54. 帰路
…強くならなきゃ
今のままでは何も守れない
いつから私は強いと思っちゃってたんだろう。ただ龍爺から与えられた物をそのまま借りてただけじゃないか。金棒もめちゃくちゃな使い方をしているもんね。
それに、今後もあれらと戦う事になったら今度こそ手遅れになる。
「…だめだ、だめだ。今のままじゃ」
「…ブフー」
ベシッ
「…うわっ。…白金ー!やったなー!尻尾をわざわざ顔にぶつけるやつは、こうしてやる!」
尻尾の付け根を長い指の爪でカリカリとかいてやる
「…!?、!、!!?!!!」
白金は、気持ちがいいのか鼻先をモニョモニョしながら体をくねらせ、お尻をふる。目はギンギンに開いて、はぁんっと言った様子で耳だけをこちらへ向けている。
「ふふっ…はははは。…ありがとう。うじうじしててもしょうがないよね!行動にうつす!」
分かったからもうそれは勘弁してっと言ったようにうるんだ目をこちらへ向けている。
「ふふっ…かえろうか。」
…何か忘れているような
…
…
…あ。
…明日ギルドに行かなきゃいけないんだっけ
「行動に移すのは明後日でいっか!白金!明日はギルドにいくよ!…くこぉのやろっ!一人で美味しいもの一杯たべて!私がどんなに心配したか!」
「…じーーー」
「な、なに?」
もしょもしょもしょ
「手?…あっ」
くすぐったいっ…。今は立派な馬の絵が描かれている手をペロンペロンと舐めている。
「あれ?」
「ヒンッ」
手から、魔力が伝わってくる。とても気持ちがいい。なんだかお風呂に入ってるみたいにポカポカする。
「ヒンッ(嬉しい)」
「…白金?」
「ブルルルルー(呆れ)」
「えっ?えええええ!?なんか感情が分かるんだけど!?なんで!」
「ふんーーー(ドヤ)」
ちなみに白金にとって黒金は歩く餌も同然なので、とっくに黒金の感情は読み取れていた。(例外あり)
「…すごい。すごいよ!白金!」
ガバッと首筋に抱きついて、サラッサラのたてがみに顔をうずめる。
「ふんーーー(照れ)」
「白金…可愛いなぁ。」
にやあっと笑うとそのままひょいっと、裸馬まま白金にまたがる。
「ヒンッ(怒)ふすーー(照れ)」
「ふっふっふー!…なんか前より白金に近づけたみたいで…嬉しい!このままアシサク街まで飛ばしちゃおう!」
「ぶるん?(挑戦)ヒンッ(嘲笑)」
「…ん?ちょっとまって。白金?ちょっと言葉のあやだよ。まってまってあああああああああぁぁぁ!!!!」
全速力!と言った様子で、音さえも置いてゆき長い道を駆け下る。
「ひいいいいいいいー!また、股がすれるうううう!!!前もこんな事あったよね!?!?」
「ぶひひひひんんっっっっ(歓喜)」
「…ははははは!!…それはずるいよ白金!すっごく可愛い!!!!ふふっだけど、私が成長してないとでもおもった?」
「ひん?(疑問)」
「風の魔法で、風の抵抗を少なくしているの!…これ以上だとちょっときついけどね!…ふふ」
「ぶるるん(嘲笑)ひひぃいいいいいいいいんっっ」
甲高く、どこまでもひびくそのいななきとともに白金はどんどん加速していく。
もはや、足を地面につける度にその地面が蹄の何倍もの大きさの土がえぐれる
一歩一歩が大きく、それも飛んでいるかのように走る。体全体をしならせながら、大きく後脚を踏み込み、もはや先程までが可愛く思えるほどだ。一応白金は黒金の事を配慮していたみたいである。
…襲歩といってもいいだろう
「…あガガガガがぼぼぼぼぼっぃた!舌かんだ!!ああああああああぁぁぁ!!!!」
口を開けていたので、空気が一気に口の中に入り込む。ほおがブルンブルンとゆれていく。気合いで口を閉じようとしたが勢い余って舌までやったようだ
「ヒヒンッ(ドヤッ)」
「あばばばばはっすっすごいのは分かったらあああああああああああぁぁぁ!とめてえええ」
「ふすーー(呆れ)」
「お?遅く…ありが…」
「ぶるるるん(嘲笑)」
「とぉぉぉおいいいい!ぃだあああ!同じとこかんだあああああああああぁぁぁ」
その様子は街の前まで続いたようである。
どこかご満悦な白い馬と、口から血を流したボサボサの女が街の中を歩いていた。…あれは誰だ!と一躍噂になったとかなっていなかったとか…
口に口内炎が出来かけていたが、クカルの美味しいご飯のため、一瞬で治したという。ついでに股のめくれた皮も…いたい
ズボンボロボロになったなぁ…
次の話…ギルド…?
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