第30話無事にランク昇格しました。
次回は明後日の12時過ぎに第31話掲載予定です。
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ベリムを討伐してから1週間後、俺はグルドに呼び出された。
Aランクに無事昇格したようだ。
ランクの項目にAと書かれている新たな冒険者カードを受け取った。
俺のAランク昇格の件はギルド本部をかなり荒れたらしい。
げっそりしたグルドがギルド職員に長時間愚痴を漏らしていたそうだ。
そんなグルドは『もう俺に無茶は言うなよ』と釘をさしてきた。
――大丈夫だ。もう大きな事は頼まない。⋯⋯多分。
まあ、もうすぐこの町を出るつもりだし。
それより俺の昇格の早さは異様だ。ここに俺がいる事がバレて、捜索隊が派遣されるかと思ったが来なかった。
捜索隊が来る可能性は高いと踏んでいたが、ラッキーと言えばラッキーか。
――正直言って少し不気味だ⋯⋯。
取り敢えずそれは一旦おいておくとしよう。
俺は今、猛烈に機嫌が良い。というのも予想以上にカッコイイ2つ名がついたからだ。
俺の2つ名は『ミステリアスルーキー』だ。
登録して1年以内(ルーキー期間)にありえない昇格スピードであっという間にAランクに到達した実力は謎めいて怪しい。だからこの2つ名になったのだろう。
――実に分かりやすい。
こういう不思議系な2つ名の方が深みがあっていいと前々から思っていた。
しっかりと強さを主張する2つ名も確かにカッコイイけど深みがないよな。
Bランク以上の冒険者は数が少なく、昇格するとそれぞれの人の特徴に応じて2つ名が与えられる。
というのも上級冒険者になった時のご褒美らしい。
2つ名を恥ずかしいと思う人が案外多いのではないかと最初は思っていたが『バート』の人達は案外そうでもないらしい。
まあ魔法の詠唱とかもあるし、そういう所を恥ずかしがる事はないのだろう。
俺も中二病だから特に恥ずかしくはないのだが、ギルドにいた冒険者達から『ミステリアスルーキー』と連呼された時は焦った。
こういうのにも慣れていった方が良さそうだな。
その日は昇格祝いで昼から酒を飲みまくった。この世界では15歳から酒を飲む事が出来る。先輩冒険者達に引きずり回されて思いっきり奢ってもらった。
夜にはこれからの事を真剣に考えた。
本当はある程度ランクを昇格させられたらすぐに東へ移動する予定だったが、名残おしいと感じている。
しかし、そんな事を言っているといつまでたっても次の町に進めない。
その夜は本当に色々な事を考えた夜だった。
結局、俺はその次の日に俺はホノルの町を出る事に決めたのだった。
***
Aランクに昇格した次の日。
俺達は朝から満足亭にある自分の荷物をまとめていた。
まあ俺達の場合は異空間に物を詰めるだけだから結構簡単なんだけどな。
「マスター、これからお世話になった人達に挨拶に行かれるんですよね?」
「ああ、そのつもりだ。少しの間だったけどとても世話になったからな」
「俺はそういうのはあんまり好きじゃねぇんだけどな」
「レイナ殿、別れの挨拶はきっちりとするのが筋だと思うのである」
「まあ、そうなんだろうけどな⋯⋯」
レイナはそう言って下を向いた。
微妙な空気がその場に流れる。
「何かおかしな事を言ったであるか?」
レオンはキョロキョロと周りに視線を泳がしていた。
――レオンは若干KYなのかな。
フィンは説明する気がないみたいだし、ここは俺の出番だろう。
「レイナもそれはちゃんと分かっているよ。ただ親しくなった人達と別れるのが悲しんだよな」
「なっ、別にそんなわけじゃねーよ!」
「レイナ殿、勘違いしてすまなかった⋯⋯」
「お前も謝ってんじゃねーよ」
俺とレオンがニヤニヤしてレイナの方を見る。
こういう感情がをすぐ表に出してまう所はレイナの可愛い所の1つだ。
レイナは顔を真っ赤にさせていたが、やはりいつもよりツッコミに勢いがなかった。
「全く素直じゃない」
「なんか言ったか?」
「ナニモイッテナイヨ」
思わず漏れた独り言で火に油を注ぐ所だったようだ。
今のレイナは『触るな危険』状態だ。
――あまりの恐怖でカタコトになってしまった⋯⋯。
眷属達は冒険者ギルドの職員や満足亭のレーヌさんと仲良くしていた。
魔物である3人を抵抗もなく受け入れてくれた。それらの方々には感謝だ。
「マスター、これを入れてください」
「あいよー!」
フィンが服の入った袋を俺に手渡す。
部屋にもう俺達の荷物はない。これで最後のようだ。
「終わったか。なら行k」
「ちょっと休憩していこうぜ!」
「我も少し休みたいである」
「レイナ、レオン、我儘はやめなさい」
「いやいいよ。少し、ゆっくりしてから行こうか」
どうせ旅が始まったらベッドのある部屋でゆっくり休むなんて事は出来ないし、少しくらいいいだろう。
そう俺が言って30分間ほど休憩して部屋を後にしたのだった。
***
部屋を出るとレーヌさんが廊下を掃除していたようだ。
雑巾を手に持っていて、足元には水が半分ほど入ったバケツがある。
「あんたらそう言えば今日の分の宿泊費もらってないよ。前払いよ! 前払い!」
レーヌさんは笑いながらそう言う。
レイナは下を向いて、ギュッと握りこぶしを作っていた。
「レーヌさん、突然なんですけど今日この町を出る事にしました」
そう言って俺は部屋の鍵を手渡した。
そしてレーヌさんはそれを受け取った。
「⋯⋯そうかい、寂しくなるね」
あたりが一瞬静寂に包まれる。
レーヌさんは暗い表情をニコッとした笑顔に変えて言葉を続ける。
「この町に次来る事があったら、またここに来ておくれ」
「分かりました。約2週間の間本当にお世話になりました」
「あんたらが無事に旅に出れるように祈っておくよ。おっと、掃除早く終わらせないと」
そう言ってレーヌさんは手をヒラヒラと振って仕事に戻った。
――たくましい人だ。
そしてその姿を見て俺も負けられないなと思うのであった。
俺達も出口よ方に歩き出す。
フィンが俺の背中を指でつついてきた。
「ここを出た後、冒険者ギルドに挨拶に行くんですよね?」
「ああ、ギルドマスターやユリアさんには世話になったからな」
そう俺達は言って、冒険者ギルドに向かうのだった。
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