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君に伝えたいこと~血は水よりも濃い

最愛の子供を奪われた主人公と彼女。彼女の家族から猛反対を受けながらも懸命に子供を引き取ろうと努力するも、新たな試練が始まる。

彼女の実家から戻って一週間余りが過ぎていた。

彼女の故郷山形県のとある駅から、孫娘を抱いて逃げていくお義母さんの姿が目に焼き付き毎日熟睡出来ていない。

それから、毎日必ず彼女と俺は実家のお義母さんの所に電話をしていた。

話す内容は毎回同じだ。

そして、帰ってくることばも同じ。


「もしもし、こんばんは、小早川です。」

「あっぁあ...こんばんは。」

「愛は、変わらず元気ですか?また今度愛に、合いに行きたいのですがちゃんと僕の話を聞いてもらえますか?」

「小早川さん、いつも電話くれるけれども私は愛を渡すつもりはありません!何度も言うけども...」

「本当にすいません毎日同じ電話ばかりで、でも本当にどうしたら愛を引き渡してもらえますか?」

俺は必死だった。

生まれて半年の子供を母親とは言え、娘に黙って連れ去り娘が会いに行くと逃げる。

電話してもろくに話もしないで切られる。

そんな親子がこの世にいるなんて...

俺は信じたくなかった。


「どうすれば愛に合わせてくれますか?愛を引き取らせて貰えますか?」

「小早川さんね、そんないきなり子供を引き取る、育てるって言っても簡単ではないのよ!あなたは子供を育てた事がありますか?」

「ありません...」

「でしょ!そんな人に可愛い孫娘を渡せません!それに育てるにもお金だってかかるしあなたの仕事は何をしてますか?」

「職人です。毎日頑張って働いてます!」

「蓄えはありますか?」

「...今はありませんけど...」

「でしょ...そんな所に孫娘渡せますか?」

「心配で仕方ないでしょ?」


腹立たしかった。

悔しかった。

俺が大学でも出て大手企業で勤めていたらきっと話は代わっていたような口振りだ。


「今はお金はありませんが家族三人食べていかれる位は何とかなります!彼女も僕も頑張って働くので何とか愛を...」

「しつこいですね、ダメなものはだめです、でももし本当に孫娘を大事に思うのならあなた達が別かれて、千尋が田舎に戻れば愛を千尋に引き渡してもよいですよ。」

意味がわからない...

「別れるって?僕が千尋さんと別れたら愛を返してくれるのですか?」


「んだ...」


「そして、千尋が好きに育てればいい...」

お義母さんの決まり文句は「別れなさい」だった。

彼女のお義母さんはいつも電話口で俺達二人は別れるようにと、彼女と俺に説教じみた話をしていた。


「なんのために別れるのですか?何か意味がありますか?」


俺は強い口調で聞き返す。

するとお義母さんはこう言う。


「そんな会って間もない男が愛の親になんかなれません!ましてやお金もない、あなたのことも何も知らない、幸せになるなんて信じられませんから。」

「それに小早川さん、そんなに親だとか何とか言っても所詮あなたは他人です、どんなに好きだ惚れたと言っても愛の親にはなれません!」


「意味がわかりません!何で親にはなれないのですか?お金がないと子供を育てたら駄目なのですか?愛情があって好きで惚れて皆で仲良く暮らしていく事がそんなに駄目なことですか?」


俺は続ける。


「僕の事が分からないって言ってもお義母さんに合いに行っても逃げていくじゃないですか?」

「ちゃんと話もさせてもらえないで僕を分からないって言われても困ります。」


俺の語尾も荒くなる。

お義母さんの口調も荒い。


「話す必要もないから話さないし、愛は渡さないんだから小早川さんも親になんかなるとか言わないで、千尋と別れたらどうですか?」

「いいえ、別れません!」


そして、彼女のお義母さんはこう言った。


「小早川さん、あなたは他人、何をどうしても他人なの、そして、絶対愛の親にはなれないの、何でか分かりますか?それはね、愛の血は貴方の血じゃないでしょ?貴方の血は流れてないの、わかりますか?私の娘は千尋、千尋に私の血は流れてる、千尋の娘は愛、皆同じ、同じ血が流れてるのよ、でも貴方の血は愛には流れていないのよ、分かるでしょ!」


最低な言い訳にしか聞こえなかった...

初めて胸糞悪い人間と出会った気がした。

彼女のお義母さんだけど、愛のおばあちゃんだけど俺には理解出来ない人だって事がわかった...


しかしよくそこまで言えるよな...


「...?意味がわかりませんけど!血って俺にも血流れてますけど!それは愛は俺の子どもじゃないから幸せになれないって事ですか?!」

流石に頭に来た。


「僕は、親が違うとか、俺の子どもじゃないから嫌いだとか、血がどうのとか、一度も言ってませんよ!生みの親はどこにいましたか?留置所でしょ?生みの親との約束もあったけど、僕は、本当に千尋さんと愛ちゃんが好きなだけで、ただ千尋さんと愛ちゃんを幸せにしたいって言ってるだけで何で血が繋がってないから、親にはなれないないって!幸せになれないって!意味がわかりません!俺は絶対に愛と千尋さんを幸せにして見せますよ!」


涙ながらに訴えた。


「小早川さん、あなたが何を言っても無駄ですよ、血は水よりも濃いのだから...血に優るものはないのだから。」


ふざけるな!

何が血だ!

何が親だ!

お金がないから、貯えがないから幸せになれない!?

あなたを知らない?

誠意が分からないって?!

ふざけるな!!


俺は心の奥底で泣きながら叫んでいた。


「血は水よりも濃い...」


ふざけるな!


俺は両親に愛情深く愛された記憶がない!

ましてや両親に抱き締められた記憶もない!

生んでもらって幸せだと感じて生きてきた事がない!

生みの親より育ての親だ!

親なんてものは呼び方にすぎない!

愛情深く育てれば血が繋がっていなくても固い絆で結ばれ、互いに幸せになれるし、幸せになっている人だって沢山いるはずだ!!


そんなに大事な娘と孫娘ならあなたは何故小さい頃、千尋さんを施設に預けたのですか?

何故にあなたは今、定職を持たない毎日パチンコばかりしている人と同棲中なのですか?あなたにも貯えがありますか?

あなたはなぜ?...


言いたいことが山ほどあった。

溢れ出す感情が抑えられないくらい、沢山あった...


でも歯を食い縛り、侮辱に耐えて日々お義母さんにお願いをしていた...


愛を引き取らせてくださいと...

愛の側にいさせてください...


そんな会話をいつも泣きながら聞いていた彼女の姿が目に浮かぶ...


俺はここにいたら駄目なのか...

そんなに俺は駄目な人間なのか?


そんなに俺が憎いのか?

俺が何をした?

一人の女性を本気で好きになった事が悪なのか?


誰か教えてくれ...


今の自分が当時の自分に

会えたなら、

私は迷わず、こう言うだろう。


「別れた方がお互いのためだよと...」

























主人公の愛情は何処まで深く続くのか...

血は水よりも濃い、と言われた主人公の心の内は誰にも理解出来ない程傷ついていた。

様々な登場人物が出てくるが全て主人公を否定していく様が重苦しく描かれる...この先主人公はどのように生きていくのか...


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