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戦いへの迷い

そろそろ主人公もだします。

 クラス会議も終わりいよいよ遠征かと思いきやファラリス連邦内での問題が発生したらしく遠征が延期になる報告が入りしばらく王都での待機が言い渡された。


 「まったくいざ遠征って時に延期とか勘弁して欲しいわよね……」


 美里ちゃんは不機嫌そうな表情だ、無理もないが。


 「まぁまぁ美里ちゃん」


 私も内心ホッとしてるような残念なようなそんなよくわからない感じだ。


 「このイライラを解消しにちょっとジョギングしてくる」

 「ははっ、了解~」


 美里ちゃんが部屋から出て行ったので私も散歩することにした。


 「ここも見慣れた風景になったな~」


 城をでて見慣れた街を歩く、最近では街の人も挨拶してくれるようになった。


 「こんな平和な所で過ごしていて戦いなんかできるのだろうか……」


 戦争となれば人を殺めなくてはいけない可能性もでてくる、果たしてそんなことが私にできるのだろうか……


 「覚悟を決めないといけないな……」


 王都の外れの方にある眺めのいい丘は私のお気にいるの場所だ、ここで周平君、陣君、美里ちゃんの四人でのんびりしたいものだ。


 「そんな日は果たして来るのか……」


 私は少し憂鬱になる、この先のことを考えたら不安だ……


 「随分と暗い表情だな」

 「わ、私ですか?」


 丘で座っている私に突然話しかけて来たのは見知らぬ男の人だ、黒い髪に金のメッシュがかかっておりヴィジュアル系バンドの人を思い浮かべる。


 「迷っているな……不安と焦り、そして恐怖か」

 「わかるんですか?」


 その男の人は私の目を見て私の心を見透かしたように思えた。


 「目を見ればだいたいのことはわかるさ、お前さんは噂に聞く召喚された勇者の一人か?」

 「はい、この後の魔大陸遠征があるんですが私に戦争に参加する度胸などないので……」

 「そうだな、お前からは血の匂いもしない。戦争は人を殺さなければ勝てない、今のお前には無理だろう」


 この人の発言からしてこの人が人を殺めたことがあるのだと察した、好奇心から勇者カードを使い相手のステータスを覗き見た。


 ?????

種族:???(?????)

レベルあ9□

職業:あ◇●▼て■

攻撃:じ*?@□

防御:け*●▼?

魔法攻撃:@*!れ◆

魔法防御:ふ●●◇△

素早さ:●く@◇△

魔力:□あ@▼◆

固有スキル:?????

異能:?????

称号:あ*@□●


 これはいったい……


 「覗き見はあまり関心しないぞ」


 どうやらこの男の人には見抜かれていた。


 「ごめんなさい、あなたを見て只者じゃないって思ったからつい……」

 「まぁわからなくもないさ、どうせ私のステータスは見ることはできないはずだからな」


 男はドヤ顔で私に言う。


 「それはあなたの能力ですか?」

 「いいや、これは私のスキルの加護の一端にすぎんよ、お前程度の能力では見ることはかなわん」


 私はそんなに弱くないと思うんだけどな……


 「ふふっ、あなたに少し興味がでました。私は月島雪、あなたは?」

 「私はそうだな……シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーとでも言っておこうか」

 「随分と長い名前ですね、シンさんと呼ばせてください」

 「ああ、私は雪と呼ぶことにするよ」


 この人なら私の知らないことを教えてくれるかもしれない、シンさんから放たれるオーラからしてこの人は強いと確信した。


 「人を初めて殺した時の感覚というのはどういう感じでしたか?」

 「人を初めて殺した時か……凄い昔であまり覚えていないが……」


 シンさんはあまり記憶がないらしい、実年齢も気になるところだ。


 「思い出した、私は昔猛吹雪の中で大勢の追跡を逃れるために逃げていた。それで一人俺にしつこく食い下がる奴がいたから殺した、俺も必死でその時どんな感情抱いていたかまでは覚えていないがな」


 シンさんはその時のことを思い出し懐かしそうに語る。


 「そうだったんですね、私も戦場で必死になれれば……」

 「うん?雪は何か勘違いをしているな、なぜやりたくもないことをわざわざするんだ?」

 「えっ?」

 「私は自らを守る為に初めて人を殺したし最愛の人を守る為に大都市一つ氷付けにしたりしたがそれは自分がそうしたいと願ったからだ。だからわざわざやりたくもない人殺しをして身を汚す必要があるのか?」


 シンさんが言う事は最もだ、私は何故こんなことで悩んでいるの?

 そもそも何故私は戦おうとしているんだ?


 「そもそも現時点で覚悟も信念もないに等しい雪が戦争なんざもってのほかだな、雪は平和な星の出身なのだな」

 「そうですね、戦争のない平和な世界から来たので」


 毎日がのどかで平和に過ごした世界……


 「平和な世界か……まぁいい、まず一度考えて自分は何の為に戦うのか考え行動するんだ、この国に従うだけでは身を滅ぼすぞ」

 「はい、今一度考えようと思います」

 「ああ、それがいいさ。さて長話が過ぎたな私はそろそろ行くよ、また機会があったら会おう」


 シンさんは立ち上がり丘を後にする。


 「今日はわざわざありがとうございます、また話を聞いてください」


 「ああ、しばらく王都にいるから見かけたら話しかけてくれ」


 シンさんと別れた私は丘をあとにした、少し周平君っぽいところがあり話してて懐かしい気分になった。


 「何の為に戦うか……」


 私が遠征をする理由は周平君や陣君と再会するためにここをでて外の世界で情報収集をしたいからだ、元の世界に帰りたいかと言われれば帰りたくないわけでもないが現時点での最優先事項出ないのも確かだ。


 「地球に帰ってもあの家じゃね……」


 あの監獄にまた帰るのは私には苦痛でしかないのだ。


 「はぁ~」

 「何ぶつぶつ言ってんの雪ちん」

 「ひゃぁ……」


 城に向かい歩いていると後ろからいきなり声をかけられ驚く。


 「びっくりさせないでよ直ちゃん~」


 後ろから話しかけて来たのは直ちゃんだ。


 「驚かせてごめんね~しょぼくれてる雪ちん見かけたからさ~」

 「そうだったんだ、直ちゃんも散歩?」

 「そうだよ、毎日朝は散歩してるんだ~さっき走ってる美里っちとも会ったよ」


 私はクラスでは美里ちゃんと周平君と話す事が多かったが二人の次に話すのがこの須貝直美ちゃんだ。


 「こっちきてから直ちゃんとあんまり話してなかったね」


 周平君がいなくなってからは私は美里ちゃんにくっついて嶋田君と木幡君でパーティを組むことが多かったからだ。


 「雪ちんも色々あったからね、神山君のこととかね~」

 「うん、私があの時助けてあげられればこんな風に悩まなかったんだと思うんだけどね……」


 玲奈先生が助けに行ったあの時私も行く勇気があれば……


 「神山君ね……今だから雪ちんに言えるけど私は凄い苦手だったなー」

 「直ちゃん?」


 直ちゃんは誰とでもフレンドリーに気さくに話していたイメージだけど周平君が苦手だったなんて意外だ。


 「神山君ってどこか得体のしれない感じがあってさ~少し苦手だったんだ」

 「そうだったんだ、周平君はあんな感じだったけど凄い優しいし頼りになるよ」


 周平君は凄く友達想いで私や陣君や美里ちゃんがピンチの時はいつも手を差し伸べてくれた。


 「それは雪ちんや美里っちや宗田君だからじゃないかな~」

 「直ちゃん?」

 「私ね神山君と喋ると何でも見透かされるようで怖かったんだ、クラスで外された後も常に平然と変わらず学校に来るあの姿が恐ろしかった」


 周平君は変わらず登校していた、私や美里ちゃんに愚痴をこぼすようなことはあったものの変わらなかった。


 「周平君は強いから」

 「知ってるよ、私光一と幼馴染でさ。神山君の話をたまに聞いてたんだ」


 それは初耳だ。


 「そうだったんだね、尾形君も周平君と仲が良かったらしいからね」

 「だからこそ私は……」


 直ちゃんは一瞬暗い表情を見せる。


 「直ちゃん?」

 「ううん、何でもない」

 

 直ちゃんはすぐにいつもの表情に戻る、今の表情は何だったのだろう。


 「そういえば尾形君が出て行った時何か言っていたの?」

 「ううん、それが光一の奴私に無言でいなくなっちゃってさ~再開したらビンタ食らわせないとだね~」


 尾形君がいなくなった時の直ちゃんの落胆ぶりは酷かった、その時に比べたら元気が出たようだ。


 「尾形君も心配だね……」

 「うん、だけどあいつは生活力高いからきっと大丈夫、それより雪ちん今気になる男の子いないの~最近よく嶋田君達と一緒にいるけどさ~」


 直ちゃんはニヤニヤしながら聞いてくる。


 「今はまだそんな気分になれないかな、陣君には会いたいけどね」

 「宗田君ね、仲良かったもんね~」


 私が心を許す三人の一人だ。


 「うん、四人で仲良かったから早く再開したいんだよね~」

 「合流すれば再会できるよ、雪ちんも早く新しい男見つけるんだぞ~」

 「ははっ、そのうちね~」


 そもそも私は周平君にだって恋愛感情があったかどうか疑問だ、ただ私は今誰かにそういう感情を抱いている余裕がない。


 

 ◇



 直ちゃんと一緒に城へ帰還をすると美里ちゃんやその他の生徒が中庭に集まっていた。

 

 「おかえり~直ちゃんも一緒だったのね」

 「たまたま会ったんだ」

 「ごめんね~美里っち、雪ちん無断で借りちゃった~」

 

 直ちゃんは冗談交じり言う。


 「大丈夫よ、ただうちの雪は高いから男子共はよく覚えておきなさい」

 「ちょっと美里ちゃん何言ってるの~」


 周りがそれを聞いて笑う。


 「ははっ、二人が戻ってきたことだしこれからは今後に向けて一対一の決闘なんかもしていきたいななんて話をしていたんだが二人はどうかな?」


 嶋田君が言う。


 「決闘?」

 「うん、これからの遠征に向けてみんなで強くならないといけないからね」

 「タピットさんの話では雑兵ならなんてことなく倒せるが指揮官クラスには俺達以上のもいると言っていたからな、浩二と昨晩話し合って決めたんだ」


 木幡君の言う通り私達が勝てない相手も出てくる、同レベルかそれ以上の力を持つ者との決闘をすれば更なるパワーアップが見込めるわね。


 「そうなんだ、みんなは賛成の方向なの?」

 「ああ、一応やりたい人だけの方針だけど遠征組はみんなオーケーだとさ」

 「なら私は賛成よ、直ちゃんは?」

 「私も参加するよ~強くなって損はないからね」

 「なら決まりだね、早速午後からやろう」


 シンさんが言った何のために遠征して戦うのか……それは周平君や陣君との再会だ、その為に私は遠征するんだ。

 私は自分のそう言い聞かせた。


 

 ◇



 ここは王の間、王であるオロソにタピットが謁見していた。


 「首尾はどうだタピットよ」

 「はい、みな遠征に向けて士気を高めています、魔王軍とも戦えるでしょう」

 「うむ、ならよい」


 オロソは上機嫌に笑う。


 「最初は遠征を渋るかと思って色々対策を考えていたがお前の指導が良かったようだな、褒めて使わすぞ」

 「はっ、勿体ないお言葉を」


 タピットはこの時ホッとしていた、自分が勇者に対して助言したことは反逆罪に繋がるからだ。

 嶋田達もまたパーティの時の話は全員には言っていない。


 「では引き続き頼むぞ、それとお前もいい加減パスティノの正式に後を継ぐのじゃ。勇者は強くなっているしお前も早くあれをつけて覚醒してくれ。わが王国騎士団が舐められてしまう」


 タピットはあくまで団長代理であり正式な団長ではない、団長の証を引き継げば力を得ることができるが……


 「わかっておる、パスティノが死に若くして後継者となった当時のお主にはまだ荷が重かったと思い私も気を使った、だが戦も始まるし今が次期だと思うし私としては引き継いでほしい……これは命令ではなく私の一生のお願いとして頼みたい」

 

 王はなぜ命令ではなくこんな風に言ったのか……それはタピットという男が性格を熟知しているからだ。

 義に厚く騎士団長を重く見てるタピットはそんなことを強要するぐらいなら自ら牢屋に入るからだ。


 「わかりました……王からの一生のお願いとなれば断るわけにはいかないでしょう」

 「すまんな、感謝の意を示す」

 「ありがたきお言葉です」


 タピットは騎士団長を受け継ぐその時こそ決断の時だと考えていた、エミリアに狙われるリスクも考えないといけないからだ。


 「では下がってよいぞ」

 「はっ」


 タピットは王の間を後にした。


 「それであれはしっかり機能しているのだな?」

 「はい、隷属の腕輪は全員付けていますしばっちりですぞ」


 宰相のアーノルド・レコンダイトが言う。


 「うむ、なら問題ないな。いざという時はあれで従わせればよい、タピットには告げるでないぞ、奴はそういうのを嫌がる」

 「わかっております、それと地下のあれですが……」

 

 それを聞いたオロソは顔を顰める。

 

 「初代勇者が消えた理由がわかったのか?」


 オロソは初代勇者が王国を憎んでいることも知っておりもしここを襲ったらと少し恐怖を感じていた。


 「明確にはわかりませんがあそこからの気づかれず脱出するのは不可能、開けられた形跡もない。つまりあのバリアに仕掛けがあったというべきでしょう」


 この事件は王国の上層部でも話題になり調査をしたが結局原因はわからず迷宮入りし推測でものをいうしかないお手上げ状態だった。


 「どういうことじゃ?」

 「あのバリアはあのハマジクの檻の中でも機能していた、つまりあのバリアはあれが目覚めたと同時に転移装置の役割も果たしていたと考えるのが妥当でしょう」


 実際は立花が中に入って救出したがここにいる者は誰もそんなことはわからない。


 「なるほど、それであれは目覚めたのか?」

 「それはわかりませんが目覚めていると考えるのが妥当でしょう、ただもし全快ならきっとここを襲うはず、それができない理由があるのかもしれませぬ」

 「力が戻っていない可能性もあるな、このことは教団に伝えてあるな?」

 「はい、見つけたら始末するように言っておりますので」

 「頼むぞい」


 ファーガス王国はファラリス連邦よりもダーレー教団に通じておりオロソは勇者の遠征時にそこから刺客を派遣し監視しようと考えていた。

 

 「ふふっ、すべては神の為に」


 オロソの不気味な笑い声が王の間に響いていた。

 


キャラを確立させるのは難しい……


50万アクセス達成しました~

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