第1話:メイドの仕事
「ご主人様、本日のお食事はどうなさいますか」
もうすぐで時計の針が正午を指す頃だった。私は今日も、ドナート様に食事の用意をするところだ。
「今日は魚の気分だ、用意してくれるかな」
「承知致しました」
この館には、ドナート様とメイドの私しかいない。ドナート様が、「側近はメイドのナナだけでいい」と言うのでこのような状況になっている。
「んー、あれ…魚がない、この前使い切ったのか」
魚がなかったので買い出しに行くことにした。街はいつも以上に人で賑わっていた、一週間後に聖血祭が開催されるらしい。年に一回行われる聖血祭はヴェールの伝統行事であり、近くの闘技場で行われ世界最強の称号を手に入れるために世界各国から手練の戦士や魔法使いが集まる大きな祭典らしい。
「魚を3匹ください」
「あいよ!」
「450ゴールドで」
「350ゴールドでいいよ!聖血祭も近いし特別だ!」
「ありがとうございます」
「ところであんた、聖血祭に興味ないか?」
「毎年、闘技場に行って観戦はしています」
「そうか、あんたナナだろ、ドナートの旦那に仕える」
「…はい、そうですが」
「俺はガスト、ドナートの昔からの親友の戦士だ。俺は一目見てわかった、あんたは相当な力を持ってる、聖血祭に出てみたらどうだ?」
「私がですか?」
「もったいねぇだろ、そんな力がありながら」
「分かりました、ドナート様に参加の許可を得てみます」
「わかった、許可がおりたらまたこの店に来てくれ」
「ありがとうございます、ではまた」
気がついたら1時間ほど時間が経っていた。
「ドナート様に叱られる…」
急いで館に戻ることにした。
「申し訳ございませんドナート様」
「大丈夫だ、謝ることなんてない、ちょうど魚がなかったんだろう、仕方がないことだ」
ドナート様が満足そうな顔をしながら食事をしている、なんだか嬉しい気持ちになった。
「ドナート様」
「なんだい」
「魚の買い出しに行った際に、ドナート様の親友の方とお話をして、聖血祭へ参加しないかとお誘いを受けたのですが、よろしいでしょうか」
「ああもちろん、ナナなら優勝も難しくないだろう。元々、私も今年から聖血祭に参加しようと思っていたところだ」
「ドナート様も参加なされるのですか?」
「最近は剣を抜くことも少ないからな、久しぶりに誰かと手を合わせたいところだ」
「ドナート様が参加なされるのでしたら、称号を手にされるのはドナート様で決まりですね」
「それはどうだろうね…」
「…といいますと、?」
「いや、なんでもない。料理はとても美味しかったぞ」
「そうですか…ありがとうございます。では失礼致します」
こうして、聖血祭への参加が決まった。