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俺をイカせたのはバナナかよ!?~ミッションは異世界救済?生き返りをかけ転生します~

俺をイカせたのはバナナかよ!?~ミッションは異世界救済?生き返りをかけ転生します~

作者: 冬夏秋春

『今日もまた命が失われていく。また一つ、また一つ。彼の命もその一つに過ぎない……はずだった』

「どう言う事だ?」


 まず出てきた言葉がそれだった。


 気が付いた俺はプカプカと宙を漂っていた。いや、浮遊感としては水中にいると言った方が近いだろう。

 辺りは暗く、何も見えない。ただ自分の姿ははっきりと捉える事ができた。


 まずは落ち着け。落ち着こう。自分に言いきかせてひとまず頬を抓る。


 痛くない


「よし、夢だ」


 なんだかあっさり結論が出てしまった。


『んな訳あるかい!! も少し混乱したり焦ったりせんかい!!』

「ひょぉ!?」


 つい変な声が出てしまった。いや、それより何だ?人の声が聞こえた。中性的な子供の声。聞き間違いでは無い。


「だ、誰かいるのか? 一体ここは何処だ? 何が起きている?」

『はい、自己紹介しま~す! いわゆる神様です! 良いね~良いね~! パニクってるかい?』

「むしろ阿呆らしくて冷静になってきたよ。つかふざけてる?」

『まぁまぁ、話をしよう。まずは確認のために君の自己紹介プリーズ!』


 阿呆らしい。夢にしたって何て馬鹿げた内容だろう。神様?それこそ現実に居る訳がない。俺はこの状況が夢だと確信した。

 夢なのだからこの際適当に乗っかる事にする。


「はいはい、氷上英雄だよ氷上英雄(ひかみひでお)。高二。それで神様?この夢はどうすれば覚めるんです?」

『うん、本人確認完了! 君、死んじゃったから永遠に覚めね~ですよ?』

「……笑え無い」

『それが聞くも爆笑、語るも爆笑の傑作なんやで! ぷっ』


 最後噴き出した?

 いや、そんな事はどうでも良い。何なんだこのクソガキは?と言うか何キャラ?

 とにかく悪趣味な夢だ。早く覚めてほしい。


「いい加減にしてくれよ。こんな事に構ってる暇は無いの。早く家に帰って宿だ……い……?」

『うん、思い出してきたね。そう、少しずつで良い』


 そうだ。俺は寝てなんかいない。意識が無くなる前、俺は帰路についていた。


 学校が終わり、帰宅部の俺は友人と挨拶を交わしてすぐに教室を出た。さっさと宿題を済ませてハマっているアプリゲームのイベントを走ろうとか、そんな事を考えながら歩いていたと思う。

 そして帰宅途中にあるコンビニで、入り口にある宣伝の幟を見たんだ。

 劇場公開を控えたアニメとのコラボキャンペーンの幟だった。そう言えばもうやっていたんだなぁ、と……


 そこで俺の記憶は途切れていた。どうしても思い出せない。

『ではその先を別視点の映像を交えてお教えしよう!』


 思考を読むな


 突っ込むと同時に真っ暗だった辺り一面に突如として風景が映し出された。

 ある町並みを俯瞰から捉えたような映像。普段空から眺める事などないので見慣れないが、間違い無く地元の通学路だった。

場所は例のコンビニ。ぽつぽつと人の出入りが見られる。


 そして数秒後、コンビニの先から見慣れた顔の人物が姿を現した。 俺だ。


 『不運。不運としか言いようがないんだよ。さ、もうすぐだ』


 俺は固唾を呑む。この自称神様とやらの言う事が本当なら、いかにして死を迎えたのか。俺の命を奪ったのが誰なのか。


 映像の俺がコンビニの前までやって来る。そこでふと前方に何か落ちていることに気づいた。映像の俺は幟に意識が向いて見ていない。


「え? え? 嘘だろ? ま、まさか!?」


 その物体は黄色く細長い形をしている。そう、見るからに例の()()だった。


『そのまさかだよ! ね、爆笑』


 映像の俺はそいつに足を滑らせて盛大に転倒し、ピクリとも動かない。転んだ際に頭を強打したらしくいともたやすく絶命した。映像はそこで終わり、再び辺りは暗闇へと戻っていく。


「バナナかよぉ!!!!」


 真犯人バナナ。アホ過ぎる。こんなベタな転倒あるか? つか捨てたの誰だよ! バナナの皮!!


『コンビニのバナナ旨いもんね~我慢できずに買ってすぐ食べたんだろうね~』

「くっ、でもこれが夢じゃ無いと言う証拠にはなっていないだろ?」

『う~ん、じゃあさっき転んで打った部分、触ってみ?』


 先ほどの映像を思い出し、恐る恐る頭に手を当ててみる。


「いったぁぁ!?」


 頬を抓った時には無かった激しい痛みが襲ってきた。しかも微妙に窪んだような手触りまで感じて、急に嫌な実感が湧いてくる。


「本当に、死んじゃったのか……?」

『残念だけどね。さて、コホンっ』


 軽い咳払いがして沈黙がながれる。


『もういい加減受け入れたろ?改めて自己紹介。僕は神様ってやつだよ。悪いけど姿は見せられない決まりなんだ。好きに想像してくれて構わない。まぁ本来は極力こんな介入はしないんだけど、君の最期があまりにもあんまりだったものでね。救済措置を施すことにしました』

「救済措置? って、まさか?」

『ん! 君を異世界に転生させてあげるよ! 苦労しないようにボーナススキルのおまけ付きさ!』


 最近よく目にするアニメや小説で人気のあれか?自分が遭遇する事になるとは思いもしなかった。

 確かにこれは夢じゃ無い。それは受け入れよう。でも……


「いや、結構です」


 俺は即答した。


「そもそも一方的に転生っておかしくないですか?そりゃ今までの人生に不満があった人にはこれ以上無いチャンスでしょう。でも、俺は別に不満なんて無かったですから。欲が無いって言われるかもしれないけど、ごくありふれた暮らしで、それで充分だったし……」


 何とか言い切った。死という現実。まだ受け入れた訳でも無い。受け入れたくもない。しかしこうやって今までの生活を振り返ると、なんとも言えない気持ちになる。


『ではこのまま人生を終えるかい?』

「……たい……」


 泣きそうになるの堪え絞り出す。


「死にたくない!! あんたが神様って言うなら、転生じゃ無くて普通に生き返らせてくれよ!」


 やりたい事もある。友達や家族も悲しむ。人生を捨てるには、あまりにも多くの物を残しすぎている。


「お願いします……!」

『う~ん、ぶっちゃけ面倒くさい』


 あぁ、人が真面目に頼んでいるのにこの神様は


『いやね、出来ない事もないよ? でも一度死んだ事実をねじ曲げて同じ次元に戻すのは大変なんよ。別の世界にぽーんと投げ込んだ方が楽なの』

「笑い者にした挙げ句この仕打ちですか?」


 本当に泣けてきた。


『その点については謝ろう。悪かった。すまぬ。でも安心しなよ。盛大にすっ転んだお陰でバナナの皮はどこぞへ飛んで行って、誰も君の死因に気付いてはおらんよ』


 良かった、それだけは本当にありがとうございます!


『ん! 良い事を思い付いた! 君の願い、叶えてしんぜよう!』

「……本当ですか?」

『うん! ただしこちらの願いも叶えてもらうよ?』


 つまり交換条件と言う事か。無条件におまけ付きの転生に比べると不親切だが、生き返れるのなら乗らない手は無い。


「何をすればいいんです?」

『異世界に転生して貰いまっす!』


 たぶん神様が姿を見せないのはぶん殴られないためだと思った。異世界転生(それ)が嫌だと言っているのに。拳に力が入るが何とかこらえて続きを聞く。


「……で?」

『実は色々な世界を管理しているんだけどさ、その中の一つが滅びそうなんよ。君の世界風に言うとRPG系の世界なんだけど、スローライフが流行っちゃて冒険者が足らなくなったのを良いことに魔王がヒャッハァーしちゃってね』

「明らかにあんたの管理不行き届きでは?」

『ほら、出来るだけ不干渉が決まりだから。何でもこっちで解決したら為にならないっしょ?』


 まぁ言い分は分からなくもない。全て神様に管理されているなんて、考えただけで恐ろしい。


『で、蘇生の準備もあるし3日ほど滞在して貰おうかと。その間に……』

「その間に?」

『その世界の魔王をぶっ倒してほしい。それが蘇生の条件さ!』

「めちゃくちゃ干渉する事になりません!? つか3日でどうにかなる案件じゃあ無いでしょう!」


 魔王とは言うまでもなくラスボスだ。ラスボス相手に右も左もわからない新人転生者が3日で勝てる訳が無い。それとも簡単に勝ててしまえるイージー設定? だったら頑張れよ、現地民!


 とにかく詳しい話を訊かないといけない。質問をしようとしたその時だった。


「!?」


急に体から鈍い光が放たれた。徐々に強くなっていく。


『もう時間だね。この空間に留めておけるのも限界だ。どうせこのままだと消えてしまうんだし、足掻いてみたら?』

「リミットあるなら早く言って!!」


 もう考えている余裕も無い。当たって砕けろだ。


「分かりましたよ! 引き受けてやりますよ! その代わり蘇生の方、頼みますからね!」

『オッケ~交渉成立だよん。ただし魔王を倒せず3日が過ぎた場合はミッションノットクリアってことで永遠にグッバイね~』


 もうどうにでなれ!俺は腹を括った。見えない神様に頷いてみせる。


『ん! 健闘を祈るよ!』


 パチンと指を鳴らす音がする。すると今まであった浮遊感が消え、体が急降下していく。周りは暗闇なのであくまで感覚でしかないのだけども。

 そして最後に遠くから声を掛けられる。元居たと思われる辺りからだろう。


『あ、3日はきっちり滞在したが良いよ~ん。ログボで素敵な物が貰えるから~』


「ソシャゲかよぉ!!!」


 突っ込んだ瞬間、そこで俺の意識は再び途切れた

「え?続くの?」

『続きまっす!』



お読みいただきありがとうございます

続きもよろしくお願いします

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