表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天狼の竜魔導機兵/転生先が死後発売されたRPGリメイク版  作者: 鳴無 啓悟
767年 七夜の節:ようこそ、異世界へ
2/10

ある少年の目覚め/記憶が欠けた転生者



◇◇◇




遡ること6年前、星歴767年


「……え、てんせー……何それ…知らん…」


  空中に浮かぶステータス画面(という物らしい)とともに、横から文字の波が襲い掛かってくる。あわあわと手を動かしていると、文字が俺に話しかけてきた。


〇猫ですよ❘異世界転生、ご存じでない?

「いせかい…てんせー…」

〇猫ですよ❘前世で何かしら不幸があって転生するやつ

〇わんわん❘あー、もしかして自分の死因も知らない感じ?

「えっ、死んじゃったの俺!?」


  ステータス画面を両手で掴んで揺さぶる。死んだの!?噓でしょ、何で死んじゃったの!?


〇わんわん❘画面酔いするから止めろぉ!!

「えっ、あ、ごめん…」

〇七つの子❘いつもの暴走トラックじゃないの?

〇猫ですよ❘トラックの運ちゃん可哀そうだろ

〇お揚げ君❘そろそろトラックの運ちゃん解放したげて

〇ぴょん吉❘異世界転生ラッシュで流通業が可哀そうだろ

〇七つの子❘俺に当たるなよぉ!!!!

〇わんわん❘ちょい待ち…あー、事故死じゃ無いわ

「ねえ、ちょっと俺を置いてかないで」


  滝のように文字の羅列が流れていく。ダメだ、目が追い付けない。


「俺の死因、何だったの」

〇わんわん❘すまん、規約に引っ掛かるから言えない

「なんでぇ!?」

〇猫ですよ❘転生システムが変わった影響でね

〇七つの子❘前世の情報は秘匿される仕様に変わったんだよ

「なんで…?」

〇七つの子❘それはオイオイネー


  うーん、よく分からないが…事故死じゃないのは確定か。


「じゃあ、俺自身の記憶が無いのも仕様?」

〇お揚げ君❘は?

〇わんわん❘は?

〇七つの子❘え?

〇猫ですよ❘は?

〇ぴょん吉❘おいコラ此処の管理テメーだろ何すっとぼけてんだ

〇わんわん❘ちょっ待て調べっから待って


  何、何なの俺何かマズいこと言った!?


〇わんわん❘えーっと…確認なんだが

「あ、はい」

〇わんわん❘前世の名前は?

「…わからない」

〇わんわん❘前世の性別は?

「……わからない」

〇わんわん❘前世の年齢は?

「………わかんねえ…!」

〇お揚げ君❘ちょっと管理人ー

〇猫ですよ❘転生者くん泣いちゃったじゃーん

〇ぴょん吉❘お前本当マジふざけんなよ

〇わんわん❘俺悪くねえええええええええええ


  勝手に涙が零れていく。自分の名前が思い出せない、何処で生まれたのかも分からない。今まで俺はどんな生活を送ってきたのか、誰と一緒に暮らしていたのかも。何も思い出せない。自分は本当に自分なのか。それすらも分からなくて、不安が一気に押し寄せてきて怖い。今の俺は幼いこどもだ。前世の俺が何歳だったのかは思い出せないが、感情のコントロールが上手くいかず泣き出したら止まらなくなる。俺が分からなくて、こわい。


〇猫ですよ❘マジ?転生途中でデータ欠けたとか?

〇お揚げ君❘いや転生先で事故った可能性もある

〇七つの子❘事故ったって…例えば?

〇お揚げ君❘送信途中でネット回線切断、てきな

〇七つの子❘突然の落雷でデータがお亡くなりか

〇ぴょん吉❘目覚めるタイミングで何かあったか

〇ぴょん吉❘この様子だと1割か2割DLした感じ?

〇猫ですよ❘まあ、とにかく。あんちゃん

「……俺?」

〇猫ですよ❘そそ。ステータス画面、そこ触ってみて



_________________

▽caution

 you may need to reload this page.


〖A5Cα〗 Age:10

Class : Slave

_________________


〇猫ですよ❘あんちゃん日本人だよな?

〇猫ですよ❘言語表記いじるか、そこ右下押してー



_________________

▽言語表記を変更しました

▽アイテム『隷属の首輪』の効果により

 対象のステータスを全て表示できません


〖A5Cα〗 年齢:10

クラス:奴隷

_________________


「えっ」


  俺の目に飛び込んで来た文字に、文字の人達がざわめく。


〇ぴょん吉❘おい

〇七つの子❘ハードモードじゃん

〇猫ですよ❘うわ

「このクラスって…」

〇お揚げ君❘原作だと兵種枠。普通なら村人なんだけど

〇ぴょん吉❘おい

〇わんわん❘転生先は完全ランダム制なの!!!!

「俺が……奴隷…わ、本当だ。何か首とか足に鎖とか付いてる」


  異世界転生とか前世とかワードが飛び交ったから、そっちに気を取られ過ぎて全然気が付かなかった。よく見れば服は粗末でボロボロだし、体中あちこちに傷跡と痣が目立つ。両手首に填められた枷。足首に重く纏わりつく枷。それらを確認して恐る恐る首輪に触れる。まるで冬の冷気に晒されたように、俺の掌に非情な冷たさが伝わって来た。試しにさ/外そうとすればバチ!っと音が鳴る。電流が体中に流れていき、一瞬だけ誰かの記憶が流れた。これは…転生者と自覚する前の…俺…?


〇七つの子❘マジか…マジか…

〇お揚げ君❘スタートから鬼畜すぎる

〇猫ですよ❘記憶なし・奴隷スタート…うーん、この

〇ぴょん吉❘お前さあ

〇わんわん❘俺のせいじゃねえええええええええええ


  また凄い勢いで文字が流れてく…


「このアルファベット?と数字のとこ、何?」

〇七つの子❘あんちゃんの名前だよ

〇猫ですよ❘正確に言えば奴隷番号

〇わんわん❘A5地区のC、αタイプ。

「A5地区?」

〇お揚げ君❘裏世界での表記だよ

〇ぴょん吉❘実在する地名じゃないからな

〇わんわん❘人身売買で使われる

〇わんわん❘後半はChildの略で、αはランク

〇七つの子❘ランクは魔力保有量だよ

〇お揚げ君❘魔力↑ならイケそうだな

「奴隷…奴隷かぁ…」


  第二の人生が奴隷スタート。前世が恵まれていたのかは知らないが、ちょっと…いや、かなり悲しい。さっきの電流で脳裏に流れた記憶を引っ張る。断片的でノイズが走っているから鮮明に思い出せないが、太ったおっさんに暴力を振るわれているシーンだった。どうしよう、あれ絶対に俺の主だよな?あの健康診断に引っ掛かりそうなオッサンに見付かったら、このまま奴隷として一生を終えるのかな…


〇猫ですよ❘あんちゃん、そう悲観になるな

〇わんわん❘クラスチェンジがあるだろ?

「えっと…?」

〇七つの子❘奴隷から変われるってこと

「そうなの!?」

〇お揚げ君❘上げて落としてスマンが、

〇お揚げ君❘その拘束具って確か

〇猫ですよ❘…あー

〇ぴょん吉❘耐魔B級か…厳しいな

「? ??」

〇七つの子❘今すぐには無理ってこと

〇猫ですよ❘大丈夫大丈夫、何とかなるって

〇ぴょん吉❘いくらでも助言すっからな


  文字の人?達が言うには、特別製の拘束具が取れない限り奴隷のままらしい。転生先が奴隷の子どもだったのか、運悪く奴隷になってしまった後に魂が繋がってしまったのか。議論を交わす文字の洪水を眺めていくと、だんだん冷静になってきた。もしかして精神年齢、結構高い方なのかな?


「ていうか…ここ、何処?異世界ってことは”前世の俺”が居た世界じゃ、無いんだよな…?」


  ゴツゴツとした岩肌が四方を取り囲む。空を見上げれば夕陽が差し掛かっているのか、真っ赤に染まっている。しかし此処からじゃ、町なんて何処にも見えない。文字の人達から推定日本人と認識された俺。前世の記憶に関して欠けているのは俺自身だ。日本に関する知識は失われていない。もし異世界の家屋を見られたら、前世の知識と比較できる。その違いを見れば本当に此処が異世界なのだと、改めて受け入れるだろう。


〇わんわん❘其処はゲーム『ドラグーンズ アクシアⅦ』

〇ぴょん吉❘君が前世で沢山プレイしていたゲームの世界

「マジかー…ちょっと待って、何も思い出せない」


  沢山遊んだのなら風景に見覚えあるはずなのに…何か、こう…脳に引っ掛からないというか…


〇猫ですよ❘の、リメイク版

「りめいく…?」

〇猫ですよ❘大幅に改造されて古参ユーザーに不評

〇ぴょん吉❘原作知識が全く役に立たないほど

〇七つの子❘元のシナリオ見る影も無いレベル

〇わんわん❘あんちゃんの死後にリメイク版が発売

「それ前世の記憶があっても意味ねーじゃん!?」

〇猫ですよ❘草

〇お揚げ君❘草

〇七つの子❘草

「………何で急に単語だけ流れ始めたの…?」

〇七つの子❘それは置いておいて、とりあえず歩こうか


 生前の自分に関する記憶なし。転生先は大好きなゲーム…の、死後発売されたリメイク版。第二の人生は奴隷スタート。こうして良いこと無しな異世界転生ライフがはじまってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ