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夜の散歩

立花の話です。

 三人でギルドに入ると私達三人は丁重に迎えられた。


 「よっ、久しぶりだね~アエロリット」

 「お久しぶりです総長」


 アエロリットと言われた女は丁寧に頭を下げる。

 金髪ポニーテールのいかにもお嬢様といった感じだが凛としたその姿は力強さを感じここのギルドマスターだと言われても納得できる。


 「こっちは俺の友達の奥さんで夫婦ともに俺と同等のランクを与えている」

 「話は聞いております、なんでも総長と同等の力を持った古くからの友人がギルドに入ったとか」

 「神明・フォルモサ・立花よ、よろしくね」


 手を前に出すと彼女は私の手を握り握手を交わす。


 「アエロリット・ベンブラッシュです、この街のギルドマスターをやっていますので以後お見知りおきを」


 なかなかに力強い手をしている、魔力量も高そうだし魔法剣士か何かだろう。


 「それでこっちはヴィエナ・エンペリー、こっちの話はギルドマスター室がいいかな」

 「わかりました」


 九兵衛さんがそう言うとアエロリットは察したのか私達をギルドマスター室に案内した。

 ソファーに腰掛けると九兵衛さんはヴィエナの話をしこれまでの経緯を説明した。


 「なるほど……そんなことがあったのですね」

 「ああ、それで無理やり冒険者にしたのさ」

 「事情は把握しました、九兵衛さんが不在の時に彼女の所有権を主張する者が現れたとしても冒険者としての身分を盾に守るのでご安心を」


 アエロリットは微笑みながら言う。


 「ああ、よろしく頼む。今はいいけど今後彼女が一人でこの国に戻ってきた時とかにそういう面倒に巻き込まれる可能性が無きにしも非ずだからね」

 「ええ、奴隷制度も早くなんとかしたいとこですね……」


 アエロリットは険しい表情だ、奴隷制度は反対のようだ。


 「ああ、いずれ何とかするよ。それと今日泊まる部屋はどうなっている?」

 「ちゃんと三つ部屋をとっていますよ」

 「そうか……ご苦労様だね~」

 

 内心で少し残念がっているに違いない。


 「部屋は今すぐ案内します、それとあなた……」


 アエロリットは怪訝そうな顔を見せる。


 「事情が事情だし疑うわけじゃないけどギルドに入る為に総長に色目を使うような真似はしていないわよね?」

 「へぇっ?そんなことは決してないですよ」


 ヴィエナは少し心辺りがあるのか冷汗がでる。


 「昔総長は反ギルドの女に色目を使われてギルドの内部を探られそうになったことがあるのよね~連邦内には多いし……」


 アエロリットは不安気な表情で言う。


 「九兵衛さん?」 

 「いや~昔ギルド内でそういうことをしようとした不届き者がいてね~ハハッ」


 九兵衛さんは顔が笑っているものの冷汗をかいていて口を濁している。


 「アエロリットさん?」

 「ごほんっ、総長が独断でいれた綺麗な美女がいたのですが実はダーレー教団の回し者で総長はその者を自身の近しいとこに置いたらここをかぎ回されるは命を狙われるはと散々な目にあったのです、それも二人いれたから二回も」


 アエロリットは淡々と顔色を変えずに言う、もちろん九兵衛さんを睨み付けながらだ。


 「いや~そんなこともあったね~」


 ヘラヘラ笑いながら誤魔化す。


 「なるほど……九兵衛さんらしいわね……あなたが無事でよかったわ」

 「まったくです、それでこちらとしてもそんなことが二度とないようにとここいらを拠点とする新しい女性冒険者に関しては特に注意しているんです」


 エロ親父には困ったものである、ただよりによって教団の手の者が入り込んだというのは他にもスパイがいる可能性も考えないといけないだろう。


 「事情は理解したわ、でもヴィエナはその点は大丈夫よ」


 状況から見てあれは偶然の成り行きでの出来事だ、それに獣人族の奴隷が教団の回し者という可能性はまずないだろう。


 「私も今回は大丈夫だとは思ってますが前のことがあるのでつい……」

 「そうそう今回は大丈夫だ、安心しなさい」


 九兵衛さんにそんなことを言われても説得力に欠けるだけだ。


 ◇


 部屋を案内された後は食事をとり自由時間となったので一人夜の街を歩くことにした。


 「夜の散歩がてら情報収取ね~」


 外を探索していると裏道とかを散策したくなる。


 「ふふっ、周平に怒られちゃうわね」


 危険な香りが漂う夜の裏道に入っていく。


 「なかなか雰囲気があるわね」


 裏道を通っていくと柄の悪い男達の視線を釘付けにする。

 すると何人かの男が声をかけてくる。


 「おい姉ちゃん、こんなところに何の用だ?」


 早速いかにもという感じのガタイのいい男に声をかけられた。


 「ふふっ、夜の散歩よ。情報収集って奴かしら」

 「なら俺達が是非相手してやるよ、色々教えてやるさ」


 男の目は私をなめ回すようなエロい目線だ。


 「一応言っておくけど私には旦那がいるからそっち方面は期待しないで欲しいわね~」


 すると男達は嘲笑うかのように言う。


 「じゃあ俺達がその旦那よりも優れた男ならいいわけだ」


 周りの男達とケラケラと不気味な声で笑う。

 私の強さを感じ取れない弱者か……


 「不合格ね……あなた達はいいわ」


 ため息をつくと男達は私を囲む。


 「おいおい~それはないんじゃねぇの~」

 「そうそう、俺達に目をつけられた以上は朝まで付き合ってもらうぜ」

 「大丈夫、あんたぐらい美しければそのままポイ捨てはしないからよ~」


 それを聞くと頭痛と吐き気がしてくる、早く片付けるか……


 「邪魔よ!」


 衝撃波を放ち囲った男達を吹き飛ばす。


 「ぐぁぁぁぁ!」

 「死にたくなければどきなさい!」


 威圧的な目で見下ろし背を向けると最初に声をかけた男が背後から立ち上がり襲いかかる。


 「このアマ……」


 男は魔法を唱えようとする。


 「破魔軸!」


 魔法の発動を防ぐ。


 「魔法が……」


 男は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で唖然とする。

 振り向きすかさず神細剣ローズメイデンを具現化させ顔の目の前で寸止めする。


 「死にたい?」

 「ま、まいった……」


 男はその場で崩れ落ちる。


 「いやー素晴らしいですな~」


 甲高い声とともに陰から現れたのは少し小柄な男だ、一見弱そうに見えるが飄々としていて隙がない。


 「覗き見なんて悪趣味ね」

 「ははっ、これは申し訳ない。」


 男はニヤニヤした顔を崩さない。


 「それで何か用かしら?」

 「あっしならあなたの要求を満たせるかもです」

 「あら、それは期待していいのかしら?」


 私が知りたいのは今のこの国の裏の情勢だ。


 「この国に召喚された勇者なら一人この近くにいます、あなたはそっち方面に感心があると見ています」


 男の目が光る。


 「いい勘してるわね、どうやらあなたなら私の望みを満たしてくれそうね」


 私は男に連いていき裏にある怪しげなバーへと入った。


 「こちらでっせ」


 男は私をカウンター席に案内する。


 「マスターいつもの二つお願いします」


 マスターは黒人のような肌をしている、慣れた手際で私と男に飲み物を用意する。


 「では改めてあっしはシスオンバイという者でこの街を中心に情報屋をやっています」

 「神明・フォルモサ・立花よ」


 お互いに名前を名乗りだされた酒を手に乾杯する。


 「見知らぬ男からだされた酒は警戒した方がええでっせ」


  男はニヤニヤしながら言う。


 「この酒には毒が入ってないのは理解しているわ、もっともカウンターにある興奮剤の類いを見る感じお持ち帰りバーと言ったところかしら?」

 「完敗ですな~あなたは物を見ただけでそれが何なのかわかるようで」


 少し驚かれたものの中々の鋭い洞察力を持っているようだ。


 「ふふっ、あなたの洞察力は合格ね。それとそこら辺にあるいかがわしい薬を飲まされたとしても特に私に異常きたすことはできないわ」

 「ほう……どうやらあっしはとんでもない人物と接触したようで」


 まぁその表現は間違っていないわね。


 「それで何故私に接触を?」

 「ええ、それなんですがあなたは召喚された勇者とはどういう関係があるのか気になりましてですね……」


 男は歯切れの悪い声で言う。


 「そうね、私は召喚された勇者ではないわ、ただ召喚された勇者と同じ星出身ではあるけどね」

 「なるほど、それで容姿が似ているようで」


 男は納得したのか次の質問に移る。


 「この国の勇者のことは知っていますかい?」

 「それを探りにきてる感じね、酷い扱いを受けているとは聞いているけどね」  


  情報屋なら何か知っているかもしれないわね。


 「察しの通りです、この国に召喚された勇者達は召喚されたその日から監視化に置かれ隷属の腕輪をつけられ戦うことを強いられています」


 ファーガス王国とは違い自由がないとは聞いていたが隷属の腕輪をつけられているとは……


 「魔大陸遠征ね」

 「ええ、もっとも一人の勇者が脱走したことで今は止まっていますがね」


  結果がインフィニティシールドの発動という現状だ、当初の予定通りファラリス連邦に向かったらまた違った結果になってたに違いない。


 「それも聞いているわ、もうそれは解決したのかしら?」

 「ええ、何でも魔大陸側に逃げたのを確認したようでインフィニティシールドを解除次第遠征に行くようで」


 無事脱出したようね、となると遠征も近いか。


 「なるほど、それで勇者に会えるというのは?」

 「最近この店によく現れるんですよ、それも軍人と一緒にね」


  シスオンバイは怪しげな笑い顔を見せる、こんな所に毎回来るなんて物好きもいいところだ。


 「この店に?こんな怪しい店に軍人となんて怪しい臭いがプンプンね」  

 「ええ、もう少ししたら来ると思いますぜ」


 さて色々聞けたしこっちも何か見返りが必要かしらね。


 「それで私は何を払えばいいかしら?」

 「そうですね……あなたは連邦の敵ですかという質問をしてくれたら答えてくれますかね?」

 「ふふっ、いずれは解体しにくるでしょうね。あなたもここのマスターも他の客も獣の臭いがするし敵対はしなくても済みそうね」


 するとシスオンバイはテンションが上がり喜色の表情だ。


 「いつからわかっておいでで?」

 「あなたと出会ったときからだからその質問はナンセンスよ。マスターも他の客も見たその瞬間に違うのはわかったわ」


 シスオンバイは最早それに驚かない、たぶん能力的にただの人間ではないことは気付いているだろう。


 「あっしもなかなか洞察力に優れていると自負していますがあなたはそんな比ではない。さっきの魔法の発動を無効にした奇妙な術もあっしの想像を遥かに越えている」

 「ふふっ、でもあの質問は私が連邦の回し者だったらどうするつもりだったの?情報屋で用心深そうなあなたらしくない質問ね」


 今ふと理由を考えてみたが思い浮かばない。


 「聞きたいですかい?それは勘でっせ」


 その答えは情報屋らしからぬものだから。


 「もっともあなたが勇者と同じ出身そうな感じがしたのと隷属の腕輪もしくは首輪をしていない、そして勇者達の情報を知りたがっていて連邦民なら近づかないこんなところに自分から近づいていった等のことを加味してですがね」

 「つまりそれらのことを考えて連邦の回し者じゃないことを想定して聞いたということね?」

 「ええ、ただの旅人なら情報を教える対価に他言無用にできたし同じ目的があれば手を取り合えると考えましたのでね」


 この男はなかなかね、心を許すことはできなくても使えそうだ。


 「合格ね、私は明日になったらここを去るけど近いうちにまた接触するわ」

 「お急ぎのようで?」

 「ええ、でも夜はまだ長いし色々共有できると思……」


 後ろで音がすると指で私が喋るのを止めるようジェスチャーし、シスオンバイは目を鋭くして光らせる、どうやら来客が来たようだ。


 「来ましたぜ……」


 シスオンバイは小声で私にいう、横目で見ると男が三人に女が一人だ。


 「あれがさっきいってた客ね?」

 「ええ、一応聞きますが知っていますかい?」

 「顔を見ないとわからないけどたぶん知らないと思うわ」


 席に座ると女がフードを脱いだので顔を覗いた。


 「嘘……」

 「どうしました?」


 その姿を見て私は驚いてしまった、何しろその女の子は私の知り合いだったのだ。


草津まで旅行してましたが凄くいい所ですね。

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