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美里との密会

正体の隠した周平と美里のお食事会です。

 武具屋から王宮へ帰る前にたくさんの露店がある通りを寄りビアーのジュースを購入した、やはりこいつは高くても格別なのだ。


 「この味最高やな~」


 甘くてスッキリする至高の味、地球のフルーツを遥かに凌駕している。

 露店を通り過ぎ建物が並ぶ通りを歩くと殺気を感じた。


 「バレてるぞ」

 

 俺が一言言うと後ろから女性が声をかけて来る。


 「あら、流石はシュウね」

 「エミリアには隠し通せないか~」

 「仲間ですもの~」


 思わぬ所で久しぶりの再会となった、バチバチとたぎるような彼女の殺気も感じたのも随分と久しぶりだったが忘れるわけがない。

 その攻撃的な殺気は戦場で人々に恐怖を与え、彼女と対面した者はその容姿に惹き付けられ恐怖と誘惑に葛藤する。


 「九兵衛さんから話は聞いているよ、騎士団長脅迫しながら隣国で防衛線を貼っているんだって?」

 「ちょっとそれ言い方!ふふっ、まったくシュウは変わらないわね」


 エミリアは苦笑する、それは同意見だ。


 「ははっ、それはお前もだろ、それでここにいるのはどうしてだい?」

 「タピットの奴が正式に騎士団長を引き継ぐからよ、用だけ済ましたらジャジルに戻ろうと思ったらシュウのオーラ感じた上に凛真とも再開したの」


 おっ、凛真の奴もいるのか、それは都合がいい。


 「凛真もいるのか!探してたし丁度いい」

 「どっかふらつきに行ったから後日三人で食事でもしましょう、私も彼もあなたとここで合流しようと思ってたの」

 「そうか、もう少ししたら立花も来るしここでの仕事を終えたらギャラントプルームに帰還する予定だよ」


 これで残りは五人になるのか、凛真が戦力として加わるのは大きい。


 「実や九十九やリオンさんとも再開したいわね、それで立花とはどうなの?」

 「ぼちぼちだよ、記憶も戻ってきてるしな」

 「最近やっと寝たって聞いたし今のシュウはワイルドさに欠けているわね」


 それを言われ心に突き刺さる。


 「ぐっ……情報が早いな、というか元々そんなワイルドじゃないわ!」

 「そんなことはないわ、私が先生であなたと立花が生徒だった頃は斜に構えて尖ってたし~」


 そうだった、ここに来る前からの付き合いだったのを忘れてた。


 「確か、世界の支配者になる為にはどうすればいいですかなんて質問してきたわね。その時のシュウの顔ときたらふふっ……」


 エミリアは苦笑しながら言う。


 「や、やめてくれ~若気の至りってやつだよ、ははっ~」

 「今も充分若いじゃない~でも立花には頭が上がらないのは変わらないみたいね」


 エミリアはクスクスと笑う。


 「まぁな……それは一生かかっても変わらんよ……」


 過去の話のはやめてださい……


 「色々話したいけど私も行くところがあるし明後日あたりの夜どうかしら?」

 「空いてるよ」

 「オーケー、ここいらのバーにいる私と凛真を見つけて」

 「了解~」



 ◇



 王宮へと帰還し杉原に声をかける、当然今の俺は神山周平でなくシャーガー・ヒンドスタンだ。


 「シャーガーさん!」

 「よっ、この後空いているかい?」

 「はい、今から行きますか?」

 

 杉原は二つ返事で答える。


 「オーケー、お店はどうする?」

 「あまりクラスメイトが来ない穴場の店を知っているのでそこで大丈夫ですか?」


 どうやら他のクラスメイトを警戒しているようだな、こっちとしても都合がいい。


 「大丈夫だよ、もう一人の子は来るのかい?」

 「雪は先約があるんです……昼はクラスメイト同士の交流会で雪はその主催メンバーなんです……」


 交流会か、ということは嶋田もその主催メンバーだろうな。


 「オーケー、まぁ念のために言うが一応王国に招かれている身だし変な真似はしないからそこは安心してくれ」


 そう言うと杉原がクスクスと笑う。


 「大丈夫ですよ、それも知っていますから」


 杉原に連れられ向かった店はデカい通りから少し外れた細い路地にあるお店だ、聞くと通な人しか通わない常連客の多い店のようで密かに人気だとか。


 「何頼みますか?」

 「ファーガス草七種のサラダとアースドラゴンの肩ロース、じゃじゃ馬鳥のスープで、お金は俺が持つよ」


 どれも高級食材というわけではないが食べやすく味も悪くない、香辛料が不足しているのは残念だがじゃじゃ馬鳥のスープは普通に美味しい。

 当然レディー出させては俺の名が廃る。


 「いいんですか?ならお言葉に甘えさせてもらいますね。というかシャーガーさんもいい線いきますね」


 美味しいものというか地球人の好むものはだいたい似る、たぶん杉原も大味のものは避けて注文するだろう。


 「杉原は何を頼むんだ?」

 「私もシャーガーさんと一緒かな、それと美里でいいですよ」


 確か杉原は男には名前で呼ばせてなかった気が……


 「そうか、じゃあ美里と呼ぶよ」

 「うん、男子連中はみんな名字で呼ぶから」

 「名前で呼ばせないのか?」

 「なんかクラスの男子に名前で呼ばれるの嫌だったんですよ、名前で呼ばれたもいいなって思う友達が一人いたんですけどその子は行方不明ですし……」


 暗い表情を見せる、それ俺の事じゃん。

 俺は立花以外は基本苗字で呼んでいたからな~陣みたいに名前で呼べばよかったかな。


 「行方不明とは?」

 「一緒にこの世界に来たんですけど迷宮で事故があって行方不明なんです……」


 杉原のこの顔を見ると罪悪感が俺を襲うな……


 「ふむ、でも迷宮で行方不明になったという事は最悪……」


 あえて言ってみた、杉原や月島が俺の生存を信じているのかどうか聞きたい。


 「いや、生存は確信しています、というか迷宮を抜け出したのは間違いないので」

 「どういうことだ?」


 どうやら俺の生存を確信しているようだな。


 「私の親友の雪はその子と勇者カードというもので通じていたのです、なので三百層攻略を終えた時点で彼が死んでいればカードの反応が迷宮にあるはずですがなかったんですよ」

 「なるほど、確かに攻略の間に反応がなければそう言う事になるな」


 俺が落ちたのは深層だが深層の存在を知らないおかげで迷宮を抜け出したことを確信したのか。


 「だから魔大陸遠征もその子探しに行くのとファラリス連邦にいる友達会いに行く為にするんです」

 「実際の遠征となれば人を殺めるかもしれないからな」


 杉原や月島にそんなことをしてほしくはないがな。


 「はい、まだその覚悟がありませんので……」


 自信なさげに言う、人殺しなんて日本に住んでた女子高生には難易度が高い。


 「もし何か困ったらギャラントプルームに向かうといい、お前らと似たような風貌の男女をギャラントプルームの冒険者ギルドで見かけたからな」

 「男女?」

 「ああ、何と言ったかな?確か周平と立花と呼び合っていたよ、確か二人とも冒険者だったと思うぞ」


 もしこの二人が俺の生存を希望に思っているなら迷宮の深層のことを知っても俺の生存を確信づけられるようにはしておかないと。


 「その話詳しく聞かせてください!」


 杉原は血相を変えて言う。


 「まさかその二人は召喚された勇者なのか?」

 「片方はそうです、私と雪の大事な友達です」


 今のちゃんと大事な友達と言ってくれる杉原には感動を覚える。


 「そうか、生存は確定のようだな、もう一人も美里みたいな地球人という感じがしたな」

 「女の方はおそらくその周平君が言ってた失踪した幼馴染……そうかこの世界に来ていたのか……」

 

 杉原の表情は勝利を得たかのように笑みがこぼれている。


 「確かギャラントプルームを拠点にすると言っていたような気がするよ、行けば会えるかもしれないな」

 「ギャラントプルームの行き方を聞いてもいいですか?」


 そんな杉原の表情は喜色の表情があふれ期待に満ちているようにも見えた。

 行き方を教えたが教えたのはフェアーウィンの街からコジーンに行きそこからファウンドに入りラグーサの大森林を通って行く方法だ。

 俺の使ったアルマンゾールからサガス山地に入りアホヌーラ山脈を通ってギャラントプルームに入るやり方は月島と二人で行くとなると難易度が高いからだ。 


 「となるとファウンドまでは一緒に行きそこから分かれていく必要があるか……」


 何やら考えている様子だ。


 「たしか遠征はファウンドから船でファラリス連邦の港街ミゴリに行きそこから連邦の首都ファラモンドで向こうの勇者と合流だったよな?」

 「はい、ただ私と雪はギャラントプルームに何としても行くつもりなのでそこから別ルートですね」


 どうやらもう杉原の中では確定しているようだ。


 「脱走か……土地勘があれば造作もないと思うが……」

 「そうですね……そこから上手くラグーサの森林に周りの目を掻い潜っていけるかどうかですね……」


 ここは協力してやるべきだな。


 「ファウンドのギルド長に声をかけておくよ、だからファウンドについたら冒険者ギルドを頼るといい」

 「本当ですか!」


 二人が自らギャラントプルームまで来てくれたら好都合だ。


 「ああ、大事ななんだろそいつのこと?」

 「はい、出会った時から失踪した幼馴染が大好きでどこか危なかっしい頼りがいのあの人だったんですよ、でもこの世界に来てから一人だけ能力が与えられず嫌な思いして危険な目にもあって……」


 杉原の目が潤んでいる。


 「でもそんな彼が生きてて大好きな幼馴染と再会してたなんてわかったら嬉しいです!教えてくれてありがとうございます!」


 目が潤みながらも杉原の目は心底嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 こんなん聞かされたら俺まで泣きそうだよ……


 「でも美里はそいつのこと好きじゃなかったのか?」


 良く冗談交じりなアプローチを受けていたのですごい気になってました。


 「う~ん、周平君が彼氏なら文句なしでしたけど最初から私も雪も眼中になかったんですよね~その幼馴染が一番というか」


 そういえばそういう感じだったな、今思うとどっちかと付き合ってたら今頃修羅場迎えてたしよかったな……


 「ははっ、そいつも美里や月島を前にして失踪した女が一番とか女々しい奴だな」


 自分で言っちゃった、これ杉原に正体さらした時に絶対イジられるな。


 「それが周平君のいいところなんですよ、シャーガーさんも周平君と雰囲気似てますよね」


 まぁ本人ですから当然ですな。


 「そうなんだ、自分と似ている人間なんて会ったことないからな~」

 

 自分で言ってて恥ずかしい、別の話題にシフトしよう。


 「似てるんでぜひ会ってみてください!」

 「ははっ、会えたらな。話は変わるがお前達勇者のことなんだが……」


 これは杉原に話したかったことだが戸山達の一件についてだ、ああいう風に恐喝行為を横行させるわけにはいかないからな。

 話すと杉原は深刻な顔になる。


 「少し耳に入ってたけどシャーガーさんの言う通り王都だけでなく遠征先でもそういうのが横行しないのようにする必要がありますね」

 「冒険者の影響力が強いような街でそんなことをすれば冒険者ギルドも黙っていないと思うしメンバーとしてはそういう無駄な衝突は避けたいものでな」


 一人がやれば他の奴も同列に見られるからな、杉原や月島が風評被害を受けるのは避けてやりたい。


 「そうですね、それはクラスメイトを交えてみんなにしっかり言っておきますね!」

 「ああ、よろしく頼む」


 何だかんだで数時間話してしまった、正体を隠しているとはいえ久しぶりに杉原とこんなに話せて嬉しかったのだろう。


 「今度は雪と交えて三人で行きましょう!奥さん連れて来て四人でもいいですね」

 「ああ、そうだな」


 一応嫁がいるということは話しておいた、間違いがあっては立花が発狂してしまうからな。


 「くれぐれも今日の話はご内密に」

 「ああ、わかってるよ」


 途中で脱走するなんて話が王様の耳に入ればそれが叶わなくなるからだ。


これとは別に短編書こうと思ってるのでアップしたら感想お願いします。

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