荷物の行方
「罠の様子を見るのにちょっと遠出するから、これ食べて待ってて。」
いつものスープと、パンを置く。
もう、シャルルの食べている物と同じ固形物が食べられる。
「罠をかけてるのか?
危なくないのか?」
こんな小さな少年では手に余るのではと眉をひそめてしまう。
「慣れてるから大丈夫。
小動物しかかからないし。」
保護者の祖母殿はいつまで出かけているつもりなのか。
「後数日待ってくれれば俺も行けるようになるぞ。」
「ありがとう。
でも、無理しないで。
今日は獲物はとれてない筈だから、心配しないで。」
そう言って出かけてしまう。
こんな幼子に養われているなんてと、自分が情けなくなってしまう。
彼は何歳位なのだろうか?
しっかりした喋り方と、意思の強い瞳は大人びているが、少女と見間違えそうな華奢な体つきと、可愛らしい顔立ち。
いまだ変声期も経ていない声。
どう見ても10代前半だろう。
こんな人の住み着かない林の奥。
訳ありの家族なのだろうと思われた。
窓の外の天気が崩れてきた。
風が強くなり、雪が舞っている。
シャルルはまだ戻ってない。
何かあったのだろうか。
心配が募る。
バサバサと物音がしたので、帰ったのだろうかと音の方にある戸を初めて開けた。
コケー!!
そこには鶏がいた。
その鶏を逃がしては不味いと、慌てて戸を閉める。
そう言えば、たまにスープに卵が入っていた。
ここで飼って卵をとっていたのだろう。
あまりに帰りが遅いように思え、とりあえずいつでも動けるようにと、着替える事にした。
借りてる寝間着を脱ぎ捨て、以前の服をまとう。
下着を履くととても落ち着いた。
1枚しかないので、寝込んでいる間は履いていなかったのだ。
防寒の上着も着込もうとしたとき、ガタガタと玄関が開く音がした。
「ただいま。
何で着替えてるの?」
何事も無かったかのように首を傾げて聞いてくる。
良かった、無事に帰ってきた。
思わず手を伸ばし、抱き締めていた。
「ちょっと、なにするの!」
「良かった、帰ってきた。」
「心配してたの?」
「天気が崩れてきたから。」
「この位どうって事無いのに。」
モゴモゴ言いながら俺の腕の中で身じろぎしていた。
「あ、荷物!
これ、あんたのでしょ?」
出入口を見れば、俺の荷物が置かれていた。
「見つけてくれたのか。
ありがとう。」
「罠を見に行ったついでだから。
ほら、中身を確認した方が良いんじゃない?
僕はお風呂で温まってくるから。」
そう言って逃げるようにしていなくなった。
お礼を言われるのに慣れていないのだろうか?
なかなか可愛らしい反応をする奴だ。