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弱属性の俺最強 ~極めて稀な地属性を宿した俺は、異世界を救う勇者となる~  作者: フカセ カフカ
魔法・魔技向上編

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第95話 対ルールーコンビ その2

 新たな地属性魔法が、今、俺の手を離れた。 


 ルーチェリアとルーナ。この二人を同時に相手取る展開を制すためには、どちらかを先に封じることが先決だ。とはいえ、決して簡単なことではない。だからせめて、二人の虚を突くことさえできればそれでいい。


 俺は頭の中で魔法パズルを組み立てた。その結果、複数相手に有効な魔法を俺はすでに生み出していた。得意とする大地防壁(アースブロッカー)を極め抜き、単発の一枚岩ではなく、双璧を作り出す強力な魔法を。


 「うん? なんか、地面が揺れてる」


 ルーチェリアは、徐々に増す揺れに警戒し、両足を広げて腰を落とした。だが、無論これは攻撃なんかじゃない。今、俺を中心にして彼女たちの前に、巨大な守護双璧が唸りを上げて突き上げた。


 「な! 何なのこれ?!」


 「わわっ、え、ハルセ? どこいった、見えない」


 その壁は、俺の姿をルーチェリアとルーナの視界から隠した。慌てふためく彼女たちを横目に、俺はすぐに動いた。


 壁に気を取られたルーナに対し、俺は拳を開いて掌底とし、躊躇なく、彼女の脇腹へと叩きこんだ。


 ルーナはその瞬間、「グワッ!?」っと、アヒルのような声を上げた。体はくの字に折れ、そのままの格好で横へと吹き飛んだ。


 これにルーチェリアが反応した。彼女の眼前に聳え立つ大地の壁を、手に持つ刀で一刀両断したのだ。壁を崩し、俺を視界に捉えたルーチェリアは、俊足を飛ばしてこちらへと駆ける。


 (は? え? あの岩山が、斬られた?)


 鋭い斬撃によって崩れ落ちた壁を背に、ルーナの元へと駆けつけると、


 「ねえルーナ、返事をして、お願い、大丈夫?」


 倒れた体を抱き上げて、必死に声をかけた。それから「ふう~」と深く、怒りに満ちた息を吐き、俺のことを睨みつけた。


 「ハルセ、女の子に手をあげるなんて、最、低。見損なったよ」


 「いやいや、ちょっと待てよ。ガルベルトさんも言ってたろ? あからさま手加減なんてしたら逆にどうなるか。それに俺は殴ってなんかない。ちゃんと手のひらを広げたからな」


 ──ザンッ!!


 ルーナ側の大地の壁までいとも容易く斬り倒された。まるで紙でも切るかのように、ルーチェリアの斬撃が線となって通り抜けたのだ。


 ガラガラと音を立て崩れ落ちる壁の横で、彼女は無言のまま身を翻し、地面に横たわらせたルーナの元へと歩み寄る。

 

 いつもの彼女とは違う。完全にキレている。ルーナに対する仕打ちに激昂している。俺の心では、「やばい」が連続して流れ、どうしたらいいのか分からない女心に頭を悩ませた。ともかく、話が通じる状況じゃない。


 そう俺があたふたとしていると、急にルーチェリアがクスクスと笑いだした。俺は「え?」と呆気に取られ、彼女はこちらを振り返り口を開いた。


 「ふふっ、まだまだ甘々だね、ハルセは。でも、そこがいいところなんだけどねえ。慌てた感じも可愛い」


 はにかんだルーチェリアを見て、俺はここで一本とられたと思った。どうやらこうなることを見越して、彼女は一芝居演じたようだ。


 つまり、自分で言うのも何だが、俺の優しさが利用されてしまった、ということだろう。


 新魔法によって二人を分断、ルーナに奇襲をかけたところまではよかったものの、俺はいつもと様子の違うルーチェリアの態度にたじろいでしまっていた。


 せっかく、一対一の機会を生み出したというのに、自らそれを棒に振ったのだ。


 「ハルセ、私たちの隙を突いたのはよかったけど、あと一歩足りなかったね」 


 「そうそう。お腹、少しだけ痛かった。でもね、お腹だけ鎧作れたからへいき」


 ルーナは誇らしげにお腹をポンと突き出し、そこに巻かれた白い腹当を見せつけた。


 古竜(エンシェントドラゴン)特有の技能(スキル)効果。彼女は咄嗟の判断で部分的に発動、鎧ができるまでの時間短縮を図っていた。

 

 最強の竜種。中でも古竜という存在は別格だ。ルーナはその末裔であり、俺が遠慮するほど弱いわけはないのだ。


 いつもの可愛らしい彼女ばかりを見ていたせいで、感覚が麻痺しきっていたのかもしれない。それにルーチェリアのいうとおり、俺は情けをかけてしまっていた。これは修練だが、戦場では確実に命取りだ。


 こうして、俺が自らの過ちを悔いている間にも、ルーチェリアとルーナは動きだした。


 「ルーナ、いけるね?」


 「うん、いける!」


 まだまだ元気一杯の声だけがその場に残され、俺の瞳からは再び消えた。 


 「う、しまった!」


 瞬時に俺の視線の遥か下をかいくぐっていたルーチェリア。大きく右足を踏みこみながら、鞘へと手を翳していた。


 「ハルセ、これ避けれる? 兎刃の参、水麗煌翔(すいれいこうしょう)


 鞘から抜かれる刃の煌めき。刀身を伝う雫によって反射される光は、残像のように連なりながら、天地を繋ぐ一筋の線を描いた。


 光速の抜刀術。下段から上段へと流れるその刃を、俺は体を反らせ、なんとか運よく避けきった。とはいえ、これで終わりなわけがなかった。


 俺の遥か頭上には、白き鎧に身を包んだルーナの姿がある。天高く白銀の槌を振りかざした彼女が、そのまま隕石の如く迫っていた。


 このままでは、さっきと同じだ。避けたところで槍が飛んでくる。そのうえ今回は全身に鎧を纏っている。あの速度での落下を思えば、衝撃はさっきの比じゃない。


 今度こそ、避けなければやられる──俺は後ろへと反らした身体を右へ捻じる。同時に地面を蹴って、思いっきり回転をかけて横へと跳んだ。


 ドゴンッ──その直後、大気が割れんばかりの轟音が響いた。ルーナの槌によって、破壊された大地は、巨大な槍となってその場で天を穿った。


 「うう~、もう少しだったのになあ~、でもハルセがすごい。ガゥウ」


 「ハルセ、やるう~、私の剣技だって初見のはずなのに」


 この二人、少しは手加減するとかないのか? 本当に俺が死ぬぞ?──額に浮かぶ汗を手の甲で拭い、嫌な息をその場に落とした。

 

 かたや二人はあっけらかん。俺の頭はヤバいが渋滞、埋め尽くされそうだった。


 (ルーチェリア&ルーナ、ルールーコンビといったところか)


 どうでもいいことで気を逸らし、俺が前に出ようとしたそのとき、


 「お~い! なんか面白そうなことをやっているじゃないか。今日は鍛錬日和だな」


 一人の赤毛の女性が近づくのが、目に映り込んだ。


 (ん~、で、誰だっけ?)


読んでいただきありがとうございます。

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