勇者との戯れ
強くなった主人公がクラスメイトと遊ぶ回です(変装してます)
「俺と同じ白金ランクのシン・アークトライアル・ゲイクルセイダーです」
王様に勇者達の育成にも手を回すためにと、シンの城への出入りを懇願した。
「この度は友シャーガーの要請を受けてここにまいった」
シンは王様の前でひざまずく。
「うむ、話はシャーガーから聞いている、よろしく頼みたい」
「ははっ、短い間だが少しでも教えられたらと思う次第だ」
バーで飲んだ次の日に早速王様に許可を申請したが意外とすんなり許可が下りたのだ。
挨拶を終え玉座の間からでる。
「思ったよりすんなりいったな」
「そうだな、九兵衛殿の作った冒険者ギルドの信頼はかなりのものだな」
冒険者ギルドと喧嘩して冒険者の力を借りれなくなったら困るのはどこの国も共通だ、それぐらい冒険者ギルドは強い。
「そのかわり各国もそれぞれ国内に支部を置きギルド自体が国家に対して反旗を翻すようなことがないようにしている、勢力を伸ばした代償だな」
「九兵衛殿は最初から友や私を頼りるつもりで計画だったのだろ、俺と友がいれば国一つなんてことないだろ?」
シンのその言葉に改めて信頼と安心を感じる、冷静でどの場面でも頼りになる男なのは昔から変わらずだ。
「ははっ、そうだったな」
シンとともに城の中庭へ向かうと月島と杉原の姿が見えた。
「あ、シャーガーさん~」
杉原がこちらに気付き向かって来る。
「よっ」
「元気そうですね~」
「美里もな~」
相変わらずポニーテールの似合う女の子だと感心する。
「シンさん?」
月島はシンがいることに驚いている様子だ。
「月島じゃないか、あの時の答えは見つかったか?」
「はい、何とかこれのためにってのを一つ見つけることができました」
月島は自信ありげに言う、どうやら二人は知り合いのようだな。
「月島、シンと知り合いなのか?」
「はい、こないだ街でばったり会って話を聞いてもらったので」
月島が嬉しそうな表情を見せる。
「一応紹介しておくか、こいつは俺と同じ白金ランクの冒険のシン・アークトライアル・ゲイクルセイダーだ」
「杉原美里です、よろしくお願いします」
お互いに挨拶が済むと月島が口を開く。
「私達なら白金ランクの冒険者に匹敵するぐらいの能力は得られると聞いていましたがシンさんやシャーガーさんの得体のしれなさを見てとても到達できないと感じているんですけど白金ランクの冒険者はみんなそんな感じなんでしょうか?」
月島の質問に俺は答えた。
「ははっ、通常の白金ランクはお前達とそんなに差はないよ」
それを聞いた月島はホッとした表情を見せる。
「なんだ、二人が別格なだけなんですね~」
「そうだな、俺とシンは表向きは白金といってもギルドの総長と同じ扱いかな。総長の奴とは昔からの付き合いでな」
実際のランクはブラックだしシンもブラックになるだろう、白金ランクと言えばシルキーサリヴァンやザルカヴァ、イネーブル、アザムールなんかがそれに該当するがあそこら辺が白金ランクのボーダーだ。
「二人はギルドでもVIPなんですね~そんな二人に教われるなんてラッキーかも」
「ははっ、たいしたこと教えられんからそんな期待せんでくれ」
この月島の期待する表情はプレッシャーになるな~
「せっかくだし模擬戦見てくださいなー」
杉原が指を指すと一対一のバトルが始まっていた。
バトルをしているのは嶋田と菱田だ。
「教える以上は見とかないとな……」
シンは近くまで向かったのでそれについていく。
「友よ、あの二人はそのクラスとやらではどのぐらいなんだ?」
「トップファイブ同士の対決だよ」
二人とも武器を手に本気の表情だ。
「あれでトップファイブか……低いな」
「ははっ、比べるとこが間違ってるっての!」
勇者と聞いて実や九十九と比べたのかもしれないが比べる相手が間違っているな。
「だがあの柄の悪い男の攻撃のラッシュは悪くないな、ただ闇雲に攻撃してるだけでなくしっかり見て攻撃している」
「それを避けてる相手の方はどうだ?」
嶋田は菱田のラッシュを上手くよけ反撃の隙を伺っている、菱田の攻撃を上手く捌き隙あらば攻撃するといった感じだ。
「悪くはないがあの男は普通だな」
嶋田が普通か……一応勇者のリーダーだしあの中では飛びぬけてる嶋田を普通と言うシンの感性を疑った。
「あれが普通とはその言葉の真意を聞かせてくれないか?」
「そうだな、言ってしまうとあれは尖った部分がないからステータスが高くても普通に見えてしまう感じだ」
シンを目線からするとああいうタイプは印象が薄いという事なのか。
「確かに能力的には均等だし言われてみればそういう見方ができるが……」
ただ嶋田より優れた人間を探してもそうはいないと思うが……選ばれた存在であるのは間違えないわけだし……
「まぁあれは世間的には優れた部類ではあるだろうが俺はあれを脅威とは全く思わないわけだよ」
「そりゃシンが脅威と思う奴は少ないからそれは当然だろ」
二十柱が脅威と感じるのは同じ二十柱を除けばせいぜい偽神や戦姫とかそこらへんだろうからな。
「友は何か勘違いしているな」
「どういうことだ?」
「あれよりも弱い者でも脅威と感じたことはある、要は見えない何かがあるかどうかでそれがどれぐらい底が知れないかだ」
底か……確かに嶋田からは底知れぬ何かは感じないな。
「なるほどな、ただあいつらに限らずほとんどの奴の底なんてたかだか知れているだろ?」
ただ一部底の知れない奴も確かにいるな、それが脅威と少しでも感じるようになるかはわからんが。
「そうだな……昔俺を楽しませてくれたあの兄妹や想像を遥かに超えて高みへと至った学友、庶民から国を作った大馬鹿者……あいつらは俺をワクワクさせてくれた……」
シンは懐かしそうに語る、昔そいつらの話をしていたような気がするな。
「そういや陣のやつはどうだったんだ?」
「あれは底が知れん、脅威と期待を込めて次会う時が楽しみなぐらいさ」
シンにここまで言わすとはさすがは陣だな。
二人で話していると菱田と嶋田が模擬戦をやめクラスメイト達とともに寄ってきた。
「あんた達ギルドの冒険者なんだってな」
菱田が食ってかかるような口調で言う。
「ああ、お前は?」
「俺は菱田隼人だ、魔王を倒すための遠征に向けて力をつけているとこだ」
「知っているよ、シンはともかく俺は何日かここにいるからな」
お前のことはよく知っているよ、昔からしつこく絡まれたからな。
「俺達これでも白金ランクの冒険者ぐらいの力はあるからよ、是非あんた達と戦って腕試しがしたい」
「すいません、菱田が失礼を……」
嶋田がフォローに入る、昔の事もあるしちょうどいい……少し遊んでやるのもいいな。
「君の話はよく聞いているよ、そうだな……俺とシンと二対二をやるかい?」
ついでにこいつらがどれぐらい強くなったか確かめるいい機会でもある。
「お願いします、それじゃあ俺と菱田で」
「それだとつまらんな、あと三人ぐらいは欲しい」
シンが突然そう言うと菱田はムッとしたのか怒り気味になる。
「さすがに俺達のことナメすぎなんじゃねぇか?」
「むしろお前達本気で俺達に勝てる気でいたのか?それこそ俺達をナメているな」
シンは淡々と言い返す、実際は全員でも足りないぐらいだからな。
「てめぇ……」
菱田の沸点が上がっていく、これぐらいで激昂してるようじゃまだまだだな、おまけに力差も感じ取れないとは……
「まぁまぁそれはやればわかるよ、美里に月島とそこのお前と五人でいいかな?」
そこのお前とは木幡のことだ。
俺にさされると木幡は立ち上がる。
「ご指名なら参加させてもらおう」
「これで決まりだな~」
「まて、俺はまだ納得して……」
菱田の言葉を杉原が遮る。
「やればわかるから……あんたに足らないのも見えてくるよ」
「何だと……」
「シャーガーさん早速やりましょう!」
杉原は月島と木幡と嶋田と菱田を連れて中庭で準備を始める。
「友よどういう風にやつらを炒めるんだ?」
そうだな、まず塩と胡椒をかけて……って違うわ。
「どういう風に炒めようかね……そうだな、俺は木幡と菱田の相手をするから三人を頼む」
「心得た」
俺はシンも中庭に立ち構える。
「素手で大丈夫何ですか?」
嶋田が聞いてくる。
「武器使ったらうっかり殺してしまうかもしれないからな、素手でいかせてもらうよ」
「うむ、素手ならちゃんと手加減すれば致命傷になることもないからな」
俺とシンの発言に嶋田もさすがにイラッとしたのだろうか表情が強張る。
「みんな本気でやろう!」
嶋田の言葉に四人が頷く、もっとも月島と杉原は苦笑いをしているが……
「それじゃあいつでもどうぞ~」
俺の言葉にまず菱田が向かってくる。
「それじゃあいくか~」
俺は向かってくる菱田と対峙する。
「おらぁ!」
菱田は大きめの剣を片手で操り俺に切りかかる、体格がいいこともありあの大きさの剣を片手で操れるのは菱田の恵まれた身体能力があってのことだろう。
「ほいっ」
ただはっきり言って鈍すぎて避けるのなんて造作もない、もっと言えば指二本で受け止めるのも余裕なぐらいで白刃取りの必要すらない。
「あたらねぇ……糞……」
普通の人か見れば速いのかもしれないが鈍くて欠伸がでるぐらいだ。
「さっきの威勢はどこいったんだ?鈍くて欠伸がでるぞ~」
欠伸をして菱田を挑発する。
「ナメるなよ!」
さっきよりスピードがあがりラッシュもいくらかマシになるが俺からすれば対して変わらん、昔の恨みもあるし生かさず殺さずでいたぶるか。
「遅い!」
菱田の肩に指二本で軽い衝撃を与える。
「うっ……」
菱田は間合いをとり離れる。
「今の武器握ってたらお前の首は間違いなく飛んでたぞ~」
菱田も流石にそれを理解したのか表情が変わる。
「これならどうだ!」
菱田は剣技を習得しているようで剣技の構えにはいる。
「剣技:烈!」
これは剣士系統の職業の者が覚えることができる剣技だ。
俺は前世時この世界に来る前ランスロット先生や図書館に古今東西の剣術を教えてもらっているから剣技はあまり使わないがこの世界では剣士系統の職業であれば剣技を習得でき一度習得すればゲームのように使いこなすことができる。
「おらぁぁぁ!」
うん……凄みだけは伝わるが鈍い。
真正面に行きこの剣技を指二本で受け止める。
「なっ……」
菱田は唖然とした表情だ。
無理もないか……自分の大技が真向で、しかも指二本で止められたら誰だってそんな表情になるな。
「これがお前の本気か?」
「ぐっ……そんなばかな……」
菱田は離れようとするが受け止めた剣は離さない。
「離れない……離せ!」
「お前が離すんだな~」
指二本で抑えた状態からその二本指で剣を引っ張り奪い取る。
「がら空き~」
奪い取った隙にもう片方の腕で菱田の溝に一発打ち込むと十メートルほど吹き飛んだ。
「ぐはっ……」
菱田は倒れたまま起き上がらない。
「相手の力も見極められず闇雲に突っ込んでこの様とは……白金ランクの冒険者なら俺のオーラを感じ取ってそんなナメた戦いかたはしないだろうな」
菱田を見下すような口調で言う、この間の仕返しだ。
「くそが……くそっ……」
菱田は悔しそうな表情をしながらも起き上がれずただひたすら俺を睨みつける。
こいつはプライドが高いから今コケにされた怒りや勝てないことの悔しさと圧倒的な差からくる絶望感等が頭の中ででぐちゃぐちゃに絡み合い脳内のエントロピーが増大しているだろう。
「縮地」
「き、消えた!?」
嶋田は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情だ。
そんな一瞬の間に木幡の間合いに近づく、よそ見はいかんな。
「戦闘中だぞ?」
「くっ……」
驚いた木幡はとっさにカウンターシールドの異能を発動する、待ってました~
「このシールドが俺の前で役にたつのかな~」
「何!?」
指二本でそのシールドめがけて攻撃するとシールドは無惨にも破壊され指は木幡の顔の前で止める。
「なっ……」
木幡も何が起きたのかわからないのかさっきの嶋田と同じような表情だ。
「戦場なら一発アウトだな、お前さんのシールドを簡単に貫通する俺の指の攻撃は今止めなければ脳みそに届いて貫通しているよ」
木幡はその場で崩れ落ちる、まぁわかっていたが今の俺なら当然だ。
これが神山周平の姿であればもっといい気分だったのだろうな、木幡はともかく菱田はもっと精神をズタボロにしてやっても良かったものだが月島と杉原の目をあるから自重しないとな。
「これでも勝つつもりなら大したものだな~」
挑発気味に言うと嶋田は悔しそうな表情を浮かべた、今二人が手も足もでず瞬殺されたことで認識を改めたのだろう。
月島と杉原は予想通りといった感じの表情だ。
戯れはまだ続きます。




