47. 薬草採取とは
「…ここら辺だね」
と、黒金は白金に止まる合図をする。
そこは少し森を入った所で、さほど危ない場所では無い。街道からは少し離れるが、安全な場所だと言っていいだろう。
白金の馬装を外してやり、無口に変える。
久しぶりの森に黒金は胸がじんとしていた。この森は黒木森とは、全くの無関係である。が、森と言うだけで何故か龍爺達が居る気がして胸がじんわり痛くなる。
「白金、乗せてくれてありがとう。まだ昼だから夜まで休もうね。実はもう一つ依頼を受けてきたんだ。多分時間が余るからって薬草を採取するよ?」
「…ふんーーぶるるるる」
黒金と白金は森の中を歩いて進む。
「あった。あれだね。」
と、黒金が薬草を見つけたようだ。この依頼は白金は戦力外の為何かをする訳では無いが、白金は草をバリバリ食べていた。
よしっ!と黒金が薬草を摘むと…
パクリ。ムシャムシャ…
ブチッ。パクリ。ムシャムシャ…
「…ちょっと白金」
黒金が摘んだ薬草を片っ端から白金は食べていく。
黒金が摘んだ草は美味しいとでも言うのだろうか。
永遠と続き、薬草を隠そうが、入れ物に入れようが、全てほじくり出して食べてしまう。
「…はぁ。」
白金が何を考えてそんな事をするのかは定かではないが、この依頼を遂行するのを黒金は諦めた。
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ご主人様の摘んだ草は、他の人に絶対にあげたくない!他の人の元へ行くぐらいなら!僕が食べてやる!!!…不味いけど
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そんな事を考えているとは露知らず。
時間も良いぐらいになって来たので、戦闘の準備をする。
が、何かおかしい。…魔物を退治に来たのに、魔物が一匹も出てこない。森のそこそこ奥まで来たし、夜になりかけているのでもう出て来てもおかしくは無いはずである。
バタリッ
白金が突然倒れる。…眠っているようだ
何が起きているのか、慌てた黒金も白金がちゃんと息をしていた事に安堵する。
が、急に空は薄暗くなり、濃い霧が辺りを包み始めていた。
「…急に何…うぷっ」
「…ごめんね。叫ばないでね。あそこに居るお馬さんには危害は加えないから…大人しく眠って」
そう囁かれると、黒金は意識を手放す。
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「ふふふ…上手くいったねお兄ちゃん。依頼を選んだのも、先に魔物を全て狩ったのも、意地悪だね。最初の初めての依頼なのにね…」
「…別に意地悪をした訳ではありません。…此方が何かを要求するのに、依頼が失敗しました。では可哀想でしょう?なので薬草も魔物も用意しておいただけです。」
奇しくも、黒金は薬草をゲットできそうである。
「じゃあ、馬の方運んどいてね。優しく丁寧に…」
少女は、二人以外誰も居ないはずの森に話しかける。…すると黒い影がどこからともなくぬるりと出てきて、白金をとある場所へとそれは丁寧に運んで行った。…それなりに重いはずだが、重さなどは感じさせる気配は無かった。
「ふふふ黒金ちゃん…。やっぱり貴方は可愛い…」
少女はニコッと無邪気に笑うと、寝ている黒金を横抱きにして、濃い霧の中へと姿を消した。
濃い霧が森の中を覆っていたのが嘘みたいに、スっと消えた。まるで何かを隠すように…。
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「………………?」
視界がぼんやりとしている。目を擦ろうと手を伸ばしたが、それは叶わなかった。
「………ッ!」
足と、手がガッチリと逃げ出さない様に結ばれていたのだ。
「………もう起きたの?はやいね。ふふ可愛い可愛い黒金ちゃんに。…一つお願いがあるの」
「…何」
次の話…例の人…?
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ブクマが増えまして、とても嬉しい三度の飯より馬です。