ヒムヤー(オンラク)の迷宮2
3章はクラスメイトの話メインにするか迷い中。
300層のボスをソロで倒し深層への道が開かれた。
30000超えを一瞬で倒すあたりさすがは実といった感じだったな。
「私もあれぐらいの実力があればな……」
「まぁ実もかなり恵まれているからな、ザルもいずれは到達できるよ」
「精進します」
「ふふっ、これより下は雑魚でも10000を軽く超える魔物が出てくるしかなり鍛えられるわ」
深層へと進んだ。
「ここが深層か~」
301層以降は外観が変わる、地形も層ごとに変わり環境への適応も必要となってくる。
「とりあえず500層までの雑魚敵は今まで通りの配置で、九兵衛さんは後ろをよく見ていてくれ」
「了解よ~」
どうやら迷宮ごとに出る魔物の属性がでるようだ。
クレセントは炎属性が多めだったイメージだがここは土属性が多めのようだ。
「風属性が有効な傾向にあるな、相手にもよるがそれを見極めて効率よく相手を倒していくんだ。ザルは槍に属性を付与してうまく倒すんだ」
雑魚敵もまだステータスが平均5000以内だし3人でも問題ない。
500層までにかかった時間は3日、実際各層をくまなく探せばもっと時間がかかるのだろうが最短ルートを通って進んでいる。
「立花の魔法は流石だな」
立花は創生魔法バードキャッチャーの線を使用して敵の気配や下への正確なルートを導きだしているのだ。
「500層のボスは3人でうまく連携して倒してくれ」
500層のボスならステータスは精々50000ぐらいだろうし3人で行けば問題ない。
扉を開けて中に入る。
「さて次は何がでるかな~」
3人は闘技場の真ん中に俺と立花と九兵衛さんは外側にいくとキマイラのような魔物が現れた。
キングキマイラ
レベル210
種族:獣族(王位種)
攻撃:55000
防御:52000
魔法攻撃:52000
魔法防御:50000
素早さ:50000
魔力:50000
固有スキル:アースブレス
「さて行きますかね~ザルは避けつつでかい攻撃に備えてくれ」
「オーケーみのるん」
「私は足止めをします」
「まずは飛ばさないよう下に落としてやるか~」
実は大きく飛びキマイラを下に落とそうと襲い掛かる。
「おらぁぁ」
キマイラは避けようと臨機応変に飛んで避ける。
「逃がすかよ!賤ケ岳七本槍」
槍をうまくコントロールし避けられないように誘導しキマイラの上に乗りこんだ。
「このまま落としてやるよ」
実はキマイラの上で異能を発動し噛みついてキマイラにダメージを与え下に落とす。
「九十九ちゃん!」
「任せて、封魔の陣」
九十九の陰陽術でキマイラを拘束する。
「拘束は20秒ぐらいです」
「充分だ、ザルいけるか?」
「いけるよ、大破槍!」
ザルカヴァの攻撃はキマイラの頭部に直撃、その後に実が続く。
「鋼斬剣!」
実の攻撃は頭部にさらに攻撃を与える。
「後は足を狙え!」
残りの拘束時間で足を狙い、拘束が外れた。
「よし、動きも鈍くなってきてるし後もう少しだ」
「後は魔法で仕留めます……」
九十九は魔法を唱えた。
「ギガフレア!」
メガフレアを超える第8位階魔法だ。
キマイラは持ちこたえたが攻撃をする隙など与えない。
「これで終わりだ!」
実が最後に切りつけ勝負は決した。
「いや~余裕だね~」
「だろうな、実際格下相手には拘束してから攻撃を当てれば大抵ノーダメで勝てるからな」
「あのキマイラは50000ぐらいのステータスに対してザルカヴァは平均20000超えぐらいだが実は100000、九十九は150000超え。力の差は歴然ね」
この調子ならザルに守りをかけさえすれば800層までは3人に任せられるな。
「3人共お疲れ~今日はここで一晩泊まろう」
ボスの階層は倒した後そこから離れない限りはボスの復活はしないので休むには一番安全だ。
「さて飯にしよう」
俊樹さんが用意してくれた飯だが今日はかつ丼だ。
「ふふっ、昨日のビーフシチューも見事だったけど今日のかつ丼も期待ね」
立花も飯の時は毎回テンションを上がるがそれぐらいおいしいのだ。
ザルカヴァは初めて味わう感動を毎日しているし俊樹さんには敵わんな。
「周平さん今日もおいしそうだね」
ザルカヴァも大喜びだ。
「ははっ、おいしそうじゃなくておいしいはずさ」
「この食べ物は知りませんが地球の食事ですね」
九十九もこないだ食べた物が懐かしくて涙を流していたからな。
もっともかつ丼は九十九や実がこの世界に来た後に食べられるようになったからこの2人は地球では食べてないだろう。
たしか独国で修業した料理人が東京の料理会で発表したのが始まりだったと言われているな。
「そういえば周平は異能でこれらの味を完全再現できるのかしら?」
「そうだな……ちゃんと見れば再現できなくはないが完全再現は一回見ただけじゃ難しいかもな」
仮に俊樹さんの料理を横目で見ていたとしてもわずかな火加減や細かな時間調整が必要とされる複雑な料理を完全再現するにはちゃんと修業しないときついな。
完全記憶は一度見たことや覚えたことは忘れないし相手の技もコピーできる技能が複雑でないものは大抵1回見れば完全再現できるがなんでも一回で完コピできるわけではない。
中には完全なコピーが難しいことも存在する。
例えばトルコ行進曲という曲を作曲者本人が弾くのを見たとして俺が異能の力で完コピしその後それを引いてどっちがうまいかといえばそれは前者だろう。
ピアノはもって生まれた手の大きさだったり細かな力加減、指の動きの滑らかさで変化するので俺が天才のピアノを見た後それを一回で完全再現など不可能に近いしむしろ1回見ただけではその人のように弾いたとしてもそれは完全再現にはほど遠いレベルになるというわけだ。
「万能に見えてなんでもできるわけじゃないのね」
「それはそうだろ、俺達は神ではないからな」
「周平や立花ちゃんは異能もかなり与えられているから俺よりかなり万能じゃん」
九兵衛さんはそんなことを言うが九兵衛さんは異能を受け取らなかっただけだ。
「俺は流浪人だし20柱の要職に就く気はないからいいんだよ~別にS以下の異能なんざもらっても戦闘能力は変わらんし便利な異能を行使して事務仕事をこなすのはランスロットや図書館、そして今後は2人に任せればいいし」
「俺や立花はそんなために異能を受け取った訳ではないけどな~そもそもそういうのはあの2人に任せておけば俺達の出る幕はないだろうし」
異能自体はこの世界に散らばっているがSランクの異能やAAランクの一部はすべて王ルシファーの管理下にあるのでSランクの異能が出回ることはない。
108あるSランクの異能は20柱で独占しているのだ。
「久しぶりに腕慣らしがしたいね~」
「ははっ、ロードリオンとやってくれ俺達はまだ不完全だ」
「リオンとは拳と拳でぶつかり合えないからね~ジェラードやランスロット、戦神あたりがいればね~早く完全体になってくれよ」
「ははっ、努力するよ」
単純な物理攻撃でいえば20柱でもトップクラスである九兵衛さんと殴り合いなんかしたくはないがな。
「そういえばエミリアと凛真は何をしているのかしら?」
「それ俺も気になります九兵衛さん。レダさん、椿姉、直樹、レイチェルは一緒に行動しているらしいけど凛真さんとエミリアは単独で何を?」
「エミリアはクレセント大陸の西側に位置するジャジル王国というとこで反ファーガス王国同盟を裏でまとめているよ。シンの奴は1年前に目覚めたばっかで体が訛ってるから集結まで魔大陸放浪してるってさ」
凛真とも再開したいな……俺と能力、剣術共に互角なのはあいつしかいないからな~
共に切磋琢磨したのが懐かしい……
「早く13人揃って無双が見たい!魔大陸南部のでの大規模戦闘は忘れられないよ」
13人で10万人の大軍を相手に殲滅し俺達の実力を周りに知らしめたノウンファクトの殲滅戦……俺達をアピールするために派手にやったあの戦だ。
「ノウンファクトですね実君、椿ちゃんが血のシャワーを量産してましたね……」
九十九が嫌なことを思い出したのか顔が引きつっている。
「あら懐かしいわね、周平が大量虐殺して力を誇示していたわね」
「立花それは言わんでくれ」
あれの記憶はまだ他人事なんだ。
「あら、あの時の周平も素敵だったわ、あの姿みてより心奪われたわ」
立花は俺の横に来て腕を組み顔を近づける。
「ふふっ、赤いわ」
「それを言わんでくれ、恥ずかしい……」
「恥ずかしがらなくてもいいわ、昔は毎日こうだったでしょ」
「そうなんだけどさ……」
まったくこれには慣れないな。
2人きりの時は大丈夫なんだがどうも照れてしまう。
立花は耳元で囁く。
「早くしましょうね……」
俺は顔をさらに赤くするとみんなに笑われてしまった。
立花さん耳元でそれは反則っす。
「私もこの会話混ざりたかったです総長……」
ザルカヴァは寂しそうな表情で九兵衛さんに言い九兵衛さんはそんなザルカヴァの頭を撫でる。
「ははっ、ザルも背中を預ける仲間を作って冒険をしてみるといいかもね」
「そうですね……私もいつか……」
ザルはまたも寂しそうな顔をする。
いずれは故郷にもう一度という思いや奴隷として扱われている同族のことを考えると悲しくなってくるのだろう。
それもなんとかするからもう少し待っていてほしい……そしてお前も過去を払拭するんだ。
辛い時や苦しい時、壁にぶつかってもがいている時こそ頭を働かせなくてはいけない……仮にそれが乗り越えられなかったとしてもそれに対し努力をすればそれは必ず糧になる。
だがそういう時大半は努力を辞め、感情のままに堕落していく。
「考えることを辞めればそれはただの愚者だ……辛いことから目を背き逃げ続け克服することを完全に忘れた時、人は何かを失いそれを取り戻すことはなかなかに難しくなる」
書いてて自分で考えた設定を忘れる時がありますw




