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第25話 一時撤退

「「「うおおおお!!!」」」


 雄叫びを上げ、第一小隊が敵陣に斬り込む。その隙間を縫うようにしてアリシアも突き進んだ。

 目の前の敵をひたすら斬り伏せ、確実に数を減らしていく。


 その時、アリシアは上空に膨大な魔力反応を感知した。魔力が雲を集め、渦を巻く。

 背後を見ると、シェスタの指揮によって巨大な魔術式が記述されていた。


 帝国軍後方でも、大規模魔術に対抗するべく巨大な魔術式が構築されていく。


「……少し下がりましょう!」

「「「はっ!!!」」」


 アリシアの指示に従い、第一小隊が後退する。

 その時、魔術が完成した。


 ――雷属性攻撃魔術:迅牙招雷(じんがしょうらい)


 一瞬遅れて帝国の魔術も完成する。

 天と地を分断するように、透明な板が展開された。


「……結界ですか! させません!」


 アリシアは背に纏った五つの煌剣(こうけん)を結界に向けて放つ。

 相手は大規模術式の結界。それで砕けるとは思っていない。だが僅かな隙間さえ作る事ができれば十分だ。


 そして放たれた煌剣(こうけん)は結界に衝突。アリシアの思惑通りに小さな(ヒビ)を刻みつけた。


 次の瞬間、天に召還された雷牙が結界に直撃。結界は粉々に砕け散った。

 そしてそのまま帝国兵に牙を剥く。


「結界! 結界を張れ!!!」


 そんな声がアリシアの耳に届いたが、もはや手遅れだ。

 雷牙は帝国軍のド真ん中に落ちた。大地が揺れ、閃光が辺りを満たす。

 

 被害は甚大。

 閃光が晴れた時、帝国軍後方にはぽっかりと穴が開いていた。


「好機です! 行きますよ!!!」


 アリシアの号令に従い、第一小隊は再び攻撃に転じた。


 


 アリシア以下、第一小隊の精鋭は帝国軍の中央部隊を荒らしに荒らした。

 討ち取った帝国兵の数は膨大なれど、王国側の被害は軽微であった。腕を切断された騎士がいたが、回復魔術により既に戦線復帰を果たしている。

 

 しかし、帝国軍もやられっぱなしという訳ではない。

 中央を任されている将軍が正面からアリシアを討ち取ることは不可能と判断し、囲い込む作戦に出た。

 そして現在、アリシアを包囲しつつある。


 シェスタが指揮を取り魔術で崩してはいるが、包囲が完成するのは時間の問題だろう。


 ……ここが引き際ですね。


 敵は十分に削ることが出来た。深追いすれば王国側にも犠牲が出る。そう判断したアリシアは即座に撤退の命令を下す。


「撤退します! 殿は私が!」


 アリシアの命令に従い、第一小隊はすぐさま反転。撤退を開始した。

 

 退いていく王国軍に帝国軍は様々な魔術を放つ。しかしアリシアの煌剣(こうけん)によって全て阻まれた。


 ……そろそろですね。


 背後を見ると、第一小隊は順調に撤退していた。

 アリシアも自身が撤退するべく、周囲の敵を魔術によって薙ぎ倒す。


 するとその時、目の前に何か巨大な物が落ちてきた。

 あまりの衝撃に大地が揺れ、土煙が舞う。


「姫騎士殿とお見受けする!!!」


 土煙の中で蹲っていた影が身体を起こす。そして腕を一振りすると、風が巻き起こり土煙を吹き飛ばした。

 

 そこには一人の大男がいた。

 禿頭(とくとう)の偉丈夫だ。身体が凄まじく大きい。その体躯はアリシアの二倍はあるだろう。

 手に持つのは鍛え上げられた身体に相応しい大きさの大剣だ。

 魔力を纏っていることからおそらくは魔剣だとアリシアは推測した。


「オレの名はデルガス=アルトルム! 一騎打ちを所望――」

「――騒々しいですね」


 アリシアは一言そう呟くと、一瞬で大男を斬り伏せた。

 大男の身体がズレ、地面に落ちる。僅かに遅れて大量の血が噴出した。

 帝国軍、第四軍団長デルガス=アルトルム。

 彼は姫騎士アリシアと剣を交わすこともなく絶命した。


「貴様! 卑怯だぞ!!!」


 そんな声が帝国兵から上がったが、アリシアは無視した。

 これは戦だ。油断している方が悪いとアリシアは思う。

 確かに名乗りの最中に攻撃することを卑怯だと考える者は多い。特に貴族には。アリシアも初めはそうだった。

 

 しかしシンの一言でその考えは変わった。


 以前、王国の同盟国に帝国がちょっかいをかけてきたことがあった。その時に派遣されたのがアリシアと、当時は部下だったシンだ。

 

 敵である帝国兵は高名な姫騎士アリシアに対して今と同じように名乗りを上げ、一騎打ちを申し込んだ。

 しかしアリシアが剣を抜き、それに応えようとしたところでシンに首を刎ねられ、絶命した。

 

 戦が終わった後、アリシアはシンに詰め寄った。

 騎士の決闘は誇りあるもので尊重されるべきだと。

 しかしシンは冷めた口調でこう言ったのだ。


 ――名乗っていて隙を晒すなんてバカのする事だ。誇りで仲間の命は救えない。

 

 アリシアは納得できなかったが、シンと共に行動するにつれて理解していった。

 彼は仲間を何よりも大切にしている。誇りを守っていて仲間が死ぬぐらいなら誇りなんていらない。そういう考えだ。


 やがてアリシアもシンと同じような考えをするようになっていった。


「……私も行きますか」


 今だに卑怯だと叫ぶだけの帝国兵を置いて、アリシアは撤退した。


 


「姫様。ご無事で何よりです」

「ありがとうシェスタ。首尾はどうですか?」


 王国軍の陣地に戻ったアリシアはシェスタに出迎えられた。

 

「この戦場は優勢です。ですが先程、右翼に布陣している第三騎士団が劣勢と伝令が入りました」

「第三ですか……」


 元はシンの騎士団だ。

 エーカリアで約五百名の精鋭が亡くなり、アリシアによって再編された騎士団である。

 団長と副団長には第一騎士団の第一小隊で最も序列が高かった者を選んだ。


「心配ですが、私たちが動くわけにはいきませんね。兄はどのような指揮を?」

「リヒト殿下は第四魔術師団を派遣したそうです。どうやら敵に強力な魔術師がいるようで……」

「無難な采配ですね。問題はそれで押し返せるか、ですが……」

()の実力は確かです。だから大丈夫かと」

「そうですね。今は信じましょう」

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