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国家仲買人   作者: 津辻真咲
2/6

政府解体型

国家仲買人には、二種類いる。買収型の国家仲買人と政府解体型の国家仲買人である。

政府解体型の国家仲買人は、国の三大要素である政府だけを崩壊させて、国を得る国家仲買人である。



「総理、もう限界です! これ以上人口が減少すれば、この国は終わりです!」

 官房長官のグレイソン=ロドリゲスは叫ぶ。

「仕方がない。この国の法律は、少し他国より遅れている。これも皆、ねじれ国会のせいだ。次の右院選挙の時には、必ず過半数を取らねばならない。そうしなければ、この国からの国民の海外流失は収まらない。これ以上! どうしろというんだ!」

 総理大臣のアルバート=バイデンも声を荒げる。

「ならば、一旦、この国をリセットしましょうか?」

 グレイソンは呟くように言う。

「リセットだと?」

 アルバートは聞き返す。

「この国をあの国家仲買人に売るのです。そして、その得た資金で、もう一度、国を建国するのです」

 グレイソンは提案する。

「……分かった。そうしよう」



「今日も盛況だな? ルイ」

 バーのマスター、リアムは彼に話しかける。

「まぁな。今回のお客は、国のリセットが目的だそうだ」

 ルイはグラスを揺らす。

「そうか。これもまた、身勝手な理由だな」

「俺の仕事にその事情は関係ないよ」

ルイは目を伏せて微笑んだ。

「そうだな」



「ご利用まことにありがとうございます。ご用件は?」

 政府解体型の国家仲買人、ローガン=ミラーは依頼人に話しかける。

「この国を解体して下さい」

 依頼人の少年、オリバー=エバンスはそう言う。

「ご希望金額は?」

 ローガンは詳細を聞く。

「今年の歳入の50%です」

「分かりました。承ります。では」

彼は立ち去った。

「……」

オリバーはローガンが立ち去るのを見ていた。

――これでいいんだ。これで。

オリバーは涙を流す。

――俺たちは故郷を守る為に故郷を無くすんだ。



捜査本部

「前回の捜査を踏まえて、国家仲買人であるルイ=スミスを赤手配にすることにする! いいか!」

 アリソンがそう指示する。

「はい!」

 刑事たちは返事をする。

「それから、潜入捜査官たちからの情報で、ある一部の国民が政府解体型の国家仲買人へ、この国の政府解体を依頼したという情報が届いている。今回は捜査対象が二名だ! 今までよりも気を引き締める様に!」

「はい!」

ガタガタガタガタ! 刑事たちは本部から現場へ向かった。

――国家仲買人たち、必ず捕まえる! この警察人生にかけて!



バーにて

「ルイ。知ってるか?」

 情報屋のダニエルがルイに話しかける。

「何がだ?」

 ルイは彼を見る。

「知りたいのなら、もう50」

ダニエルは笑顔で催促する。

「ったく、何でまた?」

ルイは封筒を渡す。

「この仕事が終わったら観光に行くんだ。悪いか?」

 ダニエルは札束を確認する。

「まったく。それで?」

「この国の国民が政府解体型にこの国の解体を依頼したそうだ」

「!」

「急げよな。じゃ!」

ダニエルは笑顔で立ち去った。

――解体屋が動いているのか。まずいな。



「突入!」

 アリソンがそう合図する。すると、刑事たちが政府解体型の国家仲買人へ接触した国民たちのアジトへ突入した。

そして、刑事たちは一味に銃を突きつけ、彼らを制圧した。

「逮捕する」

 アリソンが逮捕状を見せた。

「証拠はどこにあるって言うんだ!」

 オリバーが叫ぶ。

「私たちが証拠を押さえたわ」

 声が聞こえた。

「まさか!」

 オリバーは驚く。

「その通り。潜入捜査官たちだ」

 アリソンは淡々と話す。

「では聞くが、何にも役に立たず、もうすぐなくなる様な政府を解体して何が悪い! あいつらは俺たちの故郷を破滅に追い込んでいる! この瞬間にもな! だから、俺たちはそうなる前にこの国を終わりにする! そして、俺たちがこの国を再建する!」

 オリバーは声を荒げて、話した。

「それは無理かな」

 アリソンは呟くように言った。

「何だと! お前!」

 オリバーは押さえつけている刑事たちを振りほどこうと、暴れた。

「残りの話は、取調室で行う。皆、連行してくれ」

「はい」

 刑事たちは、彼らを連行した。



捜査本部

アリソンは上層部への報告書を書いていた。

「ベル本部長! 大変です!」

 刑事、ジェイク=リチャードソンが駆け込んで来た。

「どうした?」

 アリソンは彼の方を見る。

「私に協力をしている情報屋から、連絡がありまして」

「それで、何だ?」

「総理大臣と官房長官が、あの赤手配の国家仲買人に接触しているとの事です」

「! 分かった。追跡捜査頼む」

 アリソンは一瞬、驚いたが、冷静に指示した。

「はい!」

ジェイクは立ち去った。

――政府解体型の国家仲買人の依頼人は逮捕した。これで、動きを封じた。次は、あの赤手配の男だ!

――これから、どうする? アジトも通じている情報屋の当てもない。一体どうすれば……。

「……」

――こうなったら、インターポールがあの国を買ってみるか。壮大な潜入捜査になるな。世界政府が許可するだろうか?



――今回の買い手は、黒髪のポニーテールでサングラスの黒装束か。

――いた。

「ご利用ありがとうございます。手数料は来年度の歳入の25%です」

 ルイは買い手の隣に座った。すると、買い手はサングラスとポニーテールの紐をほどく。

「!」

 ルイは驚く。買い手は銃を彼へと向けた。

「ご苦労様です」

買い手は微笑む。

「それで、僕に何の御用かな?」

 ルイは驚いてはいたが、すぐに冷静になった。

「署までご同行願います」

 その買い手は囮捜査をしていたアリソンだった。

「任意?」

 ルイは聞く。

「いいえ。赤手配には、拘束力がありますから」

 アリソンは答える。

「インターポールもしつこいね。よくやるよ」

「仕事なんでね」

「困ったな。これから仕事だと思ってたのにな」

「そう簡単にインターポールから逃げれると思ったら大間違いだ。赤手配」

 アリソンはぴしゃりと言う。一方、ルイは目を伏せて微笑んだ。

「インターポールさん、メールを送ってもいいかな?」

「メール? 誰に?」

「それは、極秘事項ですが?」

 ルイは再び、微笑む。

「まぁ、いい。おとなしく同行してもらえるのなら」

携帯端末を取り出し、情報屋、ダニエルにメールをする。

ピピピ。

『ダニエル、世界政府の首相の電話番号を調べてくれ』

『あぁ、それならもう仕入れているぜ? 前その依頼受けた事あるから』

『頼もしいね』

『これはどうも』



拘置所

ガシャン。ドアが閉まった。

――あーあ、捕まっちゃったな。まぁ、いい。これも貴重な経験だ。



捜査本部

アリソンは報告書を書いている。すると、刑事部長のアレキサンダー=リーがやって来た。

「ベル本部長。少しいいかな?」

「はい。何でしょうか?」

 アリソンは手を止めて、立ち上がる。

「国家仲買人、ルイ=スミスの赤手配を青手配にしてくれないか?」

「! どういう事ですか!? 一体なぜですか!?」

 アリソンは驚く。

「世界政府の首相本人から連絡が入った」

 アレキサンダーは淡々と説明する。

「それで、諦めろと?」

「そうだ」

「!」

 アリソンは言葉を失う。

――せっかく、逮捕したのに!

「それから、インターポールがあの赤手配の国家仲買人からあの国を買うというおとり捜査も中止にしろとの事です。いいですか?」

 アレキサンダーは念をおす。

「はい」

アレキサンダーはアリソンの返事を聞くと、立ち去った。アリソンはその場に佇み、俯いていた。



「ご利用ありがとうございます。買い手が見つかりました。来年度の歳入の20%があなたの手に渡ります」

 ルイは釈放され、国家仲買人の仕事をしていた。

「そうか、分かった」

 依頼人のアルバートは頷く。

「ありがとうございます。では」

 ルイは立ち去ろうとする。が、しかし。

 ザッ!

 アリソンが銃を向けていた。

「動くな! そこまでだ! 総理!」

「一体、どうなっている!? なぜ、ここが!?」

「大変失礼かと思ったのですが、総理、あなたの携帯端末のGPSを利用させてもらいました」

「くそっ! そういう事か!」

地面に膝を着き、地面を拳で叩いた。

「どうしてだ!」

 アルバートはうなだれた。

「滅びずに済んだと、本気で思っているのか?」

「!?」

アリソンは少し、驚きながら、振り向く。

「!?」

アルバートも顔を上げる。

「この国は、累進課税の緩和で、格差社会が進行しているんだろ?そんな国に誰が居たがる?」

 ルイは低い声で話す。

「貴様に何が分かる!」

 アルバートが食って掛かる。

「今までいろんな国を仲介してきた。だが、こんなにひどい格差は初めてだ!」

 ルイが声を荒げた。アリソンはルイに魅せられた。



――あの国家仲買人、本当に世界を変えたいのかな? 私たちインターポールとは、手段が違うけど。

アリソンは窓から空を見上げた。

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