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自衛隊 南樺太防衛戦

作者: 茶太郎

架空戦記創作大会参加作品です。




1945年8月8日 太平洋戦争末期のこの日ソ連は大日本帝国に宣戦布告した。

翌日、150万を超える兵力が満州北部に侵攻開始。日本軍の抵抗はあれど赤い波の勢いは止めることは出来ず、満州の地はソ連に侵略されていった。


8月11日 樺太

南樺太侵攻を任されたのは第2極東方面軍第16軍、チェレミコフ少将だった。

チェレミコフ少将は双眼鏡を覗き、日ソ国境線を見る。

国境線の向こう側、日本の国境線には既に砲兵部隊からの砲撃で砂塵が大地を覆っている。

砂塵が落ち着いてきたことを確認するとチェレミコフ少将は部隊に命令した。


「進撃を開始せよ」


命令を聞いた第56狙撃軍団と旧式ではあるがT-26軽戦車が南進を始める。

進撃するソ連軍。日本軍からの攻撃を警戒しながら進むが全く反撃がない。


「日本軍の反撃がないな・・・」


戦車長の一人が呟く。


「全くないです隊長」


操縦士も呟く。


「反撃がない理由として考えられるのはさっきの砲撃で国境線の日本軍は全滅しているのか、戦力を後方に送って守りを固めているのかこのどちらかだな」


「前者なら楽でいいですね」


「だな」


二人は笑った。

だが内心この戦車長は不安だった。

前者ならここに来るまで日本軍兵器の残骸や兵士の死体があるはずだ。それなのにあるのは砲撃でできた穴しかない。

つまり日本軍は何処かにいる。

隠れて攻撃の機会を伺っているに違いない。

それに戦車長は以前聞いた話を思い出す。

9日に満州へ侵入したソ連軍は微々たる抵抗を排除しつつ快進撃を続けていると聞かされたが本部に近い友人からの情報では最初は快進撃だった。だが南進するにつれて抵抗は激しくなり進撃が止まりつつある。さらにウラジオストクから満州南部、朝鮮半島北部に侵攻した部隊がなんと壊滅したとのことだ。

あのドイツを倒したソ連軍が苦戦している。それが出来るほどの戦力を日本軍はまだ保有している。

実際沖縄に上陸した米軍は日本海軍によって補給が断たれ孤立している。日本本土を爆撃に向かった米爆撃機部隊も新型機によって失敗続きとのことだ。

戦車長個人として日本への宣戦布告は間違いだったのではないかと思うが偉大な同志スターリンの決定だ。もう始めてしまったのだ。今はただ命令を全うするだけ。




ソ連戦車長がそんなことを思っていた頃、彼らの前方には日本軍が待ち受けていた。

いくつも掘られた穴 戦車壕に戦車が置かれていた。


≪ソ連軍捕捉、全車戦闘用意≫


「お出ましか。倉田、車体起こせッ」


「了解」


部隊長からの無線を聞いた戦車長の狭間二曹は操縦士の倉田に指示を出し、油圧サスペンションによって車体が上へ上がっていく。

戦車壕から砲搭が顔を出す。

出てきた戦車は長い砲身を持ち、丸みをおびた砲搭。明らかにこれまで日本軍が保有してきた戦車とは異なる。

ドイツ戦車でもない。米軍のモノでもソ連のモノでもない。

この戦車の名は74式戦車。未来からもたらされた戦車である。


「三宅、正面の敵戦車を狙え」


「了解」


射撃主の三宅は正面の戦車に狙いを定め105ミリ砲を向ける。


[それにしても俺たちがまさか南樺太で戦うなんて自衛隊に入った当初は想像もできなかったな]


狭間戦車長はここに来た経緯を思い出す。

彼らがいたのは1945年の世界ではない。200X年の世界、つまり未来からやって来たのだ。

北海道で演習するからとの指示を受けて輸送艦に乗せられ、数時間の船旅のあとサイドランプから下ろせばいいのにわざわざLCACに乗せられて上陸した先がここ1945年の南樺太だった。

なぜこうなったのかと戸惑っていると彼らより先に来ていた指揮官から説明された。

なんでも日本経済水域内に時空の裂け目と呼ばれるモノが現れ、調査の結果はなんと太平洋戦争中の世界と現代の世界が繋がっていたのだ。

日本政府は極秘裏に当時の日本 大日本帝国と会談していくつか条件を帝国側に出してそれを渋々ながらも受諾したことで日本防衛のため自衛隊の派遣を決めた。とのこと。

それから自衛隊派遣はもちろん食料支援、燃料支援が行われ狭間らが南樺太にいるのも自衛隊派遣として来たのである。

現在、歴史どおりソ連が中立条約を破り宣戦布告、侵攻を開始した。

そのことを事前に知っている自衛隊は国境線に近い村や町の住民は避難させて防御陣地を設営していた。

満州でも事前に住民は避難させ本土へ帰る者は軍民問わず船出してピストン輸送した。


「装填よしッ」


「照準よしッ」


装填主の矢島が初弾を入れ終え、三宅は目標に狙いを定めた。

あとは攻撃指示を待つだけ。


≪初弾一斉射。斉射後、各車各個射撃≫


戦車と歩兵の波が迫り来るのを見ながら部隊長からの指示を聞く。


≪距離よしッ射撃用意ーーー撃てッ≫


「撃てッ」


一斉に74式戦車の砲身が火を吹いた。



放たれた砲弾は次々とT-26に命中していく。


「待ち伏せだ!!」


戦車が爆発し、炎に包まれていく中、誰かが叫ぶ。


「戦車は応戦しろ!歩兵は戦車の影へッ」


第一擊を生き残った戦車は応戦を開始、歩兵は近い戦車の影に隠れる。


「敵は何処だッ」


生き残った戦車の一両の戦車長が敵、日本軍を探す。

だがなかなか見つからない。かの探している間にも味方の戦車が撃破されていく。


「・・・あれは!?」


遠くに砲搭の様なものが地面から出ていた。

周りの色と同化して見えるよう迷彩色で隠れていた。


「敵戦車発見ッ奴ら車体を地面に隠して砲搭だけを出している!」


すぐに様、味方に伝えてその戦車に照準を合わせる。


「やってくれたな。お返しだ」


引き金を引き、T-26から砲弾が放たれ真っ直ぐ日本戦車に向かっていって命中する・・・が。


「弾かれただと!」


そう弾かれてしまったのだ。


「次弾装填急げ!次こそ仕留めてやるッ・・・まずい!!」


再び照準器を覗いた時、狙っていた日本戦車の砲身がこちらを向き火を吹いた。

そして自分たちが乗っていた戦車に命中、一瞬で車内は炎に包まれ、砲搭は吹き飛んだ。

次々と破壊されていく戦車にソ連軍は混乱、進撃を停止する。



≪特科部隊、攻撃開始≫


戦車隊の後方で待機していた特科部隊の155mmりゅう弾砲が射撃を開始する。


「撃てッ」


初弾が発射され特科隊員らは素早く次弾装填を行う。


≪初弾着弾。修正の必要なし、効力射撃≫


次々と砲撃が放たれソ連軍に着弾していく。

その光景を狭間は見て思った。


「あの場所にいなくてよかったと思うよ」


「敵ですが同情してしまいますね」


三宅も同じ気持ちのようだ。


「取り敢えずこれで樺太侵攻は防げましたね」


矢島は疲れたような顔をする。


「第一波はな」


「はい?」


「これで終わりじゃない。第二波、第三波と攻撃を仕掛けてくる。それも第一波を上回る戦力でな」


それだけではない。史実ではソ連軍は塔路、真岡に上陸作戦を行う。


「まだまだ戦闘は始まったばかりだ。気を引き締めろ」


「「「はいッ」」」


そうまだ始まったばかり戦争は続く。

彼らの戦いも戦争が終わる日まで終わらない。



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― 新着の感想 ―
[一言] 事がついた後(自衛隊が撤退した後) アメリカが南樺太の件を反故(日本領維持)するか、どうかだな 人的被害はゼロでも、その後の戦後処理があれそう 逆転勝利にしても、条件降伏にしても
[一言]  企画参加ありがとうございます!  そして、こういうのを待っていました。日本の歴史上の痛恨事に救世主となる未来人。以前は随分と市販作品がありましたが、最近は全くと言っていい程出版されなくな…
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