのだ! 実は皆に聞いてまわっていることがあってな!」

 これ幸いにと話始めるノイウェル。艦長を務めているとはいえまだ子供、まだまだ人付き合いには経験が足りてはいないようだ。

「今回の遺跡の調査により見つけた設計図があっただろう?先日それを信用できる所へと売却してきたのだ」

「おお、早いな。幾らで売れたんだ?」

「うむ、総額70000000イェンになった」

「な、70000000イェン!?」

 予想もしていなかった金額に思わず驚愕の表情を浮かべるレリオ。それはしょうがないだろう。70000000イェンとはそれだけ大金なのだ。

「うむ、これを聞いたときは我も耳を疑ったぞ」

「はぁーこれはまたえらい高額で売れたもんだな」

「これだけあればアストライアの維持費に回してもまだ余る。それで今回の慰労をかねて皆の欲しい物を買おうと思っておってな、皆に欲しい物を聞いて回っておったのだ」

「なるほどねぇ……」

 納得した表情で頷くレリオ。それをみてはノイウェルは満足そうに頷いて話を続けた。

「それでレリオはなにか欲しい物はあるか?お金の心配はせずともよいぞ?」

「そうだな、まずは遺跡で消費した弾薬が欲しいな。通常弾や徹甲弾はともかく、炸裂弾の大量消費は痛い。それと、今回の調査で思ったんだが少し他の銃火器を購入してくれるとありがたい」

「なるほど、ほかの銃器とはどのようなものなのだ?」

「具体的に言うならランチャー系統の武器が欲しいところだな、ライフルのみだと敵が複数の場合や巨大な場合に対応が難しい。俺のロストアームって手段もあるにはあるんだが、敵が近いと使い物にならなしな」

 ふむ、とつぶやきながらスラスラとメモをとっているノイウェル。

「あと、これは出来ればでいいんだが車両の購入をおすすめするぜ?」

「それはなぜなのだ? 移動にはこのアストライアを使えばよかろう?」

「アストライアは大きすぎるんだ。もし遺跡がアストライアでは入れない場所に存在した場合、移動手段が徒歩のみになるだろ? それだとさすがに不便すぎるし、普段でも街中を移動したり荷物を運んだりと便利なはずだ」

「ふむ、たしかにそなたの言うとおりだ。車両も購入リストにいれておこう」

「俺が欲しいのはそれぐらいか? 日用品は手持ちの金で手に入るし、余ったら次の冒険にでも役立ててくれ」

 ビッと親指を立てて笑みを浮かべるレリオ。愛嬌を感じさせるその笑みにノイウェルも釣られて笑みを浮かべる。

「うむ、しかと承ったぞ。では余は他の者たちの所にも行かなければならないのでこれで失礼するぞ」

 そういって部屋の出口へとノイウェルは向かう。そこでレリオの頭にふと疑問が浮かんだ。

「おい、もしかして買い物には一人で行くつもりか?」

「いや、リリナとともに向かうつもりだが……」

「やっぱりな、その買い物には俺もついていくぜ」

「いやいや、それには及ばんぞ? ゆっくりと休んでいてくれ」

「それは無理な話ってもんだ。婆さんやハウエの野郎とかならともかく、お前やリリナに銃火器のことがわかるとは思えん」

 それを聞くと表情をしかめるノイウェル。どうやら図星のようだ。

「変な業者に捕まって不良品掴まされても困るしな。俺の行きつけの業者がいるからそこを紹介してやるよ。それに車両を運転できるやつがいると荷物を運ぶのも楽だろ?」

「……さきほどリリナに言われたことを余は忘れていたようだ。レリオの言うとおりだ、すまぬが同行を頼む」

「ああ、まかせとけ。損だけはさせねーからよ」

 そういってレリオは身体についた汗をタオルで拭いながら再び愛嬌の漂う笑みを浮かべた。

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