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第八話 修行、開始

 え〜…今回の話はですね、魔法についての説明で文の半分近くを使ってますので、余り面白く無いかもしれません…orz

 次の朝、朝食を食べて直ぐに馬車に潜り込んで寝始めたイクスをメリッサは叩き起こした。


「ちょっとアンタ、何いきなり寝始めてんのよ。アタシに魔法を教えてくれるって約束は!?」


 当のイクスは眠そうに目を擦りながらメリッサに言う。


「あのさ、メリッサ。俺が平然としてるから気にして無いのかも知れないけど、俺まだ全快した訳じゃないからね?体力まだ戻って無いからさ、寝させてくれないと野営の時寝ちゃうかもよ?」


「むぅぅ〜〜。ダメ!!約束はちゃんと守らなきゃダメよ!!」


 ヨハンとルーの歩く音に混じってジルギスの笑い声が聞こえて来た。


「うぅ…。ジルギスからも言ってやってよ」


「イクスを援護したいのは山々なんだがよぉ、約束しちまったモンはしょうがねぇよ。諦めなイクス」


「ぐうぅ、ジルギスめ。裏切ったな〜」


 イクスがそんな事を言っていると、メリッサがずずい、と近寄って来た。


「はっやっく!!!」


 こうしてイクスとメリッサの楽しい(?)修行がスタートしたのだった。








◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎



 イクスは眠い目を擦りながらメリッサに問う。


「はい、メリッサ君に問題だ。『マナ』とは?」


 それに対しメリッサは不機嫌そうに返した。


「何その喋り方。変よ?それに今更マナから学ぶ理由が分かんないわよ」


 その言葉を聞いたイクスは盛大に溜め息をついた。


「な、何よ」


「メリッサ君、こういうのは形から入るのが重要なのだよ、うん。それに基礎から学び始めるのは当然だ。何事もまず『知る』事が最も大事なんだ。例えばだ。刃物が何なのか知らない子供に、刃物を何の知識も与えずに渡したらどうなると思うかね?」


「そりゃ怪我すんのがオチでしょ」


「うむ、正解だ。じゃあそれを魔法に置き換えたら、基礎から学ぶ重要さも理解出来るね?」


「…」


 メリッサは黙ってイクスを見ていた。恐らく反論出来ないからだろう。


「沈黙は肯定と取らせて貰う。ではもう一度聞こう。『マナ』とは何だね?」



「…全ての有機生命体に宿るエネルギーの名称で、質量は無し。色も基本的には無色だけど、熟練の魔術士はマナに色が付く。マナを媒体に自然現象を人為的に起こすのが『魔法』で、自然界では起こり得ない現象も魔法なら引き起こす事が可能。どう?」


「ふむ、正解だ。よく勉強してるね。本に書いてある説明とほぼ同じだったよ」


 イクスの手にはいつの間にかメリッサの通う予定の魔法学校の教科書が。


「ちょ!!何でアンタがそれを!?」


「そこに置いてあった」


 イクスはトウカの実の入った木箱を指差した。


「大方、トウカの実に夢中で忘れてた。そんなところだろ?」


 メリッサは顏を赤くしてイクスを睨む。だがイクスは何事も無かったかの様に振る舞った。



「メリッサはさ、マナには魔法の媒体にする以外の使い方があるって知ってる?」


「え!?そんな事教科書には載って無かったけど…」



「無機物にマナを流す事による硬度の変更と吸着、さ。まぁ魔法剣士にとっては常識みたいな物なんだけどね」

「硬度の変更と吸着?どういう…」


「全ての物体が小さな、それこそ目に見えない程の小さな粒子で出来てるってのは知ってるだろ?」


「えぇ。マナ自体も粒子の集まり…だったわよね?」


「正解。で、物体の粒子の間にマナを巡らせる事で、その物体の粒子同士をくっつけるたり切り離したりすることが出来るんだ。それによって、ある程度の硬度なら変更が出来るんだよ」


「???」


 頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げるメリッサを見たイクスは、苦笑しながら続ける。


「例を出そうか。う〜ん…。メリッサ、器に水を入れてくれないか?」


「えっ?あ、うん」


 メリッサは水の入った皮袋を取り出し、木の器に水を注ぐ。


「あぁ、それ位でいいよ。持って来て」



 器の半分程に水を注いだメリッサは、馬車の揺れで溢れないよう注意しながら、器をイクスに手渡した。



「じゃあメリッサ、この水が今どの位の硬さか、触って調べてみて?」


 その言葉を聞いてメリッサは一瞬ポカンとしていたが、直ぐに我に返ってイクスに文句を言う。


「イクスはアタシを馬鹿にしてんのかしら…?水なんだから硬さなんて無い位子供でも分かるわよ!!」



「いいからいいから。ほら、とりあえず触って?」


 むすっとした顏のままメリッサは水に指を浸けた。


「ほら、やったわよ」

 その様子に満足そうに頷いたイクスは掌にマナを集め、器ごとマナで覆った。


「じゃ、もう一度触ってみて?」


 メリッサは何がしたいの?とでも言いたげな顏をして、再び水に触れた。


「え!?何よコレ…」


 再度水をつつくメリッサの顔色は、驚愕というよりも戸惑いの色が強い。


 メリッサの指が水面に触れる。本来なら何の抵抗も無く沈み込む筈の指は、水面で押し戻されていた。


「水だけ取り出して見せようか?」


「…出来んの?」


「当然だよ。ほら」


そう言ってイクスは空いた掌にもマナを集め、その上に器をひっくり返した。



 水はゼリー状になっていて、イクスの掌の上でふるふると揺れていた。


「これが…硬度の変更?」


「そ。これも一応『マナブースト』に分類されるらしいよ。そして、これが吸着」


 そう言ってイクスが掌を返すと、本来なら重力によって下に落ちる筈の水は、イクスの掌に吸い付いたかの様に離れなかった。


「ふぇ〜〜。知らなかったわ。ねぇ、これはどうなってんの?」


 メリッサは興味津々なのか、半球型になった水から目を離さずに疑問を口にした。


「さっき、硬度の変更の説明で粒子の間にマナを流すって話したろ?つまり今、掌から水に流したマナによって掌と水が繋がってるんだよ。だから逆さにしても落ちないんだ。まぁ、マナを流すの止めたら落ちちゃうけどね」


 イクスは器を手に取り、水を吸着させている掌の下に持って来ると、マナを流すのを止めた。するとマナによって半球型に保たれていた水は形を失い、重力落下によって器に落ちた。


「マナの練度が高くなればなる程、硬度の変更がしやすくなる。上位魔術士なら水を鉄位の硬さに変更出来ると思うよ」


「それが何で魔法剣士にとって常識なの?」



「そりゃそうさ。魔法剣士は魔法を使うけどあくまで剣士。武器を使って戦うのが主体だから、武器の強度は生命線とも言えるのさ」


「なるほどね〜。ねぇイクス、さっき“上位魔術士なら水を鉄位の硬さに出来る”って言ったわよね?イクスは出来ないの?」



 その問いにイクスは苦笑しながら答えた。


「俺も流石にそこまでは出来ないよ」


 腕輪の呪いで力を削がれている今では。


 イクスはその言葉を飲み込んで、メリッサに問う。


「んじゃ次だ。魔法の起源と基本性質は?」




「魔法は…。太古の人々は『コトダマ』っていう言葉を媒体として物を自在に操る技術を持ってたの。今はもう失われてしまった技術だけど。

 その失われた『コトダマ』を模倣して『魔法』が生まれた。

 だから魔法は基本的に『詠唱』で発動させる。でも数百年前に『魔法陣』の概念が形成されて、今では『魔法陣』にマナを送るだけでも魔法は発動する様になったわ。でも詠唱魔法に比べて威力や効果が落ちるわね」


「…よく覚えてるなぁ」


 当たり前よ!!と無い胸を反らせるメリッサを見て、イクスは困っていた。


(やっべ〜〜〜…。知らなかった。師匠は『理屈はこう。簡単だろ?出来なかったらお仕置き☆』って感じの人だったしなぁ…。

 こういう根本的な説明すっ跳ばしていきなりやり方教えられた俺じゃ…ボロが出るの時間の問題なんじゃ…)



 そんな事を考えつつ、イクスはどんどん質問する。


「はい次。『魔法』、『精霊魔法』の違いは?」



 メリッサは暫くむぅ〜〜〜と唸っていたが、やがて自信無さそうに答えた。


「ええっと…。確か…『精霊魔法』は精霊の力を借りて発動させる魔法で…。どっちかというと召喚魔法っぽくて…、効果や威力は絶大だけど、精霊と『契約』してないと使えない魔法。

 ただの『魔法』は精霊の力を借りずに発動させる、世間一般に言う魔法の事…だったと思うんだけど…あってた?」



「おぉ〜。正解。メリッサって教科書覚えてるの!?」


「そりゃそうよ。もう5回は読んだんだから当然よ!」


「へぇ〜…。勉強熱心なんだねぇ…」


 メリッサの顏に僅かに影が差したが、教科書を読んでいたイクスはそれに気付かなかった。


「はい次〜。属性とその効果について説明せよ」



 メリッサが溜め息をつく。


「これ、魔法の修行と関係あんの?いくら基礎が大事だからって…」



「はい、つべこべ言わずに答える!」


 イクスは手に持つ教科書をビシィ!とメリッサに突き付けて言った。


「イクス…アンタ口調どんどんおかしくなってるわよ…。

 属性は『無』『火』『水』『土』『風』『雷』『光』『闇』…『呪』の9つね。昔は『金』と『木』を入れて11属性としてたらしいけど、能力が近い事から、両方とも『土』に統合されたのよね」



「おぉ〜…。まるで教科書を見てるかの様だ」


「いや、アンタ教科書見てんじゃん…」



 メリッサは呆れ顏でイクスを見るが、当の本人はケロリとしている。


「続けて?」



「…はぁ。『無』は種類が多いから用途は一番広いわね。

 『火』と『光』は攻撃以外には光として日常生活で使えるわ。

 『水』『土』『風』は癒しの力があるから、傷を癒したり、治水や土地を良くしたりとか…使い勝手が一番良いわね。

 『呪』は論外としても…『雷』と『闇』は今のところ攻撃以外に使い道はないわね。…これでいいでしょ?」


「うん。因みにメリッサの得意属性は?」


「あ゛〜〜…アタシ?アタシは『風』と『土』よ」


 よほど説明が億劫だったのか、手足を投げ出してぐったりするメリッサにイクスは心の中で謝罪した。


(ごめんメリッサ。今色々言わせたのは、単純に俺が知らないから魔法の知識を取り入れる為だったんだよね…)


 そんなことは口が裂けても言えないイクスは、とりあえずメリッサを褒めちぎる。


 満更でもなさそうなメリッサの様子を見て、何とかなったか?と思っていたイクスだったが…メリッサが嗜虐的な笑みを浮かべている。



「は〜い、イクスせんせーに質問〜。『相生』と『相剋』になる属性教えて」




 この小娘め…昨日といい今といい何故に人が安心しかけた所で爆弾を投下してくるのだろうか。


 勿論そんな事知る筈がないイクスがどう答えるべきか悩んでいると、前方から声が聞こえて来た。



「確か…。『火』と『風』、『水』と『土』、『光』と『雷』が相生で、『火』と『水』、『土』と『雷』、『光』と『闇』が相剋だった筈よぉ」


 話を聞いていたのか、絶妙なタイミングでジルギスがフォローしてくれた。


「へぇ…詳しいじゃない。ジルギスは魔法使えるの?」


「いや?おれっちはからっきしでぃ。古い友人によ、魔法剣士がいるからよぉ、ソイツに魔法について聞いてみた事があってよ」



「だからやけに魔法に詳しかったんだね」


「おぅよ!時にイクス」



「…何?」


「今日の夕飯作りはイクスに任せていいかぁ?」


 イクスはこの言葉の意図するものに直ぐに気付いた。

 要は『上手くフォローしてやったんだから楽させろ』である。流石商人、利益追求には余念がない。


「うん…わかったよ…」



 イクスは歯噛みしながら答える。ジルギスがニヤリと笑う姿が容易に想像出来て悔しい。


「いつの間に食事当番が交代制になったのよ?」


 交代制ではアリマセン。一方的な物です、とは言えずに沈黙するイクス。


「ジルギスも馬が操れるからと言って旅慣れしてる訳じゃないからさ、慣れるまでは俺が夕飯を作って負担を減らそうって昨日の夜に決めたんだよ」


 これでいいんだろ?とイクスが幌の向こうのジルギスを睨んでいると、やはり笑い声が聞こえた。一杯食わされた気分だ…。


「へぇ、アタシが寝てる間にそんな事が決まってたのね」


「ま、まぁね…」


 なんとか気を取り直したイクスはジルギスの武器の入った木箱をあさり始めた。


「ねぇイクス…勝手にそんな事していいの?てゆーか、修行は?」


「いーって。後でちゃんと返せばさ。え〜っと………あれ?こっちじゃないな。…んじゃこれか?……………お、あった」


 イクスが手に持っているのは、本来鎖か何かに繋がれていたのだろう、止め具の付いた鉄球だった。


「え…ちょっとソレどうするのよ」


「どうするって…修行に使うんだよ?」



「えっと、もっと具体的に」


 何だかメリッサの顏が心なしか青い気がするけど…。



「まずはマナの練度を上げるのが魔法を上達させる近道だと思うからね、マナコントロールを覚えて貰う為にこれを頭に乗せて、揺れる馬車の中でも落とさないように『吸着』させる練習をするんだ」


 メリッサが絶句する。何かおかしな事を言っただろうか?


 イクスが首を傾げていると、メリッサがおずおずと口を開いた。



「ほ、本当にソレ使うの?……かなり重いんじゃ……」


「いや、大して重くないよ。1キロ位じゃないかな?落としても打撲で済むよ。あ〜…でも、指先に落ちたら折れるかもねー」


 平然と言うイクス。



「えっとさ〜…。イクスもこれ、やったの?」



「ああうん、やったね〜。まぁ俺が頭に乗せたのは包丁だったけどさ〜」



 遠くを見て目頭を押さえるイクスを見て、イクスの師匠がどれだけスパルタだったかを垣間見た気がしたメリッサは、背筋が寒くなるのを感じた。


「そ、そう…。でも鉄球は流石に…アタシも女なんだし、王都に着くまでに痣だらけってのは…ね…」



「ん〜…確かに。そりゃまずいかもね。んじゃあ…」



 キョロキョロと辺りを見渡すイクス。




「これにしようか。本当は中身がある物の方がマナを流しやすいんだけど…」


 イクスが手に取ったのは、籐で編んだ球形の籠だった。


「え、えぇ!それにしましょ!!」



あんな鉄の塊を頭に乗せて危険な思いをする位なら、マナが流しにくい方が遥かにマシだ。


「ん〜…。落とした時の罰則考えないとな〜…」


 その言葉にメリッサは怒りを孕んだ声で噛みつく。


「ちょっ、きき、聞いてないわよ!!罰則って何よ!?」


「あれ?メリッサ知らない?人間はね、恐怖や苦しみから逃れる為ならいくらでも成長出来るんだよ?俺もそうだったし」




 さも当然、といった顏のイクスに、メリッサは軽い恐怖を感じた。



「ん〜…あ、思いついた。1回落とす度に少しずつ夕飯が減ってく事にしよう、うん」


 そう言ってメリッサの頭に籠を乗せようとするイクスから後退りながら、メリッサは懇願する。


「ま、まま待ってイクス。アタシこんなやり方初めてだから、ちょっと位練習させなさいよ!」


 その言葉にイクスは笑みで返す。


「分かった。んじゃ10回までなら罰則無しにしよう。いいね?」


 有無を言わせぬその完璧過ぎる笑みに怖じ気付いたメリッサは、素直に頷くしかなかった。









 その日の夜のメリッサの夕飯は、ウサギの餌並に少なかったとか。

いや〜、私へたれ虫。は、話書いてると面白そうなタイトル“だけ”よく思い付きます。幾つか紹介を…             咎人の翼〜愚者は(そら)へと手を伸ばす〜                殺戮人形(マーダードール)は贄と踊る                   絶体絶命!死神仮面!!              …どうでしょう?興味を惹かれる様な題名はありましたでしょうか?(他の作者様の作品と被って無いよね!?被ってたらスイマセン…)                      因みにこの中の1つは話のイメージがかなり固まってしまったので、連載始めるかも…。うん、優柔不断でゴメン…

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