表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/50

最終話 誓い

 俺は馬車に揺られ、死塔へと向かっていた。


「シン。そろそろ死の森に入ります。念のため警戒を」

「わかった。ありがとな。シェスタ」


 御者を務めているシェスタに礼を言い、周囲の警戒を開始する。死の森程度で俺が怪我をする事はほぼないが、念のためだ。


「……それにしても戻ってくるまでに大分掛かったな」


 警戒しつつもそう溢すと、シェスタは御者台で頷いた。

 

「……そうだな。本当に色々とあった」


 そう言ってシェスタは疲れたようにため息を吐く。

 アルスラン王と謁見してから本当に色々な事があった。

 

 国を挙げて(おこな)った戦勝の記念祝祭や、その後に行われた貴族や騎士団、魔術師団の団長、副団長を集めたパーティー。

 

 その二日後には俺のやり直し裁判が始まり、その場で第一王子リヒト=ハイルエルダーの策略の全てが暴かれた。

 アルスラン王が直々に調査を行っていたらしい。

 

 エーカリアでの調査を碌に行わず、俺の犯行だと決め付け、王族という権力を使い裁判に介入した証拠が提出された。

 

 結果としてリヒトは司法の公平性を損なったという罪に問われた。そしてリヒトと関与した第一王子派の貴族たちは失脚した。

 

 リヒトは命までは奪われなかったものの、国王の直轄地で幽閉される事となった。これで返り咲く目は無くなったと言えるだろう。

 想定外も多々あったが、当初の目的であった姫様を王にするという目的もほぼほぼ達成された。


 その後、死塔の魔女レティシアが英雄王ユークラスの親友レン=ニグルライトの娘だと言う事実が公表され、死塔流しという刑は廃止となった。

 そして俺はレティシアの騎士、死塔の騎士という位を正式に拝命した。


「……シン」


 ここ数週間の出来事を振り返っていると、シェスタが御者台から声を掛けてきた。


「なんだ?」

「……私はシンを許す。たとえシンが自分を許さなくてもな。それに真実を知った今、私がどうこう言えばシュバインに文句を言われる。だから生きろ。シン」


 シェスタも心配してくれているのだろう。

 だけどもう心配はいらない。俺には新たな使命ができた。少なくともそれを果たすまで、死ぬつもりはない。

  

「ああ。そのつもりだよ。それに、まだ死ねないしな。新たな使命もできたことだし」

「使命……。姫様が言っていたアレか?」

「何を聞いたのかはわからないが多分ソレだ」

「前途多難だな」

「全くだ。だけどやらなきゃいけない」

「そうだな。私もレティシア様には命を救われた。手伝える事があれば言ってくれ。協力は惜しまない」

「ありがとな」


 それからしばらく、会話は無くなった。

 

 俺は澄み渡る青空を見上げる。

 前にこの道を通ったときは陰鬱とした気持ちが心を支配していた。しかし今はこの青空と同じように澄み渡っている。

 短い間に随分と心変わりしたものだ。


 ……これも全て、レティシアのお陰だな。


 それからしばらくすると死塔に到着した。


「……シン。着いたぞ」

「助かった。ありがとな。シェスタ」


 俺は馬車から降りるとシェスタに頭を下げた。


「ああ。では私はこれで。またなシン」


 シェスタは頷くと馬車を操り、来た道を引き返す。

 あっさりとしたものだが、今生の別れと言うわけでもない。きっとすぐ会うことになる。

 なにせ俺は死塔の騎士になったのだから。


 俺は遠くなっていく馬車に手を振った。


「またな! シェスタ!」


 そして馬車が見えなくなるまで見送った。

 

 するとガチャリと音が聞こえ、死塔の扉が開く。


「……シン!」


 名前を呼ばれ振り返ると、そこにはレティシアが居た。

 

「ただいま。……レティ――え?」


 レティシアは一瞬で立体魔術式を記述し、俺の目の前まで転移してきた。そして胸に飛び込んでくる。

 俺は慌てて抱き止めた。

 ふわりと漂ういい香りと柔らかな感触にドキリと心臓が跳ねる。


「どう……した? レティシア?」


 そんな心の動揺を悟られないように、努めて冷静な口調で言った。

 

「……どうしたじゃない。……おそい」


 胸元に顔を埋めている為、レティシアの表情は見えない。だけど声が震えていた。


「……泣いてるのか?」

「………………泣いてない」

「いやでも……」

「……泣いてない!!!」


 俺の胸板をポカポカと殴りつけるレティシア。だけど全然痛くない。

 抱き止めたレティシアを地面に下ろすが、彼女は離れない。だから俺は宥めるようにレティシアの背中をさする。すると胸元から鼻を啜る音が聞こえてきた。


「ごめんな。遅くなった」

「……もう帰ってこないかと思った」

「それは……ごめん」


 連絡する手段が無かったとはいえ、申し訳ない気持ちになる。

 

「……なんで……遅かったの?」


 レティシアが顔を離すと、赤くなった目で恨みがましげに見つめてきた。

 

「いろいろあったんだよ。やり直し裁判をやったり、死塔流しが廃止されたりな。あと俺の身分が新しくなった」

「……身分?」


 レティシアは可愛らしく小首を傾げる。


「ああ。……死塔の騎士だってよ」

「……死塔の……騎士?」

「なんでも騎士団長より位が上らしい。レティシアが国王と対等だからだと」

「……それはどうでもいい。……でも、それならシンはここに居てくれるの?」

「どうでもいいって……」


 あまりの言い草に俺は苦笑した。


「……だって地位とかどうでもいいもん。……わたしはシンが……その……と……と……」


 レティシアの言葉は尻窄みになり、消えていった。

 そして顔を真っ赤にして俯くレティシア。その姿がとても可愛らしく、心臓の鼓動が早くなる。

 やがてレティシアは小さな言葉をこぼした。


「……シンが……となりに……居てくれるだけで……いい」


 その言葉は聞き逃してしまいそうなほどに小さなものだった。だけど俺の耳にはしっかりと届いた。

 頬が熱くなり、さらに心臓の鼓動が早くなっていく。

 

 想いが溢れて、止まりそうに無かった。

 だから俺はレティシアの前で片膝を突いた。そしてレティシアの手を両手で包み込む。


「レティシア。聞いてくれるか?」

「……ん?」


 レティシアが目をパチクリと瞬かせる。


「俺はキミから命を貰った。だからこの命はキミのために使いたい。だから誓うよレティシア。俺は、俺が――。


 そして俺は新たに定めた使命を口にした。


「――キミの呪いを解く」

「……え?」


 レティシアの口から消え入りそうなほど小さな声が溢れた。そしてその目からは透明な雫が流れ落ちていく。


「俺はいつだってキミの味方だ。たとえ世界中の全てが敵になったとしても必ず守るよ」


 言葉が溢れて止まらない。

 もう誤魔化せない。この気持ちは、戦場でレティシアという女の子に対して抱いた感情は燃え上がっている。

 だから俺はレティシアの目を見て告げた。


「だから、キミの隣に居させてくれ。――好きだレティシア」

「……」


 沈黙が場を支配する。

 聞こえるのは木々の葉擦れ音だけだ。

 やがてポカンと口を開けたレティシアは目を大きく見開き、くしゃくしゃに顔を歪めた。


「……いい……の? ……わたしで……いいの? ……呪いも解けるかわからないよ?」


 とめどなく流れる涙が地面を濡らしていく。

 

「レティシアがいいんだ。それと呪いは必ず解く。たとえ一生掛かってもな。……どうかな?」


 ここで断られたら立ち直れない自信がある。

 だけどその心配は杞憂だった。レティシアが再び俺の胸に飛び込んでくる。

 

「………………うれしい! ……わたしも! ……わたしもシンが好き! 大好き!」


 そしてレティシアは満開の花のような笑顔を浮かべた。

 今まで見た事もない程、綺麗で素敵な笑顔。


 俺はこの笑顔を死んでも忘れないだろう。


 


 罪咎の騎士と死塔の魔女

                     〜FIN〜


 


これにて「罪咎の騎士と死塔の魔女」は完結となります!

最後まで読んで頂きありがとうございました!


楽しんでいただけましたか?

少しでもあなたの心に「なにか」を残せたのなら私は嬉しいです!


感想等あればぜひぜひ教えてください!

一言でも大歓迎です!


そしてこのシンとレティシアの物語を少しでも面白いと思って頂けたのなら、

少し↓にある「ブックマークに追加」と⭐︎を押していただけると嬉しいです!

ランキングに載りたい!書籍化したい!なので!

ぜひご協力よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ズルいですね。シンが異常に強い理由とかいろいろ気になって仕方ないことは多いのですが こうやって結ばれると読者としては「二人が幸せだからオッケーです!」とサムズアップするしかない。 いやそも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ