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第五十七話 金級への道

 俺達はゲートポータルから程近いレ組トーミナク支部に久々来たが、中ではスタッフがバタバタと忙しそうにしていた。

 ロビーにいる総合受付のヒトに聞くと、どうやら昨日の放送以降、他種族からの評判が悪かったスタッフを配置転換しているとの事だ。


(コーア王子の行動力恐るべし……)


 何はともあれ、異動させられたスタッフには少し同情もするが、時流の先読みが出来ず踊らされて他種族へ排他的な態度を取っていた愚か者はいなくなった様だ。

 早速俺達は初日に行って以来ご無沙汰していた依頼受注窓口がある部屋へと向かった。

 相変わらず職安の様な雰囲気の依頼受注室で俺達は番号札を取ってしばらく待つと呼ばれたので、窓口前の椅子に座って俺とアーシャのタグを提示した。


「お待たせいたしました。

 本日はどの様なご依頼をお探しでしょうか?」


 四十代ぐらいで落ち着いた雰囲気の男性が、真摯な態度で応対してくれた。


「自分達は今銀級なのですが、ここから少しでも早く金級に上がりたくて……

 何か効率良く貢献ポイントを稼げる依頼はないでしょうか?」

「そうですね……

 ちなみに今まではどの様にしてポイントを稼がれたのですか?」

「ゴブリンやオーガを倒しつつ、時折ワイバーンを倒して大体二・三か月で銅級から銀級に上がりました」

「それは素晴らしい早さですね!」

「有難うございます。

 ちなみに、金級に昇格するにはどれぐらいの貢献ポイントが必要なのですか?」

「金級に昇格するには一万ポイントが必要になります。

 その為、このペースで行くと二・三十か月という異例の早さで金級になられますね」

「そんなに掛かるのですか……」


 窓口の男性と俺達に明らかな温度差がある。


「それでも充分過ぎるぐらい早いのです。

 ご存知かもしれませんが、通常、銀級になるのでさえ二・三年掛かる事が一般的なので、金級になるには二・三十年掛かる計算です。

 その為、多くのレシーバーは金級になる事がゴールとし、引退まで頑張るのです」


 ガッカリした俺達を窓口の男性は必死にフォローしてくれている。


「でもワイバーンはそんなに数がいないので、今までと同じペースでポイントを稼ぐのは難しいかなと思ってここへ来たのです……」

「なるほどですね……

 しかし、町の移動に伴う護衛依頼は平均して約十ポイント、薬草採取や雑用等はおおよそ二・三ポイントなので、サンノ様達なら今まで通り魔獣討伐をされている方が効率はいいかと存じます……」

「そうですか……」

「お力になれず誠に申し訳ございません」


 窓口の男性がそう言いながら頭を下げた。


「いえいえ!

 ここまでご丁寧に対応いただけただけでも嬉しかったので気になさらないで下さい!」

「有難うございます。

 報酬のいい依頼や緊急依頼等が来ましたらタグでお知らせ致しますね」

「はい!宜しくお願いします!」


 俺達は丁寧にお礼を言い[ゲート(空間移動)]でクマスの部屋(?)に戻った。

 クマスの部屋に行くとガナタはおらず、クマスだけがいたのでいつも通り俺達はその辺のクッションに座ってお茶を飲んだ。


「あの、サンノ君?

 何か当たり前の様にここを溜まり場にしてるけど一応若夫婦の家よ?」

「うん、だからピンの教育上良くない事は夜にしてね!」

「何でやねん!」

「お、クマスさん、ニョロの口癖が移って来たね」

「しゃあないなぁ、クマっちにも儂の『関西弁』教えたろか?」

「フフフ、私は元々『土佐弁』だったのよ?

 だからニョロっちより上手いわよ?」

「お?ほな儂とクマっちで『関西弁』普及組合作るか!

 手始めにピンとアーシャはんに『日本語』を教える時は『関西弁』で仕込もうやないか!」

「あ、それいいねニョロっち!『関西弁』を喋る女の子は可愛いしね!」


 ピンとアーシャは所々聞き取れない単語が出て来てキョトンとしている。


「まぁそれは好きにしてくれていいから、クマスさんにも一応今日分かった事を報告するよ」


 俺はクマスにゲートポータルとレ組で聞いた事を話しした。


「なるほどねぇ……

 じゃあ再度『東京』へ行くのは二・三年後になりそうね……

 ちなみにサンノ君はこの世界と『地球』で一年の差はどれぐらいか把握している?」

「年単位で計算したら二か月ぐらいトートシンが短いんでしたっけ?」

「そうね、厳密に言うとまず、トートシンの一秒は『地球』の大体三分の二だから、トートシンの一日は『地球』より大体五時間半短くて、一年は大体五十七日少ないのよ。

 一日の時間に関係する自転速度も一年の時間に関係する公転速度もトートシンが若干早いのよね」


 秒から分、分から時間に繰り上がる数が地球とトートシンでは違い、一秒の長さも少しずれている。(※第三話参照)

 ちなみに、トートシンの公転速度と月の公転速度は奇跡的にキリが良く噛み合っており、新月、上弦半月、満月、下弦半月の移り変わりが十日周期の為、一週間は十日となっている。

 月の移り変わり四段階を一か月とし、さらに一年は十か月の為、トートシンの年月をまとめると以下の通りとなる。


 10日=1週間

 4週間=1か月(40日)

 10か月=1年(400日)


 なお、蛇足になるが地球とのズレを計算すると以下の通りとなる。


 秒のズレ

 1秒=2/3秒

 トートシンの繰り上がり(※第三話参照)

 100秒=1分

 100分=1時間

 10時間=1日


 地球換算で1日の秒数

 1秒✕2/3✕100✕100✕10=約6.6万秒

 地球で1日の秒数

 1秒✕60✕60✕24=約8.6万秒

 1日の差

 約2万秒((ゆえに)約5.5時間の差)


 地球換算で1年の秒数

 約6.6万秒✕400日=約2,640万秒

 地球で1年の秒数

 約8.6万秒✕365日=約3,139万秒

 1年の差

 約499万秒((ゆえに)約57日の差)


 以上、余計な情報だが地球とトートシンの時差を計算した。


「まぁ要するに当分は地道に魔獣を倒してポイント稼ぎをするしかないって事よね?」

「そうですね……

 とりあえず、今日はもう魔獣狩りもしないですし、ピンと二人で実家の父に報告だけして来ます。

 父と晩ご飯を食べながら一先ず復讐を終えた事と、今後の動きを伝えておこうかと……

 明日には帰って来るからアーシャは少しだけ待っててくれるか?」

「もちろん!と言うか、別にもっとゆっくりして来てもいいんだぞ?」

「いや、早く金級に上げたいし必ず明日には戻って来るよ」

「そっか、了解!」


 その後、俺とピンは皆に一時の別れを言い、[ゲート(空間移動)]で実家へと戻った。

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