体力が回復してきた
寝て起きて、の日々を過ごし、ようやく今後の事を考える余裕が出来てきた。
起きてる時間が長くなったとも言える。
「俺はアレス。
助けてくれてありがとう。
君を何と呼べば良い?」
「僕はシャルル。
好きに呼べば良い。」
「ここはどの辺なんだ?
君一人で住んでいるのか?」
俺が寝床にしてる部屋はこの家の居間のようだった。
この坊主以外、住人は見かけない。
「祖母がいるよ。
今は用事でちょっとでてる。
アレスはこの先の林の中で倒れていたんだ。
さ、食べて。」
具の入ったスープを渡される。
最初はただの汁だったが、最近は軟らかく煮込まれた形のある具が入ってる。
薄味だが、野菜の旨味がしっかり感じられる。
「手足の指先とか、違和感無い?」
まだ薬を塗って布を巻き付けられてはいるが、ちゃんと動く。
「ああ、大丈夫のようだ。」
こんな華奢な子供なのに、俺を五体満足で生かしてくれたのだ。
感謝しかない。
「君は薬師の見習いか?
俺のあの状態を助けるなんて感服したよ。」
「祖母がそんなようなものかな?
僕は見よう見まねさ。
体力が付いてきたならば、お風呂に入る?」
「風呂があるのか?!
是非とも入りたい!」
長湯は駄目だと諭されながらも湯を堪能した。
身体中スッキリして、生きてて良かったと改めて思った。
湯から上がった後は又、借りてる寝間着を着て、手足に薬を塗られる。
臭いは青臭いが、薬なので我慢だ。
又苦い薬湯を飲み干し、横になる。
寝床の敷物を交換してくれていたようで、寝心地が良かった。
「ちょっと雪かきしてくるからまだ寝てて。」
目覚めると薬湯を側に置いてからそう言った。
雪はどんどん積もるから厄介だ。
体力が戻れば手伝いも出来るが、今の俺では何も出来ない。
「そう言えば、俺が倒れていた側に荷物はなかったか?」
「荷物?
気付かなかったけど、あの日以降いってないからなぁ。
雪に埋もれているのかも。」
「俺が動けるようになったら回収に行くさ。」
気を付けて、と雪かきに送り出す。
命を助けて貰ったお礼をするのにも、何ひとつ持ってはいなかった。
「あ、ひとつはあるか。」
シャルルが汚れを落として乾かしておいてくれている外套が目に付く。
荷物をすべて失ってしまったならば、あれを渡そうとぼんやり考えた。