29. 質問 (挿絵)
先程まで辛そうだった表情は穏やかになり、顔に紅が戻ってきた。…長いまつ毛を震わせゆっくりと目を開く。
まつ毛の下に隠れているのは黄金色の瞳…。その瞳を覗いた人はたまらず、永遠と見つめてしまうだろう。
ラックもその内の一人だった。ちなみにビルは白金を観察していた。
「……貴方は誰?」
「………はっ!すすすす、すみません。天使様!」
頭を腕で支えていたが、あまりに恐れ多くて焦ったラックはつい手を空へと突き上げた。
ゴンッ
…勿論黒金の頭は地面に叩きつけられる。
「……痛い」
「…うわあああ!すみませんすみませんすっグヘェッッ」
ビルに遊ばれていたか、遊んでやっていたかは知る由もないが白金は黒金が痛がった声が聞こえた瞬間目にも止まらぬ速さでラックの腹を蹄で撃ち抜いた。
そしてラックも目にも止まらぬ速さでくの字になって遠くの方へ飛ばされて行った。
ラックが居なくなったので仕方なく
「…嬢ちゃん。俺達は冒険者だァ。通りかかっただけだァ。ちなみに俺はビル。飛ばされていったのはラックだァ。所で嬢ちゃんは何者だ?もしかしてオーガか?」
たんこぶを抑えて身体を起き上がらせると、
「…私は黒金よ。オーガって何?分からないよ」
「分かんねぇのかァ。魔物でな、嬢ちゃんのようにおでこから角が出ているやつの事さ。一般的には討伐対象だァ」
「なら、ちがうよ。魔物じゃないからね。私は鬼だよ」
「…鬼?そんな種族居たっけかァ?まあ魔物じゃねぇならなんでもいいか」
黒金は白金に掴まりよっこらせっと立ち上がると服についている埃をはらい落とした。
「ふぅ…。助けてくれたのよね?ありがとう」
「いや、礼を言うのはこっちの方だ。…色々と聞きてぇ事があんだがァ。質問して大丈夫かァ?」
「答えれる範囲なら…。なら私も二ついい?」
「条件によるなァ」
「…分かった。一つ、質問したらなるべく答えてくれる事。二つ、貴方達が生活してる場所まで連れてってくれない?」
長く綺麗な指をピシッと立てながら言った。
「それならお安い御用だわァ。良いぜ。契約成立だなァ!」
二人と一頭はビル達が来た道をもう一度通る。ラックはもう知らない。
(獣道のような人が作ったような道は実は黒金と白金が魔法と脚で通って踏み固めた場所である。)
ラックは黒キモリを歩いた場所と方角を完璧に覚えていたらしくどんどん進んで行った。
「…んで?あのとてつもなく強そうな気配はなんだったんだァ?それを目指している途中パッタリと消えちまったんだが…」
「不死竜だよ」
「はぁ!?竜種!?とんでもねぇじゃねえかァ。ひょっとして嬢ちゃんが?」
「違うよ。私と白金だよ。…あ、白金はこの子ね」
「ブルルルル…」
ドヤ顔である
「そ、そうかァ。嬢ちゃん達は強いのな。んで嬢ちゃんは何をしていたんだ?祈ってて森が再生しているように見えたんだがァ。」
「…そのまんまだよ。森をあるべき姿に戻しただけ。」
「そんな事も出来るんだなァ…。次で最後の質問だ。俺ァ達は森が急に現れたように感じたんだが、何故か知ってるか?…知っている範囲で教えてくれるとありがてぇ」
「…ここの守護者が時空を歪ませてさっき見たいな闇の世界を作りかえてくれて居たんだけどね。…。亡くなっちゃったから、その効果が無くなって、闇が広がったの。でビルさん達に起きたのは時空が不安定だったから見えているものが見えなかったりしただけだよ」
「…そうか。ありがとよ。正直最後の質問って言ったが、すっげぇ気になる言葉がどんどん出てくるなァ。男に二言はねぇから、聞かねぇがよ。…嬢ちゃんの質問ってのはなんだ?」
「ビルさん達が住んでいる所はどんな所?…詳しく」
「あァ?そんなことで良いのかァ…?」
「まず俺ァらが今居るのが、アシサク王国ってんだァ。んで、その中の一つの街だな。そこそこ栄えてるぜ?海は西の方にあるみたいだが行ったことはねえ。とにかくでけぇ国だ。」
「へぇー。じゃあーーー。」
黒金は当たり障りの無いことを次々とビルに質問をしていきながら街へと歩いて行った…