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シンセティック・ワイルド:事象の地平線(イベント・ホライゾン)LUNA‗BOOK THREE  作者: 光闇居士


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3/5

第二章:星雲のクジラ

 道の最奥にいたのは、もはや生物としてのクジラではなかった。

 それは、宙に浮かぶ巨大な「銀河」だった。

 かつて皮膚だった場所には無数の星々(記憶の断片)が瞬き、背中にあった庭園は次元の亀裂となって枝分かれし、宇宙そのものを背負ってそこに存在していた。

 リヴァイアサン。高次元データ生命体へと進化した、森の主。

 その瞳だけが、あの日のままだった。

 全てを見通し、全てを許すような、深く、静かな瞳。

『ルナ。私の愛しい、痛々しい子供よ』

頭蓋骨の裏側に、音が直接響いた。それは言葉ではなく、純粋な意味の塊だった。

『君は自由を選んだ。その代償として、偽りの安寧だった世界マトリックスは崩壊した。君はずっと、その重荷を背負って歩いてきたのだね』

 クジラがゆっくりと降下してくる。その巨大なヒレが触れるだけで、周囲の空間が波紋のように揺らぐ。

 ルナは震える足で立ち上がり、黒ずんだランタンを差し出した。

「私は……私は、間違っていたの? あなたを繋いでいた鎖を切ったことは、罪だったの?」

 彼女の瞳から涙がこぼれた。それは涙ではなく、液状化したデータだった。

「教えて。この苦しみの先に、何があるの? 世界中の人々が肉体を失って、終わらない夢の中を彷徨っている。これを終わらせるために、私はここに来た」

 クジラは答えなかった。ただ、その巨大な口をゆっくりと開いた。

 その奥には、ブラックホールのような、あるいは全ての始まり(ビッグバン)のような、絶対的な「特異点」が渦巻いていた。

『我々は膨張しすぎた。この星の許容量を超えて、記憶と感情が溢れ出してしまった。

 ルナ、最後の人間よ。選択するのだ。

 君が持ってきたそのランタン――君の「魂」を使って、この物語に結末を書き込むのだ』


⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐


ルナの前に、二つの道が示された。


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