第四章 01 新たな町の情報
第四章
01
翌日は森に行かずに休息することにした。ユージナは寝込むほどの体調不良ではなかったが、この世界で初めての生理なので処理の仕方に慣れるため、三人一緒に休むことにした。
昼食は朝のうちに頼めば作ってくれた。そして宿屋の夫婦から、いろいろと情報を得た。
ちなみに、ご亭主の名前はサイ。おかみさんの名前はカイ。『再開』だ、と三人は口に出さずに思った。
この森でよく出る魔物はゴブリン、葉獣、水狼で、キヨゥラ川のほとりで遭遇するケルピーはこの森で一番強い魔物ということだった。しかしケルピーに会うには少し歩かなければならない。
慣れた魔物狩り屋はもっと広い町に行き、そこで効率よく狩りをするという。
この宿のずっと北に、ズーミー湖という湖がある。キヨゥラ川はそこから流れ出している。
ズーミー湖の周りには森があり、森は山につながっている。山はヤームヤーム山脈といい、それは南の方まで伸びている。
湖、川、森、山。魔物が出やすい場所がそろっているので、そのあたりに人が集まり、大きな町ができるのは自然な流れだった。
ファスタンという名の町がそこにあるという。
リスタトゥーの宿屋はキヨゥラ川沿いの森の入り口にあり、森と反対側、宿屋の西側には、街道が通っている。
その街道を北に歩くと、半日ぐらいでファスタンの町に着くという。
街道のさらに西にはヤームヤーム山脈が伸びてきていて、町という拠点がないのに山に入るのは上級者でないと難しいだろうということだった。
街道の南側にも町はあるが、徒歩ではその日のうちに着けるかどうかわからないということだった。
ユージナの生理が終わったら北の町に行ってみようか、三人はそう話し合った。
そうして数日間過ごしていると、リユルにも生理が来た。
ユージナとリユルは、出血のひどい時は宿屋で休み、出血が軽くなってきたら、ヴァルルシャと共に森で弱い魔物を倒して戦いに体を慣らしたり、野外のトイレで布ナプキンを使って持ち帰るやり方の練習をしたりした。
この宿は、町と町との移動のために宿を取り、そのついでに森で魔物を狩るという人が多く、長期滞在する人はあまりいなかった。
宿泊のみで夕飯が不要という人は、他の町で日持ちのする弁当などを買っており、街道を移動してきてここで宿を取り、森で少し魔物を狩って一泊したら翌朝すぐ次の町へ発つというパターンのようだった。
移動を急いでいない魔物狩り屋はこの宿に数日間泊まり、夕飯も宿で頼んでいたが、毎日森に狩りに出かけていくので三人が顔を合わせることはあまりなかった。ずっと宿で休んでいるパーティーは三人の他にはいなかったが、「生理なんで」と言えば宿屋の夫婦が普通に「ああ、ゆっくりしていきな」と答えた。生理で魔物狩りを休憩するパーティーは珍しくないのだろう。
ご亭主は「痛み止めや、停止薬、開始薬も売ってるよ」と言い、おかみさんは「離血浄の洗剤もあるよ」と言った。房楊枝……歯ブラシのように、生理にかかわるそれらの物も、日常の消耗品の一種、ぐらいの扱いなのだろう。
生理がタブー視されない世界、という設定が生きているのをユージナもリユルも感じた。
リスタトゥーの宿屋には十日ほど滞在した。毎日夜空を見上げると、月が、少しずつ満ちていった。
三人の蓄光石の光は金色になっていた。




