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サラフィナの決意とコートマーシャルの街にて

しばらく主人公はだしません、次話の途中か次の次からクラスメイト視点に話を移します。

 「まったくあなたは何を道草食っているのかしら?」

 

 城へ帰還すると退屈していたサラフィナが不満を俺にぶつけてくる。


 「いや~すまんね」

 「まぁいいわ、ただザインタをあんな風にお姫様抱っこをして城へ戻るのはどうかと思いますわよ」


 まぁ確かに俺は色々目立つし周りの目につくような時間帯でやるのはよくないかもしれないな。


 「ああ、次からは気をつけるよ」


 なんとかサラフィナをなだめる。


 「シャーガー様は女の子のナンパが忙しかったのですよね~」


 その発言でサラフィナは再び不機嫌な表情になる。


 「ぶっ!な、何をいってやがる」


 ザインタはニヤっと笑いながらこちらを見る。

 野郎……しっかり最初から見てやがったな。


 「どういうことかしらシャーガー?奥方がいながら浮気ですの?」


 サラフィナは怒り口調で俺に言う。


 「ば、バカヤロー、浮気とか何を馬鹿なことことを……あれは勇者に絡まれていた女の子を助けてだな……」


 俺は必死に弁解する。

 なんでこんなに必死になっているのかわからないがとにかく弁解した。


 「シャーガー様、今度私にビアーのジュースを奢ってくれるなら私弁解してあげてもよろしいですよ~」


 ザインタはまたもニヤっと笑う。

 もしかしてビアーのジュース飲んだことないのか?

 あん時声かけてくれれば奢ったんだけどな~


 「ちっ、まあいい。今度奢ろう」


 するとザインタは喜色の表情を俺に向ける。

 不愛想なお前がそんな表情出せたんだなと少しびっくりだ。


 ザインタはサラフィナに詳細を話始めた。

 やはり絡まれているのを助けた所から俺を見ていたらしいな。

 ストーカーは犯罪というのを教える必要があるかもな。


 「なるほど……勇者達がそんなことをしていたのですね……」


 ザインタはそれに頷き、サラフィナは残念な表情だ。


 「ああいうことはよろしくないと思って止めたんだがな~」


 あんな小さな女の子から恐喝なんて俺許せんからな。


 「あなたは勇者召喚と魔大陸遠征は愚行と言っていましたわね」

 「ああ」


 勇者達は神の信託のもと魔王と戦い、それに関して俺達は邪魔をしようとは思わないがファラリス連邦のように他種族を奴隷化するようなら俺達は容赦しない。

 いずれ連邦は滅ぼすつもりだ。


 「私もあなたと同意見ですわ……そんなことをするよりもっと大事なことがありましてよ……」


 サラフィナはため息をつきながら言う。


 「大事なこと?」

 「もっと民のことを考え軍事以外のことにも力を入れるべきですわ、まだ整備が整ってない地域もたくさんありますのよ」


 サラフィナの言うように百年間もっとそっち方面に力をいれればもっといい国なったのにな。

 こちらとしても現在の体制を変えて新しい体制にして後ろにいるであろうダーレー教団を失墜させることさえできれば戦う必要がないからな。

 ただそれをなす為には武力は必要不可欠だろうが。


 「だったらサラフィナが変えればいい、自分の思う理想の国をつくればいいさ」

 「それができたら苦労しませんのよ……王族でなければ不敬罪になってもおかしくない私が王になれるわけがないわ……」


 サラフィナはもどかしそうに言う。

 どうやら前情報は間違いないようだし、これなら目的を果たせるな。

 サラフィナの王になりたいという気持ちは今垣間見ることができたからな。


 「ふふっ、確かに今は難しい……だがそれは不可能ではない!」


 俺は自信を持って言う。

 折れかけている王女の牙を再び蘇らせる必要があるからだ。


 「あなたには何が見えているのかしら?」


 サラフィナは懐疑的な目で俺を見る。


 「いずれこの国は滅ぶ、時期はそうだな……ファラリス連邦が解体した後にな」

 「それは人間側の敗北ということかしら?」


 サラフィナは厳しい表情に変わる。

 だがその瞳の奥底には衝動に駆られるかのようにギラギラしていた。


 「敗北とは少し違うかな、そもそも現魔王にそこまでの力はない」


 サラフィナは首を傾げる中、俺は話を続けた。


 「ナシュワン・クロールは王国に忠義をつくし過ぎていたことが仇となった、王国は奴が作った救いの手を百年かけて駄目にしたのさ」


 ナシュワンは百年前の戦争の時王国側の敗北が濃厚となった時和平を結び滅ぶはずの国は存続した。

 

 「何が言いたいのかしら?」

 「王になりたくないか?王としてこの国を守りたいと思わないか?」


 俺はサラフィナの心を駆り出すように問いかける。

 それに対しサラフィナは真っ直ぐな瞳で答える。


 「私は王になりたい!それで遠征なんか辞めさせてもっと他のことに力を注いであげたいわ!」

  

 これがサラフィナの出した答え。

 お前の答えはこの王国を存続させるだろう。


 「ふふっ、力を貸してやろう」


 俺は変装を解き神山周平としての姿を見せる。


 「あなたは……確か召喚された勇者の……」 


 ザインタは驚き口が開いたままだ。

 不愛想で顔面の筋肉が動かないザインタも今回はよく動かしてるな。


 「俺を知っているのか?」


 「と、当然です、こないだ迷宮で死んだとされる欠陥品神山周平……」


 欠陥品か……ある意味的を得ているな。


 「ふふっ、改めて自己紹介しようか。召喚された勇者の一人にして境界騎士団団長代理神山周平だ」

 「まさか……あなたがあの境界騎士団ですって……」


 サラフィナは驚きのあまり腰を抜かしちゃってるな。

 俺は再び変装しシャーガーへと戻る。


 「あの姿をまだ見せるわけにはいかなくてな、力を貸す条件の一つだ、二人も内緒にしておいてくれな」


 二人はコクンと頷く。


 「改めて今後の話をしようか」


 サラフィナはこの日から女王になるべく動き始めた。



 ◇


 

 ファラリス連邦へと潜入した立花は九兵衛と共に首都ファラモンドへ潜入しようとしていた。

 ギルド総長として連邦に掛け合った結果連邦内に入ることができたものの首都ファラモンドへ入ることだけは見送られてしまったのだ。


 馬車に乗りギャラントプルームからラグーサの大森林を東に向かって進むとファラリス連邦の国境にして旧獣人王国領であるコートマーシャルの街に入った。


 「はぁ~」


 私はため息をつく。


 「立花ちゃん顔色が優れないね~」


 隣で九兵衛さんが暢気な顔で言う。


 「周平も一緒だったらね……」


 少しの間とはいえ離れるのは辛いものがある。

 一緒にいるのがこの若作りをしたおっさんではテンションも上がらないのだ。


 「まぁまぁとっとと任務を終わらせて王都に戻ろうか」


 ここで一泊する予定だが首都まで三日から五日あればつくことができるだろう。


 「とりあえずどうする、飯でも食べるかい?」

 「そうね」


 二人で獣人族がウエイトレスをしている酒場に入った。


 「確かここは旧獣人族領よね?」

 「うん」


 九兵衛さんが複雑な表情になる。


 「そういえば獣人族の国が滅んだ時あなたは何をしていたのかしら?」


 反ダーレー教の象徴たる境界騎士団の一員として獣人族を助けなかったとは考えにくいが……


 「助けてやれなかったんだ……」

 

 九兵衛さんの表情は暗い。


 「どういうことかしら?巨人王たるあなたなら助けることなど造作もなかったのでは?」

 「理由を話そうか……」


 九兵衛さんは話始めた。


 獣人族の国であるダルシ国が滅んだのは三十年前、九兵衛さんはその時妖精の国に行きロードリオンと会見していたという。

 連邦は冒険者ギルドに邪魔をされないように九兵衛さんの留守を狙い侵攻し、確証はないがあわよくばギャラントプルームも征服しようとしていたとか。

 

 「俺もそれがわかりリオンとともにギャラントプルームに向かったんけど遅くてね……」


 歯がゆそうに言う。


 「なるほどね、ギャラントプルームは大丈夫だったの?」

 「レダ達を置いておいたからね~森林内に入ってきた奴は大虐殺さ」

 「そこは抜け目ないか……まぁそれがかえって仇になったわね」


 その時ギャラントプルームが侵略されていれば攻める大義名分ができたはず。


 「侵略されておけばよかったと考えたかもしれないけどもし侵略されてたら連邦領内においていた冒険者ギルド支部のメンバー全部が危険にさらされていたからね」

 「助ける道があったとしたら九兵衛さんやレダさんが変装して撃退する以外に道はなかったわけね」


 うまいことやられたわけだ、酒場で働く獣人族のウエイトレスはみな腕か首に隷属の輪を付けている。


 「連邦内にギルドを進出させていた時点で負けだったのさ、獣人族の中でも冒険者の身分であったものとその家族はなんとか奴隷にするのを防ぐことができたけど大半は奴隷さ……」

 

 九兵衛さんはお通夜顔だ。


 「ごめんなさい、あなたをそんな顔にするつもりはなかったの……」


 九兵衛さんだってそんな状況が歯がゆくて、それでも私達が来るのをずっと待っていたんだったわね。


 「いや、いいんだ。それももうすぐ終わるからね」


 九兵衛さんは果実酒をグッと飲み干す。


 「しかし美味しいね~ウエイトレスもかわいいしいいお店だ~」

 「そうね」


 するとウエイトレスが話しかけてくる。


 「あら、みない顔ね」

 「どうも」


 軽く会釈した。


 「あなたは?」

 「私はヴィエナ・エンペリーよ」


 ヴィエナと名乗るウエイトレスは短い銀髪の猫耳でなかなかのスタイルだ。


 「私は立花よ、そしてこちらは……」

 「女性の味方の九ちゃんで~す」


 いつの間にか随分飲んでるわね。


 「ふふっ、面白い殿方ですね」

 「そうかしら?私の夫の友達なんだけどどうにも女癖が悪くてね~」


 誤解されると腹が立つので予め言っておく。

 私の男じゃないのがわかったからかヴィエナは九兵衛さんに近づく。


 「ふふっ、駄目じゃないせっかくのイケメンが台無しよ~」

 「これは……いい匂い……九ちゃん吸い寄せられちゃう……」


 九兵衛さんはヴィエナの胸に触れようとする。

 

 「むぎゅっ」


 ヴィエナは九兵衛さんの顔をそのまま胸に押し当てる。


 「ふふっ、不思議な方ね」

 

 ヴィエナは顔を赤くしながら言う。


 「九ちゃん幸せ~」


 それを見た私はため息をつく、ザルちゃん連れてくればよかったわね。

 駄目男九ちゃんモードになったこの男は女からすると見るに絶えないのだ。

 だが気になるのは彼女が奴隷の腕輪とは別に着けている魔道具にあった。


 「入るぞ!」


 大きな音共に酒場に入って来たのは偉そうな男だった。

 すると客はみな席を立ち横に避け、店主はごまするかのように下手にでている。


 「二人ともここから離れて……あいつはこのコートマーシャルの領主であるマラケートよ」

 

 偉そうなデブ男は店主に向かって言う。


 「ここのウエイトレスなぜ我を見て逃げるのじゃ?」

 「これはこれはようこそマラケート様。滅相もございません、みな後ろの兵に驚いているだけです」


 店主は精一杯の営業スマイルで言う。


 「ふむ、そうか。では私も食事にするとしようかのう」


 マラケートはこちらを見ると私達の所まで来る。


 「おい、そこの二人、何故私が来たのに平然と座っておる?そこに座るからどけい!」

 「ひっく、席なら他が開いてるよ~ほら帰った帰った」


 九兵衛さんは酔っているからか状況を把握しておらずいつも通りの口調で言う。

 確かにどく理由なんてないものね、私もクスクスと笑う。


 「貴様、わしが誰だかわかってないようじゃのう……」


 マラケートは怒り心頭だ。


 「なぁに言ってんの~あ、そっか一緒に飲みたいんだな~」


 九兵衛さんはマラケートと肩を組み酒を無理やり飲ます。


 「うまいだろ~複数で飲むお酒は最高だね~」


 それを見た店主やウエイトレス、避けた客はみな目を点にして絶句している。

 怒りに耐えられなくなったマラケートは九兵衛さんの頭をもって無理やり机に押し付ける。


 「ぐふぇっ」

 「こ、こやつ死刑じゃ!わしにこんな無礼を働いて生きていられると思うなよ……」

 「ま、待ってください、この方々は旅の方でこの街のことをわかってないんです……だから勘弁してあげてください……」


 ヴィエナは頭を下げて言う。

 ヴィエナを見たマラケートは獣人族と分かりさらに激昂する。


 「なんだ、貴様愛玩具の分際で私に物申すと言うのか!」


 マラケートはヴィエナの髪の毛を掴み怒鳴る。


 「申し訳ございません……」

 「誰のおかげでここで働けていると思うっておるのじゃ!」

 

 ヴィエナは委縮し、周りの獣人族のウエイトレスも恐怖に怯えている様子だ。

 ここは思った以上に腐った街みたいね……


 「貴様達愛玩具の立場をもう一度わからせる必要があるのう、どれその胸をここでさらけ出して揉んでやろう……」

 「ひっ……助け……て」

 

 ヴィエナは涙目となり目を閉じる。

 マラケートがヴィエナの胸に手をかけようとした時だ。


 「ぐっ……いてっ……」

 「えっ?」


 九兵衛さんがマラケートの腕をつかみ止めた。

 どうやらスイッチが入ってくれたようだし害虫駆除ね。


1章の周平と立花の再会は活動報告にも書いたように大幅な改稿に向けて執筆中なのでもう少しお待ちください。

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