42. サルダ爺のお店にて その3
「…おう!嬢ちゃん!ああ黒金だったかい?さっきはありがとぉなぁ。本当に助かった。見ててスッキリしたわい。何でも言っておくれ。」
「…ありがとう。実は白金の馬具を揃えたいんだ。ここに置いてある?無かったら作って欲しいんだけど」
「…それならお安い御用だな。実は丁度いいもんがあるんだ。持ってきてやる。だが、大丈夫か?黒金さんよぉ。結構な荷物になるぞ?」
「あぁ。その心配は大丈夫だよ。」
「何だ、そこの連れに持ってもらうのか?」
「…久しぶりね。サルダ爺。勿論私も少しは持つわよ。」
「…いや、そうじゃなくて。私、ちょっと物を自由に出し入れする事が出来るんだよね。…ちょっと魔力を使うからあんまり使わないんだけど、ほら、さっきも武器出てたでしょ?外に行く時は肩にぶら下げておくんだけど。街の中だからしまっていたんだ」
「なるほどのぉ…。羨ましいぜ……それなら今日は沢山持って帰って貰おうか!かっかっかっかっ」
そう背の低いお爺さん…サルダ爺は景気よく笑う
「…あら。黒金ちゃん……なら服も沢山買えるわね…」
一人何かを呟いているが、その言葉は耳の良い黒金はしっかりと聞き取っており、少し身震いした
「少し、そこの席に座って待っておれ。ちょっと今日は閉店してくるぜ。あと、例のやつも持ってくるからの」
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店内は、オレンジ色の証明で明るく照らされている。ホワッと漂う皮の香りが、店内にいる者の鼻を埋め尽くす。店の中はこじんまりとしているが、至る所に皮製品が置かれており、飽きることは無い。
皮でできた馬の小さいストラップもあったり、猫や犬…鳥まで様々な動物達を模した物もちらほら見受けられた。
「…待たせたな。これじゃ。」
黒っぽい皮で丁寧に作られたそれは、白いキラキラと反射する糸で細かく薔薇の刺繍がしてある。まだ新品の硬い皮はパリッとしていてとても綺麗だ。使い込めばもっといい色になるだろうか。
見せてくれたのは
頭絡
鞍
腹帯
無口
脚あて
引き手
…どれも同じデザインだった。一つ一つが素晴らしい出来栄えである。が、全て揃えると更に良くなる。…白い馬に良く似合うだろう。
「…これが良いな。クカお姉さん。足りない分は今度働いて返すからこれが欲しいな。」
「ふふふ良いわよ。私達もそこそこ蓄えがあるから。それに…今日は沢山持ってきてるからね!」
「…それは、儂が少し調子に乗って作ったやつじゃからの。そのまんま、やるわい。じゃが、その他の手入れ道具とか、小物は買って貰おうかの」
「…ふふ。良かったわね黒金ちゃん」
「ありがとう!サルダ爺!手入れ道具って?」
「まずは、皮が乾燥してめくれないように油じゃろう?鞍なんて放ってほいたらすぐにパリパリになるからの。後は、ゼッケンもゲルもいるじゃろ?…これも良いのがある。あとは…その馬のブラシとかてっぴもいる。あとは蹄の保湿…黒金や、その馬は良く草原へ行くか?」
「うん。行くけど、行かない時も有るよ」
「…なら、蹄油を買っておけ。こまめに脚を洗ってやるのも大事だ。その後にタオルで脚を拭いて、蹄油を塗ってやれ。…その馬は普通の馬じゃねぇかも知れねぇが、それぐらいの事は最低限やってやれ」
「…うん。分かった。…他に何かある?」
「そうじゃな…。汗をかいておったらちゃんと拭いてやれ、濡らしたタオルでも洗っても良い。とにかく汗には気おつけてやることだ。タオルも後で買っておくといいじゃろう。」
そう言い残して、色々な毛の長さのブラシや、ゴムでできたブラシ…鬣や尻尾を整えるハサミ…。色々と黒金の前に積んで行った。
「…妙に品揃えがいいわね」
「…何か最近、若い男が馬具を揃えてくれと、色々細かな注文をしてきたんじゃがの、やっぱり要らない金は出す。ってどこかに行ったからな。普段は取り寄せない物まで取り寄せたから、少し困ってたんじゃ。」
「…そうなの。なら今回は丁度良かったわね。あ、あと、あの馬のストラップも良いかしら?」
「おう!毎度あり!」
「ふふふ黒金プレゼントよ。欲しそうに見ていたでしょ?」
「…えっ…ありがとうクカ姉さん」
ニコッと微笑む
お会計を済ませた黒金とクカルは店を出る。
「白金!これ良いでしょ!無口付けていい?」
「ヒンッ」
と小さく鳴いたかと思えば
無口を黒金の手から奪い去って、
ブンブン振り回し始めた。
「あっ…」
と思った時にはもう遅い。
無口は白金の口から離れ、遠くへ飛んで行った。
「いでっ…何か飛んできた…」
誰かに当たったようである。
「ふんぬぬううううー」
白金が大きいため息をついた。
次の話…不審者…?
ブクマと高評価お願いします。
…果たして誰なのか