ジャジル王国にて
体調を崩しました……
ジャジル王国の首都バイムレックは着いた俺達は早速バイムレック城へ向かうと王様であるイェーツ・サガロ・ジャジルと謁見した。
俺はこういう時どうすればいいかわからないのでとりあえず言われた通り頭を下げておいた。
そして別の部屋で再び王と謁見し本題に入る。
「早速本題に入ろうと思う、ああ、ここは王の間じゃないしそんなかしこまらなくてよいぞ」
「ああ、はい」
「まずお主の身柄についてはスタセリタから希望がでているしエミリア殿の文書があるのでその通りにしようと思う」
「ありがとうございます」
「ありがとうございますお父様」
とりあえず予想通りな感じだな。
どうやらかしこまるのは王の間だけで良さそうだな。
「早速だがお主の能力で得た情報とやらをお聞きしてもよいかな?」
「ああ、はい」
俺は情報を提示した。
話した内容は王様であるオロソ・V・ファーガスの頭の中で考えていたことだ。
まずファーガス王国はクレセント大陸の完全統一を目論んでいて自身が治めていない残り3割の領土を手にしようとしていること。
それはちょっと考えばわかることだが問題はその一歩としてファーガス王国の南に位置するじゃじゃ馬平原と呼ばれるオーリオール平原に魔物をけしかけ挟んで存在するボリアル王国へ打撃を与え、さらに魔物が危険を理由に両国で決めた不可侵領域の幅を狭めて砦をつくろうとしていることだ。
「なんと……ファーガス王国のクレセント統一の企みは何となくわかっていたがそのためにそんなことを考えていたとは……」
「はい、あとはじゃじゃ馬平原より北東部に位置しハクショウ山の南に存在するファーガス王国とリユーン共和国の国境であるウォーサンの森に召喚された勇者の派遣をしていずれは攻めようと目論んでいます」
「うむ、リユーンは反ダーレー教国家である故ファーガスとは元々仲が良くなくいずれはと思っていたのだろう……」
「ファーガスの方が大きいし攻められるには時間の問題では?」
「ファーガス以外のクレセントの国は大半が小国同盟を結んでいるからうかつには手を出せんのじゃよ」
「なるほど~」
流石にそういう対策はしているか。
しかし勇者という戦力を得て強力になっているファーガス王国が強硬手段に出るのは時間の問題かもしれない。
何しろ勇者の中にもいずれは俺のようになるのもいるはず……だから勇者は従順なうちに攻めてくる可能性は充分有り得る。
「お父様、早速ボリアルやリユーンに使者を送りましょう!」
「うむ、そうじゃな、光一殿他に話せることはありますかな?」
「では最後に1つ……」
これは話しておかなければならないな……
「勇者召喚がどのように行われているか知っていますか?」
「ああ、そのことか……エミリア殿から聞いて知っておる、あまりいいものではないのう……」
「知っていたのですね?」
「うむ」
これは予想外だがあのエミリアという人が俺を勇者と言い当てたあたり色々知っているのだろう。
「ではそれを踏まえて……ファーガス王国は小国群を侵略した後そこの地の人間から魔力を集めようとしていることをご存知ですか?」
「何!」
「そしてこの大陸の神クレセントを復活させるというのをダーレー教団と結託して行おうとしています、そのために必要な魔力を集めています」
俺があの国を離れようと決めた一番の理由……他のクラスメイト達にも伝えたかったが反逆罪になるのを恐れて伝えることができなかった。
こんな非人道的な企みは絶対に阻止しなければ……
「そんなことを……」
「事実です、なので他の同盟国にも警戒させるべきでしょう。幸い勇者の迷宮高攻略が終わらないうちはこれらは実行されませんし」
「承知した、早速同盟国にこのことを伝えよう」
他にも少し話し王様との会話を終えるとカーリンやスタセリタから部屋を案内された。
どうやらカーリン同様城の中のスタセリタに近い部屋に配置されるようだ。
「なかなかの部屋だね」
「あなたに生活してもらう部屋だし当然よ、それよりもさっきの話は本当なの?」
「それはどうも、話の方は残念ながら本当だよ……」
俺は少し重い表情と口調でいう。
しっかりこの国に入れるよう念の為に2人はその情報を言わずに伏せていたのだ。
「そう……だったらしっかり対策をする必要があるわね。」
スタセリタもいつになく表情じゃ重い。
やはりこれは今話すべきではなかったかもしれないな。
「さてどう対策すべきかですな……」
カーリンも具体的な対策案は思いついていないようだ。
俺も一つばかし思いついているが間に合うかどうかがわからない所だ……
「さて俺はちょっと街を歩いてきていいかい?」
「街を?」
「ああ、散歩に行きたいんでな」
やっと自由な時間だし好きにさせてもらおうと俺は一人城を出ようとするとスタセリタに肩を掴まれ戻される。
「わ、私が案内するから勝手にいくなんて駄目よ!」
やはりこうなるか~
「でも王女様に案内してもらうのは流石に図々しくないかい?」
「いいの、カーリンも一緒に見るんだからいいの!」
なぜスタセリタがここまでムキになっているかは知らないが一応部下だし面倒なので聞いておくか。
「カーリンさんはそれで大丈夫ですか?」
「問題ありませんよ、それにお嬢様は元々光一殿に街を案内するつもりでしたので」
「そうよ!家来をしっかりしつけないといけないからね!」
「誰が家来だ!家来(仮)な」
まったく……そこを勘違いしてもらっては困る。
「むっ、誰のおかげで自由ができるのかしらぁ?」
またも俺にヘッドロックをかける。
だから胸が当たってるんだよな……
「わかった、わかった、一応家来な」
「それでいいのよ!光一は私の可愛い部下なんだから~」
この嬉しそうな顔が可愛いが見ていてとても腹が立つぜクソ……
「ではお言葉に甘えてお願いします~」
俺は2人色々と街を案内してもらった。
どうやらこの国は王族自体が国民から慕われている国のようで道を歩くエミリアは街を歩く人々によく声をかけられていた。
「ファーガスとは違うな、ここは確か100年前にできたんでしたっけ?」
「そうです、ここを作ったのはかの13騎士の一人崩壁公と呼ばれたソラリオ・ゾーマン・ジャジル様が作った国です」
「私の曽祖父にあたる人が作った国よ、曽祖父は住みやすい国をというのを目標にこの国を作ったのよ」
「そうなんだ、確かにファーガスよりはいい感じがするよ」
「あんな国と一緒にしないでちょうだい」
そういえばなんでスタセリタはこんなにファーガスを毛嫌いしているのだろうか……
「なぁなんでそんなファーガスを毛嫌いしているんだ?」
「エミリアさんから色々聞いているの、あの人は曽祖父の代から特別顧問をしているから100年前の戦争のことや今までにあった話とか色々聞いたわ」
「エミリア殿が何者なのかはいずれ本人に聞くといいでしょう、そのうち戻ってくるので」
「はい、凄い強そうなオーラ放ってましたけどスタセリタの話を聞く限り見かけ通りの年齢じゃない感じですね」
「まぁそうね」
100年前の戦争でてる限り年齢3桁は固いな。
あの人に師事すればもしかしたらもっと強くなれかもしれないな。
次は路面店を案内されスタセリタおすすめのお店を案内されては食べて回っている。
「光一どう?」
「悪くないよ、スタセリタの案内するお店だからね」
普通に美味しいのでストレートにスタセリタを褒めておいた。
「ふふっ、でしょでしょ」
どうやら普通に褒めたのが嬉しかったのかテンションアゲアゲだ。
「まだあるから今日行けなかったとこはまた明日以降案内するね~」
「よろしく頼むね~」
スタセリタが先に進むのを一生懸命俺とカーリンさんはついていく。
案内された路面店を食べ歩きしているとカーリンさんが話しかけてきた。
「光一殿はこの国を守る為の対策を思いついているのではないでしょうか?」
「どうしてそう思うんですか?」
「なんとなくですよ、ただ光一殿は発想力が高いので期待をしてしまいます」
「まぁ一つ思いついてますよ、それが俺のやりたいことにもつながっていますしぼちぼちやりますよ」
そう、よくある異世界のお金稼ぎテンプレその一だ。
俺がこの世界で成功する為の1つとして考えていたことだ。
この路面店もファーガスの食べ物にもこれがあればさらに化ける……そうそれは……
「マヨネーズを作って売りましょうか」
「マヨネーズ?」
そう最強の調味料だ、マヨラーなんて呼ばれる人がいるぐらう中毒性があるものだ。
ちなみにロシア人の消費量が一番らしいな。
「調味料ですかね、それを作って他国で売って今度はそのお金で塩、胡椒、植物油を買ってドレッシングを作りましょうか」
「ドレッシング?何が何だかわかりませんが……」
「要はそれを作ってお金にして傭兵集めればいいのかなと」
「つまりお金を作って集めると?」
「そういうことです」
実は地球にいた頃共働きだった親の代わりに妹とよく料理を作っていたのがここで活きそうだな。
たこ焼きあたりも視野にいれておくか……
「今日の王都案内が終わったら城の調理場を貸してくださいな~」
「承知しました、それとお嬢様をよろしくお願いします」
「ははっ、まぁここにいるうちは嫌でも俺が世話になりますからね~」
「お嬢様が親族以外とあんなに楽しく話す姿は今まで見ていなかったもので」
「ああ、俺みたいなのがもの珍しいんじゃないかと思いますよ~」
異世界から召喚され王族だろうが何だろうが変に身構えない自分と喋るのが新鮮で楽しいのだと思う。
だから俺はこれからもスタセリタとは崩して接しようと決めている。
せっかく知り合えたかわいい女の子の知り合いだしな。
俺はその日の夕方から城の調理場に篭ったのだった。
尾形編は次で一旦終わりにします




