潜入
3章スタートです。
周平達は妖精の国での一件を解決しギャラントプルームへ一度戻った。
現在ファラリス連邦は内部で少し荒れておりそのせいかファーガス王国の勇者遠征も延期された状況となっている。
今後のことを考え一旦ばらける方針になり俺はファーガス王国への戻ることを決めた。
なぜ戻るかって?
俺がこの話をした時立花はクラスメイトとの再会するのではないかと聞いてきたし実に至っては、抜け駆けはずるいと言う始末だ。
俺はここ来てファーガス王国王都アスタルテにいた時間は短いがそのわずかながらの時間で聞けるだけの情報を収集したしその後も九兵衛さんを通してファーガス王国の情報は仕入れていた。
「戻ってきたか……」
ギャラントプルームに帰還してから数日して立花のゲートで王都アスタルテまでひとっとびだ。
「さて城へ向かいますかな~」
当然だが今俺は変装をして勇者カードは一時的に封印し、ギルドカードにも認識阻害の魔法をかけている。
そう、今の俺は神山周平でなくシャーガー・ヒンドスタンという白金ランクの冒険者だ。
九兵衛さんにファーガス王国に派遣されたということになっている。
すぐに許可が下りたのは向こうが前々から打診していたからに他ならないがなんにせよタイミングはよかったので僥倖と言えるだろう。
「懐かしいぜ~」
離れてもう3ヶ月ぐらい前になるのだ。
「しかし何をすればいいんだか……」
王国としては勇者達に外の世界のことを教えてほしいのと第1王女には個人的に色々教えるらしいのだが……
「一応あいつらとの絡みも避けられないということになるんだろうな~」
強くなって戻ってきたと言ってもやはり緊張してしまう。
ちょっと前は完全に興味を失っていたがどれぐらいのステータスは成長しているのかについてはとても興味の示すところだ。
城の前まで来て必要な書類を見せるとすぐ中へ案内された。
あの時と特に変わった様子はないようだ。
そのまま連れられ玉座の間に入り跪く。
「よい、頭を上げい」
玉座に座るオロソ・V・ファーガス6世がそういうと俺は頭を上げた。
ふん、久しぶりだな狸親父が。
そんなことを今口に出したら計画は台無しになるので抑える。
「お初にお目にかかります。私はシャーガー・ヒンドスタンと申します」
「うむ、話は聞いておる、冒険者ギルド所属の白金ランクの冒険者だな」
「はい、それで早速ですが私の仕事内容を聞かせてもらってもよろしいですかな?」
普段とは違う言葉使いには慣れないな。
別にこの男を前に緊張といったようなことは一切ないわけだがいつボロがでるかもわからんし注意せねばいかんな。
「うむ、お主にやってもらいたいのは我が愛娘の相手をしてほしい」
「相手ですか?」
「うむ、我が愛娘はちとオーリオール平原のようにじゃじゃ馬でのう……」
ファーガス王は頭を悩ませているのか複雑な表情だ。
「わかりました、他には?」
「時間があれば勇者達に外のことを教えてほしいがおそらくそんな時間はないと思う」
「はぁ」
はて、時間がないってのはどういうことだ?
「時間はあると思いますが……」
「まぁそうなんじゃが……」
この親父の歯切れが悪いとこを見るといわくつきということかもしれんな。
「いや、まぁお主もいずれわかる、これシャーガー殿を娘の元に案内せよ」
王様との謁見が終わり第1王女の元へ案内される。
「なぁ王様の言っていることはどういうことなんだ?」
「はい……なんというか王女はとても頭が良いのです……それで何人もの教育係りを追い返していまして……」
そんな物件冒険者に押し付けんなよ。
そもそも冒険者って脳筋の割合の方が多いしあの親父も何考えて冒険者雇ったんだ?
「なんで冒険者なんか雇ったんだ?」
「強い冒険者なら姫様も大人しくなるかもということでして……」
「ああ、なるほど。それで随分と歩いているがまだか?」
城の裏方まで歩くと塔のようなものがあった。
そういえばこれ見たことあるな。
一体のなんの部屋だなんて疑問だったがお姫様のエリアなわけだ。
「この塔は姫の領域ですので何卒よろしくお願いします」
俺を案内したこの男も俺にすがるような目で話しかけてくる。
さてお手並み拝見というといくか。
「では私はここで」
「ほい」
俺を案内した男は逃げるように離れていった。
なんかトラウマでもあるのか……
とりあえず塔の中に足を踏み入れると金髪に長い髪をロールしたお姫様が話しかけてくる。
「こんにちはあなたが新しい教育係のようですね」
「ああ、シャーガー・ヒンドスタンだ、あんたは?」
「私はサラフィナ・R・ファーガス、この国の第1王女よ」
確かに見た所綺麗な女性ではあるがキツそうな印象を見受けられるな。
金髪つり目巨乳か……まぁ目の保養にはなるか。
「何をジロジロ見ているのかしら?」
「ああ、つい見惚れてしまってな」
「あらそう、でも淑女の体をジッと見るものではないわ」
「ははっ、体は正直なんでな、まぁ安心してくれ俺には奥さんがいるからな」
「随分と若そうなのに流石は白金ランクってとこね」
まぁ正式に結婚していたのは前世での話だし俺は白金ではなく黒ランクだがな。
変装しているので見かけは本来の俺ではないし髪も金髪で年齢も24、5ぐらいで作っている。
「さて、あなたが私の教育係に相応しいかどうか試させてもらおうかしら」
「試す?」
「ええ、ではまず質問1、あなたは何教徒かしら?」
「無宗教だ」
「嫌いな宗教は?」
「ダーレー教」
質問の意図が読めんが俺は冒険者だし特に嘘をつくような理由はない。
「では質問2勇者召喚についてはどう考えているかしら?」
「愚行、ただ侵略戦争ってなら勝てば正義だな」
「質問3ねもし戦争になってどっちかにつかないといけないとしたらどっち側につくかしら?」
「魔族側だな、人側に肩入れする理由がない」
まぁ別に魔族の肩入れをするわけではないが偽神どもは人側だから当然そういう選択になる。
「ふふふっ、はっはっはっ」
突然サラフィナは笑い出しお腹を抑えている。
「いきなりどうした?」
「ははっ、あなた合格だわ、私の教育係に任命するわ」
「今の質問でか?本音で答えたが明らかに敵対心を煽ったような気がするが?」
「だって、私反ダーレー教だし」
おいおい、ファーガスの王女がそれでいいのか?
さすがに少しどうかと思うぞ。
「それは周りに言わないほうが……」
「ええ、言ってないわ。ただ無宗教は許されるから無宗教よ」
「なるほど、でもあんた王女だろ?そんなこと許されるのか?」
「だから私こうやってつま弾きにあっているわ、だから跡継ぎは私の弟の第2王子だし私は20歳になっても相手が見つからないわ」
「嘘でもダーレー教にしとかないときつくないか?」
さすがにせっかく綺麗だし王女で相手いないとか流石に駄目だろ。
「父にも言われたけどそこまでして自分を曲げたくないわ、ダーレー教徒の貴族と結婚とか無理!」
「左様ですかい……まぁ俺には関係ない話だ、それで俺は何をすればいい?」
「私の相手をしなさい、私これでも頭はいいほうだし教育なんて自分の知らないこと以外は受ける必要がないから」
「了解、それであんた何でダーレー教が嫌いなんだ?」
「嘘つき宗教じゃない?境界騎士団に助けてもらっといて境界騎士団を反逆者なんて大っぴらによく言えたものだと思わない?」
なるほどな、馬鹿ではないし着眼点も悪くはないようだな。
「ああ、でもそういうもんだろ、この国を滅ぼさなかった騎士団のミスだろうな」
俺や実が離脱していなければたぶんこの国は滅びていただろうな。
それがなければエミリアの奴がナシュワンと交渉する事もなかっただろうし。
「何故みんなわからないのかしらね?あなたの意見を聞かせてくれないかしら?」
「100年にわたる刷り込み教育の賜物だな、人類側の大半というか国家がダーレー教を信仰している現状そういうものとして頭に入っている物を簡単には引き離せないものさ」
生まれた時からそういうものだと教育されたものを人はなぜそうなのかなんて考えることはない。
1+1が何故2なのかなんて大半の人間が証明することはできないからな。
「でも私はそうはなりませんでしたわ」
「この国でそんなことを言えば生きてはいけない以上そういうことを知ろうとするなんて考えない。だがあんたは国王の娘だ、それと上層部や頭のいい人間はそういうことに気づいているからな」
「ふむふむ、あなたは退屈しなそうですわね」
サラフィナは満足気に言う。
さてこっちの方は思いのほかうまく事を運ぶことができそうだな。
問題はもう片方か……
「一応召喚された勇者達も見れたら見てくれと言われているんだが見てきてもいいか?」
「勇者?ああ、あいつらね。私優先と言われているはずよ」
「ああ、だが俺も冒険者として実力の程を知りたくてな」
「そうね、私を退屈させないならそっちのほうに時間をさけてもいいわ」
「はいよ、とりあえずちょっくら散歩してくる」
俺は一度サラフィナと別れ城の中の散策を始めた。
城内の兵を見ると前より少し殺伐したような印象が見受けられるがやはりそれは遠征が近いということだろう。
そして城の中の中庭には行くと久しぶりに見知った顔が模擬戦をしていた。
なぜかその光景を見て俺はホッとしてしまったのだ。
「生きていたか……」
俺は自ら模擬戦をしているクラスメイトの元に近づいていった。
前に書いたやつの手直しをやる暇が……




