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隠れチート、見つけました  作者: トニーひろし
第1章 異世界転移編
1/33

第1話神様に呼び出されました。

本日の5時過ぎに第2話掲載予定です。

しばらくブースト予定です。






 俺、大迫博之は今、不思議な場所にいた。

 そこは、周囲が淡いピンク色の空間でとても地球の風景だとは思えない。


「というか何処だよここ!?」


 そこには俺以外の2年1組のクラスメイト達もいて、皆も今の状況に戸惑っている。

 俺は現在、明帝学園という文武両道を掲げる進学校の2年1組に所属している。

 学校の休み時間中に急に周囲が光ったと思いきや、いきなり異世界の神とやらにここに呼び出されたのだ。


「うんっ? 異世界の神⋯⋯?」


 何故か分からない。ただどうしてか理解出来たのだ。

 ――これってラノベとかでよくある異世界召喚というやつではないですか!?

 俺の胸の鼓動が急速に高まり、頰がどんどん熱くなっていくのを感じた。興奮して自然と右目周辺に片手をかざす独特の中二病ポーズをしてしまう。


「おっと、また悪い癖が出た。こんな事してたらクラスメイトとの距離が開く一方だ」


 不幸な事に明帝学園にはオタクは少なく、中二病なんていないに等しい。

 それに対して、俺はかなり極度のオタクで中二病。理解されず、避けられたりいじめられたりしている。


「おい、大迫! これはなんだ説明しろ!」

「って言うかホントここ何処よー」

「なんか嫌な雰囲気がするぜ」


 今、俺に話しかけてきたのは、大声で威圧的な言い方をする高橋広樹と何故か語尾を伸ばすようにして言うギャル女の宮田幸、そしてクラスのチャラ男三宅史明の3人である。

 いつもは3人で俺をいじめてくるのだが、宮田と三宅はこの状況に戸惑ってそれどころではないようだ。

 ――しかし、高橋の野郎はよくこの状況で俺に絡む余裕があったなー。めんどくさいったらありゃしない。


「はは、俺も知らないよ」

「嘘つけ! このチュウニ野郎が!」


 逆に俺がこの状況を説明できるとどうして思ったのかが疑問だ。

 高橋が胸ぐらを掴んで睨みつけてくる。すごい形相だ。


「やめとけよ! 馬鹿が!」


 そのやりとりの仲裁に入ってくれる勇者が現れた。⋯⋯いや、こいつは悪魔だったか。

 俺は頭のこめかみ部分を指でおさえる。頭が痛くなってきたような気がする。

 こいつの名前は黒木大和。身長180センチの長身で威圧的な表情のイケメンで、密かに学内では人気があるらしい。黒木の喧嘩無敗伝説は有名で1人で30人の暴走族をしめた話や素手で熊とやりあった話は有名だ。それでありながら頭もよく学内模試でもトップ10に入る猛者という超高スペック人間だ。


「お、おう」


 高橋がたじろぐ。

 一緒にいた宮田と三宅も何もしていないのに、黒木に対してビクついていた。

 ――小物感丸出しだなぁ、おい!

 俺は内心せせら笑っていると黒木がこちらに歩いてきて小声でいう。


「例え内心でも人を馬鹿にするのはよくねぇな」

「アーユーアエスパー?」


 いかんいかん驚きすぎて思わず叫んでしまった。

 黒木が鋭い目つきで睨んでくる。うるさくてごめんなさい。

 そんな事を思って周りを見回していると、いきなり何処からか声が聞こえてきた。


「アーアー、マイクテスト中、マイクテスト中」

「どうした急に!?」


 いかんいかん。取り乱してしまった。声はクールなビジネスウーマンのようだ。


「これ1回言って見たかったんですよ」

「それはなんだか共感できる。というかあんただれ?」

「私の名前はミカエルです。一応、神に仕える大天使です」

「は!?」


 精神異常者だ! 精神異常者が現れたぞ!


「何なのこいつ?」

「頭大丈夫かしら」


 周りからもそんな声が聞こえる。俺も同意見だ。オタクで中二病をこじらせすぎだろ!


「まあ、理解するには時間がかかるでしょうから、てっとり早く要件をいいます」


 そう言ってミカエル(自称)は数秒の間を置いた。


「これから『恩恵』の付与を行い、貴方達には異世界に行ってもらいます」


 今気付いたが、周りにいる連中もあたりを見回しているが発声源が特定出来ない。まさか本当に大天使なのか?

 それを見越したように声が聞こえる。


「特殊な力の影響で発声源を特定することは出来ません。あしからず。あと本当に大天使ですよ」


 ――あっ、そうですかー。

 俺は一瞬思考停止状態に追い込まれたのだった。


「どういう事か初めから説明してください」


 クラスメイトも静かになった所でクラス委員長の小坂理絵が口を開いた。学内トップの成績の上、眼鏡をかけた知的系美少女で、学内には密かにファンクラブが存在するほどだ。

 彼女は冷静を装っているが、内心は不安でいっぱいいっぱいなのだろう。顔は強張り、声は震えている。


「大丈夫よ! 理絵ちゃん!」


 小坂の横で彼女を励ましているのは、副委員長の水野莉子だ。小坂の一番の友人で、小動物のような愛くるしい見た目だ。喋り方には少し最後を強く発音する特徴がある。


「混乱はあるかと思いますが、手短にザックリと説明しましょう」


 理解できるように丁寧にお願いします。


「現在貴方達は地球とはまるっきり別の世界である『バート』という異世界に飛ばされようとしています。それは地球の神も承認済みで飛ばされるのは決定事項です。バートでは現在、人間と魔物が戦争をしており、魔物を倒す勇者として貴方達を召喚する予定です。魔物達は強く、人間達は押されている状況であり、貴方達の力が必要なのです。魔物と戦う貴方達には神から特別な能力『恩恵』が送られる事となっております。何か質問とかあります?」


 ――はい、勇者として召喚。お約束だな。

 説明はやっぱりザックリだった。超展開すぎだろ!

 案の定クラスメイト達は次々と罵声を浴びせる。


「おいおい、マジかよ!」

「ふざけんじゃねーぞ!」

「地球に返して!」

「そうだ! そうだ!」

「元の生活に戻してくれよ!」


 皆これからの事が心配なのだろう。必死に地球に返せと叫んでいる。まあ、俺だって心配だが、ここで叫んだって何もならない。

 仕方ない、少し情報を引き出すか。


「質問いいか?」

「何なりと」


 はい、すんなり許可が出ましたー。


「俺たちは異世界召喚された場合何処に飛ばされるんだ」

「ガラフ王国の王城の中となっております。向こうの人間には貴方達が勇者である事を伝えてありますから、丁重に扱ってもらえるでしょう」

「魔物とはそもそもなんなんだ?」

「魔物とは邪神が生み出した人間を食料とする生命体の事です。大昔、神は人間を創造し、人間達に地上を与えました。邪神はその人間達を駆逐し、地上を支配するつもりなのです」


 ――ふーん、成る程ねー。

 その後も俺は質問を続け、色々なことを聞いた。

 邪神とは神が邪な感情を抱いて神の住む世界である神界から地上に追放されたものであり、邪神はその世界の地上を支配するつもりで魔物を作り、人間達を攻めている事。

 現在地上の約7割が魔物達によって占拠されており、人間を救う救世主が必要である事。

 『恩恵』は『バート』の世界の人々には与えることが出来ず、神は地上に干渉してはならないため異世界人に『恩恵』を与えて呼び出すのが一番簡単である事。

 異世界で死んでも二度と生き返れない事。

 元の世界に戻るためには、神に地球への帰還を認められる事。

 俺は最後の答えである『神に地球への帰還を認められる事』という言い回しがかなり気になった。

 黒木も顔をしかめて上を向く。


「神に地球への帰還を認められる事だぁ!? よく分からねぇ言い回しだなぁ!」

「⋯⋯⋯⋯」


 その発言をミカエルはスルーする。どうやら俺や黒木の考えた通りのようだ。しかし、馬鹿なクラスメイト達は気づかない。


「つまり邪神を倒して、魔物を全滅させろって意味じゃねえの?」

「邪神か⋯⋯凄く手強そうだね」

「手強いどころじゃないだろう! 神様なんだから!」

「けど、それ以外に帰れる手段はなさそうだぜ」

「それなら、さっさと邪神を倒して地球に帰りましょう」


 クラス委員長の小坂さんが最後にそう言って、黒木と俺以外の皆が頷いた。

 やがて、僅かな希望を見つけた事に安堵したのか周りが静かになっていく。

 ――分かってねぇな! さっきの言葉の真意が!

 邪神を倒して魔物達を全滅させる事が帰還の条件だったら『神に地球への帰還を認められる事』なんて言い方はおかしいのだ。

 つまり、神側は帰還に対する重要な情報を隠している。もしかしたら出来ないのかもしれない。

 帰還へのヒントは全く無しか。

 小坂も普段なら気付いていただろうが、今は冷静さを欠いているように感じるな。


「ではこれから『恩恵』の付与を始めます」


 大部分のクラスメイト達が今の事情を飲み込んだ所でクールで凛とした声が響く。

 しかし、ミカエルの口調は慌てふためく俺たちを嘲笑っているように思えて、それはこれからの事をより不安にさせた。




















本日の5時過ぎに第2話掲載予定です。

しばらくブースト予定です。

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