第四話 戦闘 ワームドラゴン
やっと女の子登場です(笑)本来は出す予定ではなかったのですが、第四話までの登場人物が主人公、中年オヤジ、老人に陰険な門番ってのはどうかと思いまして(^_^;) まぁ物語はまだ大まかなストーリーしか考えていないので(オイ 大した支障は出ないはず?…はず。 今回で主人公がチート並に強い事が発覚します(笑)
イクスは駆けながら思案する。
(Cランク、ワームドラゴンか。接近して狩るのは難しいな。だけどそうなると『普通』に闘うしかないよなぁ…。
恐らくまだ沢山商人が出現場所にいるだろうし、下手に実力を見せるべきじゃないんだろうけど…。むぅぅ、しかし相手はCランク、『手加減』なんてしてたらまず死ぬな。
『奥義』は1つも使わないとしても…、やっぱ『普通』にやるしかないかな。 だけどそうしたらまず目立つ。
ん〜…ん?いや目立つべきなのか?商人は実力のある人間には信頼を置くし、王都で噂になれば、兵士として志願しやすくなるか?
でも俺異邦人だからな〜…登用してくれるかな? 危ない橋を渡る気がするけど…どうする?)
イクスがやきもきしている間に、ワームドラゴンの出現場所に到着した。
イクスが始めに目にしたのは、イクスと同じく『マナブースト』を使い体長10メートルはあるだろうワームドラゴンと闘う、緑色のローブを着た、身の丈程もある杖を持つ、栗色の髪を肩口で切り揃えた少女の姿だった。
だが、見習いなのだろう、マナの練度が低い。恐らく風の魔法を使っているのだろうが、ワームドラゴンの体表から分泌されるぬめりの強い酸に弾かれている。
イクスは一旦『マナブースト』を解除し、素早く周囲を見渡す。旅人や商人は皆逃げたのだろう、誰一人としていない。
(後はあの子だけか…。まぁ、一人くらいなら見られても問題無い、か?)
だが念の為、退避を促す事にした。
「おい!あんた!!あんたの実力じゃソイツは無理だ!早く逃げろ!!死にたいのか!?」
少女はこちらを振り返らず答える。
「じゃあモンスターはどうするのよ!!アタシがちょっとでも時間稼ぎしないと、商人さん達が危ないじゃない!!」
「あんた見習いだろ!?あんた程度がやれる相手じゃない!俺に任せて逃げろ!!」
少女は一瞬こちらを見る。
「うるさい!!武器さえ持って無い人間に任せられる訳ないじゃない!!」
その時、ワームドラゴンの尻尾が少女の腹に直撃し、彼女の身体が宙を舞う。
「きゃあぁああぁぁぁ!!!」
魔法壁を張っていたみたいなので酸は被ってない様だが、物理的ダメージは通ったらしい。
空中で身体をくの字に折り曲げる少女に、ワームドラゴンの鼻と口しかない不気味な顏が迫る。
「くそっ!!」
イクスは瞬時に『マナブースト』を展開し、待機状態の『ディメンション・マジック』を稼働させた。
(この距離じゃ単純にジャンプしただけじゃ届かないな…。なら!!)
イクスは跳躍するが、やはり届かない。だが、彼の身体が重量に従い自由落下を始める直前、彼は虚空を『跳ねた』。
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尻尾を叩き付けられたお腹が痛い。
確かに白髪の男の言う通り、アタシは魔術士見習いだ。だけど逃げられる訳無いじゃない。戦える人間は殆どいないんだもの、戦わなければ、旅馬車の同乗者は皆死んでしまう。
アタシに逃げろって言う癖に、剣一つ持って無いのに。
ワームドラゴンが大口を開けて迫って来るのが見えた。
(あぁ、アタシ死ぬんだな)
そう思うと涙が溢れて来た。死にたくない。でも現状はきっと変わらない。中途半端な魔法壁なんて張るからだ。お陰でワームドラゴンの攻撃範囲から逃れられなかった。
(バカだな、アタシ)
未熟な癖にでしゃばった結果がコレだ。
涙は留まる事無く溢れ続ける。それは多分、死ぬのが怖いからじゃなくて。
(…悔しい、な)
未熟で、無力な自分が嫌いだった。だから魔法を覚えようと今まで努力して来たのに、何一つ変わらない現実。結局、未熟で無力なままだった。
何も変わらないまま死ぬのが悔しかった。
(アタシは…、アタシは!!)
涙を拭いもせず、ワームドラゴンに向かって両手を突き出し、呪を紡ぐ。
(どうせ死ぬなら…。やってやる!!一矢を報いもせずに、死ねない!!!)
だが、彼女は詠唱を止めた。いや、止めざるを得なかった。何故なら、あり得ない『現象』が目の前、正確には眼下で起こっていたからだ。
瞬きをする間も無く、その『現象』を伴った男が目の前に迫る。
そして彼女を抱きかかえ、ワームドラゴンの攻撃を逃れたのだった。
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ジルギスは、ワームドラゴン出現地に向かって走っていた。中年太りの身体には酷だが、そんな事は言っていられない。
(イクスの奴、Cランクモンスターに立ち向かうだって!?しかも『スネークボーン』と『タイタンブレード』を借りてくだぁ?確かに2本とも対モンスター用に設計したもんだが…。一人で行くなんざ馬鹿げてらぁ!!)
息を切らしながら、走る。走り続けて数分経って、やっと出現地に辿り着いた。辺りはめちゃくちゃで、誰かが火を起こしていたのだろう、倒れたテントに燃え移り、辺りを薄明るく照らしている。
(死ぬんじゃねぇぞ!!)
倒れたテントを避けながら進むと、広い場所に出た。恐らくここも夕飯の支給所だったのだろう、微かに食べ物の香りがする。瓦礫を避けて奥に進んだジルギスの目に、信じられない光景が飛び込んで来た。
空中に投げ出され、今にもワームドラゴンに喰われそうになっている少女と、その眼前に迫るワームドラゴン、そして、
虚空を駆ける、イクスの姿。
「なっ!!飛んで…いや、ありゃあ…柄か!?」
イクスの踝には手の甲と同じ魔法陣があり、一瞬ぶれるとイクスの足元に柄のみが現れる。
「なんでぃ…あんな魔法見た事も聞いた事もねぇよ」
ジルギスは呆然としたままつぶやく。
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正直ギリギリだった。イクスは背中に感じるワームドラゴンに冷や汗を流しながら、少女を見た。15〜6歳位だろうか、まだあどけなさが残る顔立ちは端正で、気品ある顔つきをしている。
少女は涙を拭いもせず、目を真ん丸にしてイクスを凝視している。
「アンタ…」
少女は何か言おうとしたが、イクスの怒鳴り声に遮られる。
「だから言ったろ!俺に任せて逃げろって!!!身の程をわきまえろバカ!!」
素早く着地したイクスは直ぐ様バックステップでワームドラゴンの攻撃範囲から離脱する。ワームドラゴンは地上での移動は極端に遅いのだ。
「くそっ…ここじゃまだ危ないかもしれないな。…なっ!!ジルギス!?」
イクスはジルギスに素早く駆け寄る。
「イクス、おめぇ…」
「話は後だ!!ジルギス、この子を担いでここから離れてくれ。ここは危険だ!!!」
イクスの怒気と焦りを含んだ表情を見たジルギスは無言で頷き、渡された少女を担いでその場を離れる。
それを見届けたイクスは『スネークボーン』を手に、ワームドラゴンに向かって駆け出した。
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「オッサン!!離せ!!!離してよ!!!!」
少女は暴れてジルギスの拘束から逃れようとするが、体格差がありすぎて振りほどけない。
「アタシはアイツが心配だ!!一人で立ち向かうなんて無謀だ!!」
先ほどまで一人で足止めしていた奴が何を言うか、とイクスはきっと言うだろうが、生憎ジルギスはその事を知らない。
「そりゃ無理ってもんよ。イクスの目は本気の目だった。それにアイツは傭兵ギルドに所属しててモンスターと戦った事もあるらしい。何か策でもあんだろぅよ」
とはいえ心配なのはジルギスも同じである。Cランクモンスターといえば軍の小隊ですら苦戦する相手である。それを痩身のイクスが何とか出来る筈がない。
ジルギスは立ち止まると、来た道を戻り始めた。
「オッサン、どこ行くのよ」
「アイツが戦ってるのが見える場所でぃ」
「何よ、オッサンも心配なんじゃない」
「そりゃそうだ。まぁ、見てる事しか、出来ないんだがよ」
ワームドラゴン出現地から20メートル程離れた場所に、潰れたテントがいくつか折り重なった場所を見つけた。瓦礫の影から頭を出すと、丁度イクスとワームドラゴンが対峙しているのが見えた。
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『ディメンション・マジック』を稼働させ、『スネークボーン』を手に取る。無論、鞭剣状態にしてある。相手はモンスターなのだ。意表を突く必要は無い。
(ヤツの身体は酸まみれ。まともに近付け無いなら、近づかずに攻撃すればいい)
小手調に、一番防御の薄い胴を狙って剣を振るう。 この剣は中々面白い剣で、始めの斬撃より相手に刀身を巻き付けて引き斬る方が遥かに良く斬れる。
ワームドラゴンの胴を斬りながら柄を揺らし、身体に巻き付ける。そして間髪を容れずに思い切り引く。
緑色の体液を飛び散らせながらザリザリとワームドラゴンの肌を削る感触を柄越しに感じつつ、イクスは妙な違和感を覚えた。
(…?浅かったか?)
ワームドラゴンが口から吐き出す酸を躱しながら2度、3度と剣撃を重ねる毎に、違和感は増していく。
(おかしい、いくら何でも傷が浅すぎる…。となれば、考えられるのは2つ、か)
イクスは龍の頭を手前に引いて鞭剣を元に戻して刀身を見る。刃はワームドラゴンの体表から出る酸で潰れ始めていた。
(チッ、1つ目は当たり、か。手応えからして2つ目も当たってそうだけど、こればっかりは直接斬って確かめるしか無いな)
『スネークボーン』を消すと、刀を新たに取り出す。
酸を吐き出す動作の直後に生まれる隙を突いて肉薄し、正眼から突きを放つ。 『マナブースト』により矢の如き速度で放たれた突きだったが、酸の滑りと肌の弾力で浅くしか突き入れられない。
「チッ!!やはりか!!!」
酸の雨を受ける前にバックステップで距離を取る。 先程から感じていた違和感は確信に変わる。
「どうやら相性は最悪らしいな」
刀を消し、再び『スネークボーン』を握る。潰れかけていた刃だったが、今は新品同様に戻っていた。
これも『ディメンション・マジック』の付属効果である。
彼の『倉庫』に入った物は原型が無くなる程に大破しない限りは、一度『倉庫』にしまう事で完全修復される。
彼の師匠曰く、『“倉庫”に入れた瞬間から入れられた物の時間を凍結してしまうから、例え壊れても“倉庫”に戻してしまえば凍結された時間に戻る』らしい。
イクスは鞭剣を振るいながら思案する。
(どうやって倒す?現状ではヤツの注意を惹き付けてはいるが…。傷が増えれば逃げる可能性が高い。そうなる前に倒すとなると…)
何故イクスとワームドラゴンの相性が悪いか。その理由は2つある。
1つ目に、イクスは剣士であり魔術士で無いという事。ワームドラゴンの体表から分泌される酸は粘度が高く、斬撃が皮膚に到達する前に威力が殺されてしまう。
更に言うと酸で武器が溶けてしまう為に、長期戦が難しい(イクスには関係無いが)。
そして2つ目に、ワームドラゴンに関する情報が間違っていた事だ。イクスはワームドラゴンの体表が『柔らかい』と事前情報から判断していたが、対峙してただ『柔らかい』のではなく『ゴムの様な弾力があり、滑り気があって柔らかい』という事を知った。
この情報の齟齬が彼の大きな誤算だった。
例を出すなら、油を塗りたくった筒状のゴム板を刃物で切る様な物である。
上手く切れるだろうか?答えは否、である。
故に、彼は見習い魔術士を逃がすべきでは無かった。彼女に風で酸を吹き飛ばして貰い、斬った箇所を片っ端から燃やして貰うべきだったのだ。もし、彼が『そういった事が出来ない場合』ではあるが。
(『剣技』しか無いか。師匠は好んで使ってたけど、俺はあんまり好きじゃ無いんだけどなぁ…)
ワームドラゴンの吐く酸を躱続けながら思案するイクスは、足元の窪みに注意が行って無かった。
躱す瞬間、身体が不自然に沈み込み、バランスを崩したイクスは足が絡まってその場でコケてしまった。そしてワームドラゴンは、その一瞬の隙を見逃さなかった。
(ま…っず!!!)
眼前にワームドラゴンの吐き出した酸の塊が迫る。 イクスは捻ったらしく鈍い痛みが広がる足を無視して左に跳ぶ。
だがその一瞬の隙がまずかった。身体は何とか酸から逃れたが、無理な動きによって取り残された右肘から先が、酸の塊に呑み込まれた。
「ぐっ……があぁああぁぁぁ!!!!」
熱湯に腕を突っ込んだかの様な激しい痛みがイクスを襲い、右腕からは白い煙が上がり、肉の焦げる様な匂いが辺りに立ち込めた。
だがワームドラゴンは待ってはくれない。イクスに追撃すべく、尻尾を振り下ろした。
(くそっ…。命の取り合いだってのに躊躇した俺のミスだ。四の五の言ってる場合じゃ無い!!!)
イクスはワームドラゴンの尻尾を躱すと大きく後退し、『スネークボーン』を只のバスタードソードに換装する。
そして、左手で剣を水平に構えると、今まで全身に巡らせていた『マナブースト』を右手の手のひらのみに集約させ、刀身の根元を掴む。
痛みに顔を顰めながら、まるで鞘から剣を引き抜く様に掴んだ右手から剣を抜き放ち、呟く。
「四の太刀、『赤鐵(せきてつ』」
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アタシとオッサンは潰れたテントの影からその光景を食い入る様に見つめていた。
アタシを助けた白髪の男は、見たことも無い鞭の様にしなる剣で、ワームドラゴンを翻弄し、斬り刻んでいく。
「凄い…」
「あぁ…。イクスの野郎、Cランクモンスターと対等にやり合うなんざ…有り得ねぇ」
オッサンも呆然と呟く。
白髪の男はイクスと言うらしい。さっきはちらっとしか見て無かったから分からなかったけど、アタシと歳は余り離れてないみたい。白髪だったから年寄りだと思ってたから、何だか意外だ。
そんな中、快調に攻撃を躱していたイクスが急にコケる。
「「あ!!!」」
オッサンとアタシは同時に声を上げて勢い良く立ち上がる。だってアイツの目の前に、ワームドラゴンの吐いた酸が迫っていたから。
イクスは直ぐ様回避したが、回避しきれずに右腕に酸をくらう。絶叫するイクスを見てアタシは駆け出しそうになったが、オッサンに腕を掴まれて止められてしまった。
「何で止めるの!!アイツ死んじゃうわ!!!」
けどオッサンは掴んだ手を離さず、歯を食い縛って答えた。
「行きてぇのは判る。おれっちもおんなじだ。でもよぉ、イクスはおれ達がもう逃げたと思ってんだ。今飛び出しても、イクスを焦らせるだけだ。そうなりゃ、イクスを助ける助けないじゃあなくて、全員死ぬ可能性さえあんだ。それにおれ達が助けに行ったところで何になる?足を引っ張る以外何もできゃしねぇ。おれ達は、ここで見守るしか無いんだ」
オッサン唇を噛み締めてイクスを見る。
わかってる。そんな事位。アタシがどうにか出来る相手じゃないって。でも…。
再びオッサンの手を振り解こうとオッサンを見ると、イクスの方を呆然と見つめていた。そして呟く。
「おい嬢ちゃん、おめぇさん魔術士見習いなんだろ?ありゃあ一体何だ?」
「何でアタシが魔術士見習いだって判るの?」
「そのローブ見たら誰でも気付くだろうがよ。それよりありゃ何だ?」
オッサンの指差す先にはイクスがいて、その剣は有り得ない事になっていた。
「何よ…あれ…」
イクスの剣は、溶鉱炉の中の鉄みたいに、より正確には黄色に近い白に輝いていた。
そして、腰を低く屈めてイクスが駆け、全てが無に帰した。
その光景を二人は、ただ見ている事しか出来なかった。
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右手を鞘に見立てて引き抜いた剣は、オレンジ色から黄色、黄色から黄色がかった白へとみるみる内に変化していく。
『四の太刀、“赤鐵”』それは師匠から伝授された剣技の中で『奥義』に準ずる威力を持つ、対単体戦闘最強の技。
『マナブースト』の力を片手に集め、それを鞘として使い剣を擦り上げる事で、マナの振動と力を剣に叩き込み尋常でない発熱作用を起こす。それにより剣は溶解し本来なら液化するが、中に通ったマナによって無理矢理剣の形を保たせる。
それが『赤鐵』である。
イクスは右手に集めた『マナブースト』を再度全身に作用させ、飛ぶように駆ける。
対するワームドラゴンはイクスの剣に危険を感じたのだろう、出てきた穴に向かって必死に這っていく。
しかしやはり地上での動きは鈍く、イクスは数歩でワームドラゴンの真横に付いていた。
「おおぉおぉォォォ!!!」
イクスは吠え、ワームドラゴンを上段から、左下段から、正眼から、逆袈裟からと無尽蔵に斬り刻む。
斬り裂かれた部位は数瞬の間赤黒く輝き、勢い良く発火し、瞬く間に火達磨になる。
『赤鐵』。それは絶対の死。
全てを焼き尽くし、全てを灰に変える剣技。
イクスが尻尾まで斬り終わる頃には、半分以上は灰に変わっていた。
ワームドラゴンの死骸、と呼べるかすら解らない灰の塊の傍らに立つイクスは、剣を地面に突き刺さすと少し離れる。
斬った事で温度が下がり、今はオレンジ色の刃になっている剣は、地面を焼き焦がしながら溶解した。柄に彫られた魔法陣も、段々と消えていく。
その様子を見ながら、イクスは一人呟く。
「だから、嫌いなんだ」