5. 子馬のご飯 (挿絵)
私も吸われたい…主人公めぇ
「な…に…!?」
ま、ま、まって。
ちょ。とまってええ!
急に子馬ちゃんはUターン。助走をつけるその姿。大人顔負けだ。凄い綺麗なフォームである。全身を使って…なるほど…
ゴスッッッッ!
痛い。結構痛い。
子馬は無邪気である。産まれたてで蹄が小さくたって。人からしたら殺される一歩手前だ。
幸いにも少女は人ではないから大丈夫…?
その後、また森の中を歩く。
子馬は私の事を親としてみているのか。少女が進むとついてくる。ちょっと見えなくなると叫ぶ。
可愛い。
子馬はミルクを飲んで成長する物だと数少ない記憶から思い出す。
だが、流石にミルクは出ない。自分の目線を下げてみて思った。
ひとまず私達は川で喉を潤す事にした。ついでに顔でも洗ってさっぱりとしたいものだ。
興味がわき子馬にふれる。
子馬はヒンヒン言って触ろうとするとビクビクする。やっぱり子馬だ。
可愛い。もう一度撫でようと手を伸ばす。すると指に吸い付いてきた。吸われる…?
「はぁぅあ…!?」
指に当たる子馬の生えかけの前歯が手にあたって至福…じゃなくて。何かが吸われてる。何か変な感じがする。吸われていくうちに、何かを失っているような。段々と力が抜ける。
「………?」
チュウチュウぢゅるぢゅるゴキュンッ
指を吸う度に耳がピコピコして…
可愛い。
少女はまた記憶を呼びおこす。段々とスムーズに思い出せるようになって来たようだ。
「魔力…?」
この子は普通では無いのかもしれない。でも、可愛い。
少女は思考を手放した。まぁいっか!
ひとまず子馬の食料は確保?出来たと思いたい。少女は自分もお腹が空いていた事を思い出す。…もし、自分が空腹で倒れることがあったのならば。
この子馬は、食料を確保できない。その考えにいたる。
そうして少女は、これまで以上に生きようと思うのだった。
「生きよう。子馬のご飯のためにも…!」
とりあえず横に生えてる草を食べてみた。苦い。当たり前だ。口の中でなんとも言えない渋みが後を引く。
「うえぇぇ。おえっ…」
他のものにしよう。この草は口に合わないみたいだ。…果物があれば…。何故かそれほど喉がかわいていない。なら、湖の側を離れてもしばらくは大丈夫だろう。
チュポンッ
子馬が指を離した。
また少女意識はそれる。
不意に気になり掌をみる。卵の絵が書いてあるはずだ。
「馬のマーク?」
今度は卵じゃなくて馬の刺青になっていた。
今はそんな事はどうでもいい。
食べれるもの…果物をさがしに森の中をすすんでいく。