表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/50

第40話 最強VS最強

 俺は縮地を使用して、一気に懐へと入り込む。そして不壊剣(レスティオン)を振るった。


 ヴィクターも反応し、真正面から迎撃してくる。

 凄まじい勢いで不壊剣(レスティオン)と大太刀が交差した。その瞬間、俺の不壊剣(レスティオン)がヴィクターの大太刀を大きく弾き飛ばした。


「……な……に?」


 ヴィクターの顔に驚愕の表情が浮かぶ。

 そのまま俺は下段から不壊剣(レスティオン)を振り上げる。


 ――我流剣技:壊打(かいだ)


 不壊剣(レスティオン)がヴィクターの闘気に激突し、砕く。俺はそのまま剣を振り抜き、ヴィクターを吹き飛ばした。

 俺は即座に追撃を行う。不壊剣(レスティオン)を上段に構え、地面を転がっているヴィクターに剣技を放つ。


 ――我流剣技:空断(からだち)


 空を断つ斬撃が飛翔し、ヴィクターに襲いかかる。

 ヴィクターはなんとか体勢を立て直すと腕に闘気を集中させて防御した。しかし空断は闘気を貫通し、腕に大きな斬傷を残す。


 俺は再び縮地を使い、ヴィクターを追った。


「その程度か? 帝国最強」


 不壊剣(レスティオン)を上段からの振り下ろす。

 腕に傷を負ったヴィクターは碌に防ぐことが出来ないはずだ。しかしヴィクターは大太刀を振るった。

 

「なんの……!」


 驚くべきことに怪我をした状態で、俺の斬撃を受け止めた。そして傷付いた腕に魔術式が記述され、瞬く間に治癒していく。


 ……回復魔術も使えるのか。面倒だな。


 そんなことを考えているとヴィクターが口を開いた。


「……今の技は天恵か?」

「そんなわけないだろ。これはただの剣技だ。俺の天恵は非戦闘系だよ」


 その言葉にヴィクターは驚愕を露わにする。

 

「そんな……バカな。ただの剣技でオレの闘気を貫いたと言うのか?」

「何言ってんだ? 闘気ぐらい貫けないわけがないだ……ろっ!」


 俺は不壊剣(レスティオン)に力を込め、ヴィクターを吹き飛ばす。


「そんなに自分の闘気に自信があるなら防ぎ切ってみせろよ?」


 俺はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、縮地を使う。

 そして大きく踏み込み、不壊剣(レスティオン)を振るった。

 剣技でもなんでもないただの斬撃だ。

 それがヴィクターの闘気を易々と斬り裂いた。そして腹にまで到達する。


「がっ!」

 

 ヴィクターは血を撒き散らしながら吹き飛んでいく。

 いくら回復魔術があれど、あの傷はすぐには治らない。追撃すれば勝負は付く。

 だが俺はしなかった。

 

「……これが帝国最強か」


 俺はため息を吐いた。正直落胆を隠せない。

 最強と呼ばれる者同士の戦いだ。なにか得る物があると思っていた。しかし蓋を開けてみれば得る物が何もない。

 俺がやったのはただの力押しだ。

 そこには技巧なんて存在しない。使うまでもなかった。

 しかし、それだけで圧倒してしまえている。


 遠くでヴィクターが立ち上がるが、俺の興は既に醒めていた。


 俺は縮地を使って姫様の元へと戻る。

 すると姫様は苦笑を浮かべていた。


「相変わらずですね。シン」

「興醒めですよ。殺さない方が良かったりしますか?」

「そうですね。できるなら捕虜にした――」

「うぉぉぉおおお!!!」


 姫様の言葉を掻き消すような雄叫びを上げ、ヴィクターが突っ込んでくる。そして大太刀を振った。


「……不壊剣(レスティオン)を使うまでもないな」


 それは冷静さを欠いた斬撃だ。最強が聞いて呆れる。

 俺は今一度ため息を吐くと、不壊剣(レスティオン)を地面に突き刺した。

 そして左手を握り大太刀を横から殴り付ける。

 

 流石の業物だ。加えて闘気を纏っている為、折れることはなかった。しかし、ヴィクターは大太刀を手から離した。

 これで本人は無防備だ。俺は右拳を握り、ヴィクターの顎を打ち抜く。


「がっ!」


 脳を揺らす一撃だ。

 ヴィクターの膝の力が抜け地面に沈む。

 しばらくは起き上がれないだろう。


 戦闘終了だ。幕引きはあっけない物だった。


「ふぅ」

 

 俺は一息つくと、姫様に向き直った。

 そして聞かなければならないことを聞く。


「姫様。一つ教えてください」

「なんでしょう?」

「……まだ、王になる気はありませんか?」


 姫様は王位に固執していない。

 前に聞いた時は「私は騎士です」と、そう言った。

 その言葉が本心だというのは長年の付き合いでわかっている。だから今回も十中八九「ない」と言われると思っていた。

 しかし姫様は俺の予想に反して首を振った。


「シン。私は決意したのです。兄は貴方を嵌め、王国から排除しました。その結果、戦争が起きた。それは戦争を引き起こしたと言っても過言ではありません。……兄は王に相応しくない。だから私はなりますよ。王に。それに私にもやるべき事があります」

「驚きました。まさか()()姫様が決断しているなんて……」

()()、とはどういう意味ですか?」


 姫様は不機嫌そうに目を細め、頬を膨らませた。

 

「失礼。失言でした。でもよかったです。リヒトが王になれば最悪国が滅びる」

「辛辣ですね。ですが、その意見には私も同意です」

「……よかったです。本当に」


 これで不安要素は消えた。王国は大丈夫だろう。

 俺は安心して復讐への道を進める。


「姫様! ご無……事……。……シン?」


 そこへ一人の騎士が走り寄ってきた。

 俺はその人物、親友の姉(シェスタ)に視線を向ける。

 

「久しぶりシェスタ」

「やっぱりシンだ。え? 姫様……。もしかして仮面の男って……」

「ええ。シンでした」


 シェスタが大きなため息を吐いた。

 

「……エルクスの予想は合っていたのですね」

「もしかしてエルクスにもバレてたんですか?」

「そうですよ」


 姫様が笑みを溢した。

 まさか知り合い全員にバレてるなんて、思いもしなかった。

 

 ……これは後でレティシアに文句を言わないとな。


 そんなことを考えながら、俺はシェスタに向き直る。そして表情を引き締めた。

 俺はシェスタに言わなければならないことがある。


「シェスタ。……俺はキミに謝らなければならないことがある」

「……なに?」


 俺の真剣な様子が伝わったのか、シェスタも緊張した面持ちで頷いた。

 

「言い訳はしない。シュバインを殺したのは俺だ。謝って許される事ではないと分かっている。だけど……ごめん」


 俺はシェスタに頭を下げる。

 するとシェスタはすたすたと俺の前まで歩いてきた。

 そして拳を握りしめ、俺の顔面をぶん殴る。


 しかし魔力の篭っていない拳だ。痛みはあまりない。


「……理由。ちゃんと聞かせてもらうから。だけどもし、納得できる理由がないなら私がシン、貴方を殺す」

「ああ。そうしてくれ。キミに殺されるならなんの文句もない」


 シェスタに殺されるのならば本望だ。

 しかしシェスタは呆れたような視線を向けてきた。


「まったく真面目と言うかなんというか。……まあそれはいい。シン。貴方はまた姫様を救ってくれた。心から感謝する」

「姫様は俺の恩人だからな。当然のことをしたまでだ」

「それでも、だ。……では姫様。捕虜を連れて一度本陣へ行きましょう。元帥の身柄です。終戦の交渉ができるかもしれません」

「そうですね。シンはどうしま――」

 

 その瞬間、俺は魔力の揺らぎを感知して不壊剣(レスティオン)を構えた。姫様とシェスタも同じように剣を構えている。

 俺が異変の起きている場所に目を向けると、空間がぐにゃりと歪んでいた。


「……これは! 転移魔術!」


 姫様が空間の歪みを見て叫ぶ。これは転移魔術の前兆だ。


「おやおや。やはり元帥でもダメでしたか」


 そして現れたのは漆黒の長髪を持ち、蛇のような目をした不気味な男だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ