はじまりは
わずか26年、人生に終わりを告げた。
病気にかかって苦しんだ。
家族や友人に心配をかけた。
先立つ本人よりも、残される人たちの方が辛かろう。
こんなに悲しませるならば、独りぼっちでいた方が良かったと思う。
神様、仏様。
残された人たちの悲しみを和らげて下さい。
私は幸せだったとお伝え下さい。
そして、もし生まれ変わる事があるならば、誰も悲しませる事の無いように独りが良い。
先立つ不幸を、、、
《この子は深い悲しみに囚われているから、静かな処に送りましょう。
初心者の贈り物を沢山付けてあげますからね。
早く元気になりますように。》
お一人様の暮らし
「スープとパンで済ませるか」
昨日食べた残りの具沢山スープ。
一人の食事は適当になりがちなので具沢山を目指す。
必然的に大量に出来上がってしまい、何食も同じ物を食べる事になる。
林の中の、ポッカリと開いた土地の一軒家。
気付いたらここに居た。
記憶にある26歳の私ではなかった。
17歳のシャルロットという女の子になっていた。
17年間この地で生きてきた記憶と経験がある。
最近まで育ててもらったお祖母さんの記憶もある。
お祖母さんは少し前に亡くなった。
この一軒家で独りで暮らす術を教え込み、天に召された。
お祖母さんとの別離を済ませ、放心してたシャルロットの心に私が入り込んでしまったようだ。
シャルロットの魂は深層部分で眠りについている。
いずれ私と統合するのか、私が消えるのか、シャルロットが消えるのかは分からない。
当分の間はこの身体を借りてお一人様を満喫させて貰おう。
朝目覚めて朝食をとり、家の裏手にある畑へと繰り出す。
雑草をとったり、土を耕したり、種まきをしたり。
収穫したものは家の中にある食物倉庫へと移動させる。
お祖母さんは能力の高い魔女だったようで、この倉庫に不腐食の魔法を施してあった。
なので、この倉庫で保存しておけば半永久的に腐らない。
肉も罠を仕掛けているので、ウサギっぽいのや、鳥等が捕れる。
もう何年もさばいてきた経験があったので、小動物ならば何とかなった。
川魚も捕れる。
私ひとりならば、数年は食べ物には困らないだろう。
調味料や香辛料はお祖母さんと買いに行ってたので、近くの町まで行かなければならないだろうが。
それも、まあ、一年ほど先の話だろう。
それにしてもここまで引きこもれる環境をお膳立てしてくれてて、感謝を通り越して笑えてくる。
少女独りの暮らしを心配して、かなりの防御の魔法が掛けられている。
しかも、町に買い物に出た時にはシャルル少年として通していた。
女の子のシャルロットは存在せず、男の子のシャルルだったのだ。
この家の周囲にいれば私を害する獣も寄っては来ない。
多分、害意ある人間も入って来れないだろうと思う。
一人で生きていく。
誰とも関わらなければ、悲しませる事もない。
私も、悲しむ事もない。
お一人様、万歳!!
一人暮らしを満喫してふた月が過ぎた頃、台風のような嵐がやって来た。
家は頑丈なので壊れはしないだろうが、昼間なのに暗くなり、雷鳴が轟き、暴風雨が吹き荒れる。
お祖母さんの守りの魔法は信じているが、怖いものは怖い。
頭から布団をかぶり、独りでガタガタ震えるしかなかった。
テレビもラジオも無い。
すがりつく家族も友人も無い。
抱き締めるペットも、ヌイグルミさえ無かった。
この世界に自分一人。
これが私が望んだ事。
世界に独り。
独りぼっち。
これが自分で望んだ事。