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オリキャラのキャキャキャ1  作者: 御餅屋ハコ
オリキャラのキャキャキャ1 第五章
35/50

第五章 05 再会


05


 ヴァルルシャ、ユージナ、リユルがファスタンの町に戻ったのは、空が夕焼けで赤く染まるころだった。

 夕食には少し早いか?という話になり、三人は宿屋に戻って、軽く休憩してから食事に出かけることにした。

 リユルは301、ユージナは302、ヴァルルシャは303の部屋で、それぞれくつろぐ。

 そろそろ行こうか、という話になり、三人が一階に下りていくと、その人は、いた。

「ルーリーン……さん」

 ヴァルルシャがそう声を上げると、彼女は振り向いた。

 ルーリーンと、ユージーン、そしてフィルラ。その三人が、宿屋のフロントに、立っていた。

「あっ、さっきの方!! こちらにお泊まりだったんですね! 私たちも、今夜の宿はここに決めたんですよ。だって他の宿よりお安いし……。あっでも! さっき渡したお金のことは気にしないでくださいね! 私が失礼なことをしたんですから! 私があなたたちの獲物を……あ、えっと……あれ? お名前、なんでしたっけ?」

 ルーリーンは弾むようにそこまで言うと、眼鏡の奥から、ヴァルルシャをじっと見た。

 彼女に見つめられ、ヴァルルシャは一瞬沈黙するが、やがて我に返って返事をした。

「あ、ええ……と、そうだ、まだ名乗っていませんでしたね。私は、ヴァルルシャ・ヌイードシャドラと言います」

 ヴァルルシャはその名を言う。だが、ルーリーンの反応は、いたって普通の物だった。

「ヴァルルシャさんですね。本当に私ったらドジで……。でも、ヴァルルシャさんが優しそうな人でよかったです」

 ヴァルルシャの名を聞いても、彼女の態度に、何も変化は見られなかった。そのことに、ヴァルルシャは落胆したように、リユルには見えた。

「あの、こちらにお泊まりなんですよね? 今、あの森から戻られたところですか?」

 リユルが、ルーリーンと、ユージーンとフィルラに向かって話しかけた。

「ああ、そうだけど?」

 フィルラがそう答える。

「お食事はこれからですか? あいたち、今から夕飯を食べに行くところなんですけど、もしよろしければ、ご一緒しませんか? これも何かの縁ですし……」

 ヴァルルシャが息をのんでリユルを見るのを、ユージナは見た。

 ルーリーンは笑顔で答えた。

「あっ、いいですね! ご一緒したいです! ね、いいよね、フィルラ、ユージーン」

 ルーリーンは振り返って後ろの二人を見る。

「あたしはかまわないよ」

「俺もかまわんぞ」

 フィルラとユージーンはそう答えた。

「私たち、この宿の二階に泊まることになりましたので、荷物を置いてすぐに来ますね!」

 ルーリーンたち三人は、森で会ったときには持っていなかった大荷物を持っていた。それを担ぎ上げ、二階へ向かい、すぐに戻ってくる。

 ヴァルルシャ、リユル、ユージナと、ルーリーン、ユージーン、フィルラは、宿の外に出て、近くの店で夕飯を食べた。

 ルーリーンたちは、この町の他の宿に泊まっていたのだが、そこは宿代が600テニエルだったという。

「600テニエルって言っても、そこまでサービスが違うわけじゃないんだよね。この町の大通りに近いとか、立地だけの問題でさ。だからあたしたち、この町の宿屋の相場はそのぐらいなんだと思って、むしろ安い方だなと思ってその宿に泊まってたんだ」

 焼いた肉にフォークを突き立てながら、フィルラが言った。

「あ、それはあいたちも思いましたよ。特に鑑定屋の近くだと、一泊1,000テニエルぐらいは普通でしたもんね。だから裏通りで探して、橋のこっち側まで来たんですよ」

 リユルがスプーンでスープをすくいながら相槌を打つ。

「西ファスタンだと、400テニエルの宿も少しはあるようだな。だがそういう宿は建物が古くて、俺はいいんだが、他の二人があまり古い宿は嫌がったからな」

 ユージーンが、鶏肉からナイフで骨を外しながら言う。

「ああ、でも、あんまり古そうな建物だと、防犯とか心配になりますからね。うちらも、ちょっと安くても、見るからに古そうな宿は避けたんです」

 ユージナが、フォークに細めのパスタを絡めながら言う。

「それで、私が今日、森から帰ってきたときに、川沿いのあの宿を見つけたんです。建物がそんなに古くない割には、400テニエルで、いいなって思って。前の宿屋に今日の宿泊費は支払い済みだったんですけど、キャンセルすると八割は返却されますから、一泊600テニエルなら、払い戻しが480テニエル。400テニエルの宿に泊まっても、お釣りが来るなって思って、宿屋を変更しようって思ったんです」

 ルーリーンが、サラダを手に取りながらそう説明した。

「ああ……そうなんですね。八割返却……ですか、キャンセルしても。でしたら……400テニエルの宿は、お得ですよね」

 お茶を手に持ったまま、ヴァルルシャは答えた。

「あっでも! ほんとに! 今日の500テニエルのことは気にしないでくださいね! お金に困ってるってわけじゃないんです、私たち! ただ同じような宿屋に泊まるなら、値段が安い方がいいと思っただけで……!」

 そう言うルーリーンに、ヴァルルシャは言った。

「ああ、いえあの、それは本当にお気になさらず……私、気にしてませんから……」

 ヴァルルシャが気にしているのは、お金ではなく、ルーリーン自身のことだった。

 だがルーリーンはそれに気づかず、この店の食事はおいしい、この町の食料は豊かだ、そんな内容に話の中身は移行していった。

 夕食をすませ、それぞれが食べたものの支払いをし、ヴァルルシャたち三人と、ルーリーンたち三人は、共に宿に戻った。

 ルーリーンたちと二階で別れを告げ、ヴァルルシャたちは三階まで行く。

 部屋の前まで来たところで、リユルがヴァルルシャにささやいた。

「宿が同じになるなんて、ものすごい偶然だよね。いくら安いっていってもさあ。てことは、あいたちがタイミングよく時計塔を見つけたみたいに、もう一度会いたいと思ったから、あの子が目の前に現れた、そんな風にも考えられない?」

 二階に聞こえないように、その場にいる者にしか聞こえないぐらいの大きさの声で言った。

「じゃあ、リユルさんが食事に誘ったのは……」

 ヴァルルシャが小声で返す。

「だってせっかくのチャンスだし。ヴァルルシャ、彼女のこと気になるんでしょ? 向こうは過去のことは覚えていない、というか知らないのかもしれないけど、これから新たに人間関係を築くことだってできるじゃない。ねえ」

 リユルはユージナに同意を求める。

「うん……でも、うちらがあんまりおせっかいするのも、いかんのじゃない? こういうのは、本人が決めることだでさ」

 ユージナはそう答えた。

「そうだね。あいもこれ以上のことはしないから、あとは任せるわ。じゃ、お風呂の支度しようか」

 三人はそれぞれ支度をし、風呂に向かった。

 リユルとユージナは風呂の途中、ルーリーンとフィルラと一緒になり、簡単なあいさつを交わした。ヴァルルシャも男湯でユージーンと一緒になっているかもしれなかった。リユルとユージナが部屋に戻って髪を乾かしたりしていると、ヴァルルシャもぼんやりしながら戻ってきて、自分の髪を乾かし始めた。

「あ……じゃあ、おやすみなさい」

 歯磨きを済ませた後、ヴァルルシャはそう言って自室に入っていった。

「おやすみなさいって言っても、眠れなさそうな顔してるね。まあ、あいたちにどうにかできることじゃないけど」

 リユルがユージナに言った。

「そだね。じゃあうちらも、寝ようか」

「うん、おやすみ」

 リユルとユージナもそれぞれの自室に入り、扉を閉めた。


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