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シンセティック・ワイルド:事象の地平線(イベント・ホライゾン)LUNA‗BOOK THREE  作者: 光闇居士


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序章:灰色の砂漠と、銀の病

 世界は、静かに狂っていた。

 かつて文明と呼ばれた都市群は、いまや「灰色の砂漠」と化している。それはただの砂ではない。暴走したナノマシンと、物理的な質量を失って崩壊したデータの残骸だ。風が吹くたび、砂はザーザーとテレビの砂嵐のような音を立てて流動し、触れるもの全てをデジタルの塵へと分解していく。

 その死の世界を、ひとつの影が歩いていた。

 ルナは36歳になっていた。かつてしなやかだった肢体は、油汚れと血に塗れたボロボロのポンチョに包まれている。彼女は左足を引きずっていた。ブーツの隙間から覗く皮膚は、半分が銀色の結晶ナノ・クリスタルに侵食されている。「現実乖離症候群」の末期症状だ。

 彼女の肉体は、過剰な情報負荷に耐えきれず、少しずつガラス細工のようにヒビ割れ始めていた。

「……やっと、匂いがする」

 ルナは乾いた唇を舐めた。

 防塵マスクのフィルター越しでもわかる。焦げた回路の匂いと、懐かしい雨上がりの土の匂い。

 10年前、彼女が企業に反逆し、あのクジラを解放した場所。世界崩壊の爆心地グラウンド・ゼロ

 彼女の手には、祖父の遺品である真鍮のランタンが握られている。だが、かつて迷い子を導いた青白い石は、今は炭のように黒く変色し、まるでルナの残りの心拍数を刻むように、弱々しく震えているだけだった。

「戻ってきたわ。……私の、罪の場所へ」

ルナは咳き込み、銀色の血を砂に吐き捨てると、目の前に広がる光の渦――かつて「森」だったもの――へと足を踏み入れた。

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