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襲撃

やっとアップできました~

 話がまとまったので、俺達は昼食をとったらこの集落を出ることにした。

 昼食は俊樹さんアレンジの、宮城県産の牛の牛タン弁当だ。


 「こ、これは何……うますぎる……」


 相変わらずザルカヴァは感動を隠せないようだ。


 「ハハッ、それは牛タンと言って、牛という異世界の動物の舌だよ~」


 九兵衛さんが説明する。


 「昨日のお弁当といい、地球という所は美味しいもので溢れているんですね」

 「まぁここの世界の食べ物も悪くはないけど、味付けが洗練されてないからね~」


 九兵衛さんの言う通り、この世界は香辛料が高価であまり流通されていない為、香辛料を使った料理が見られずそれらの競争もない。

 これでは地球の料理に対して劣るのは当然だ。果物なんかは地球以上の味だけに色々もったいない。


 俺達の食事を見ていた妖精エルフたちが涎を垂らしてこっちを見ていた。


 「随分と美味しそうな食べ物ですな?」


 長老のロモンドも欲しそうな目でこっちを見ている。


 「これはもうこれしかないんだよな……ここの集落は全部で何人だ?」

 「ここは全部で二百人ぐらいです」


 二百人か……ならいいか。

 俊樹さんに頼んでおこう。


 「これが終わったら全員分これを持ってくるよ」

 「なんと……いいのですか?」

 「ああ、せめてものお礼さ。ひと段落ついたら届けにくるよ」

 「ありがとうございます。楽しみにしておりますぞい」


 昼食を取り終えると早速出発の準備にかかる。

 

 ここで問題だが案内が必要だな……王都ヒムヤーへ向かうにあたって、道を案内できる人材がほしい。

 途中九兵衛さんが世話になったという集落にも寄りたいので、俺達だけでは時間がかかってしまう。


 「誰か王都まで俺達を案内してくれる奴はいるか?」


 俺が大声でそれを言うと周りがざわつく。


 「俺達はこれから王都に行き、友であるロードリオンを起こしに行く。その為の案内をできる人材を探している」


 この中で果たして立候補に応じるのがいるかどうか……

 ただ俺達も今は時間が惜しい。できれば道案内のできる者を連れて行きたい。


 「僕が行きます!」


 ざわつく中声を上げたのはダリウスだった。


 「僕はまだまだ幼いけど、道案内ぐらいなら出来ますよ。何しろ王都には長老様と何回か行っていますからね」

 「これダリウス!お前にはまだ……」

 「僕もやられっぱなしは嫌だからね。それにこの人達の道案内をするんだし、あの事も話したらどう?」


 ダリウスの言葉にロモンドの表情は暗くなる。


 「何か問題があるのか?」

 「実は……」


 この集落はそもそもエイムウェルという名前で、初代妖精王でもあるロードリオンから存在を認められた集落の一つらしい。


 だがロードリオンが罪人としてあげられた時、封印を解いて話を聞くか、解かないかで聞かないかで意見が分かれた。そしてこの集落は前者を選び初代妖精王の無罪を信じた。

 その結果、ここより大きい集落からの嫌がらせを受けるようになったという。妖精同士で他の集落の中で暴れたりするのは禁忌とされているので、流石に集落の中まで入って、嫌がらせ行為をされることはないが、外にでると色々ちょっかいを受ける為、単独で出るのを極力控えているらしい。


 「それでその嫌がらせをする奴を返り討ちにしようとしたけど、逆にやられて負傷したんです」

 「それでさっき怪我をしていたんだな」

 「はい……」


 ダリウスやこの集落の現状をずっと苦々しく思っていたのだろう。


 「その集落はここから近いのか?」

 「少し離れていますが王都に向かう途中にありますな、名前はリヴァーリッジ……」


 長老のロモンドは、その名前を言う時に嫌悪感を見せる。


 「途中にあるのか。そこを寄るかどうかは考えておくよ」

 「これは我々の私情故、あまり巻き込みたくない……それにあなたがたが初代様を復活させてくれれば全て解決ですし」

 「極論はそうなんだがな……」


 そんな話を聞いたら助けてあげたくなるのが心情だ。

 この村は俺達に友好的だし、このまま恩を売り付けるのも悪くない。


 「その話は一旦おいておくか。そういえば九兵衛さんの寄りたいとこは聞いといたほうがいいんじゃないか?」


 王都の今の現状をもっと詳しく知りたいし、複数の集落の接触は重要だろう。


 「そうだったね~ロモンドさんはシルバーチャームという集落はご存知ですかね?」

 「シルバーチャームはかなり有名ですぞ。しかもそこはただの集落ではなく街というくくりじゃ」

 「俺はそこの長老であるファーディナンドとは知り合いでね。そこへの案内もできるかい?」

 「なんとあの方と知り合いでしたか。ワシもあの人には世話になりましてのう~あそこへの案内でしたら……」

 「もちろん行ったことがありますので、案内は大丈夫ですよ」


 ダリウスが話に入ってきて自信有り気に言う。


 「これ調子に……まったくお主は……」


 ロモンドはため息をつく。


 「よかろう……主を案内役に任命する……」

 「やった!」

 「お主は他の集落にも色々連れて行っているし、道案内には問題ないと判断した。責任ある仕事故しっかり頼むぞい」

 「はい、そこは任せてください」


 どうやら案内役は決まりだな。

 少し不安だが、道案内さえできれば問題はない。そダリウスは俺達に助けられた事で恩を感じているだろうから、むしろ都合がいいか。


 ダリウスを連れて集落を後にした。

 そこから数時間、ダリウスの案内の下で森を歩き続けた。


 「それでお前達に嫌がらせする集落はいつ頃つく?」

 「そこに行くんだとしたら、あともう少しですかね~一応シルバーチャームを寄る前の段階で寄ることができますし」


 「フフッ、それで私達の後ろに貼りついているのね~」


 立花の言う通り、一時間前ぐらいから後ろから追ってきている気配があり、どんどん近づいている。


 「おびき寄せて捕らえるか」

 「それがいいわね」

 「立花、ゲートを開いて背後について拘束してくれ」

 「わかったわ」


 立花はゲートを開き、数百メートル後ろへとワープする。

 後は挟み撃ちをすればいいだけだ。相手は二人だし問題ない。


 「捕らえるぞ!」


 俺と九兵衛さんは気配のある方向に近づく。


 「九兵衛さん!」

 「あいよ~」


 俺達が近づくと、二つの気配は逃げようと、立花の方へと向かう。


 「フフッ、かかったな」


 その数秒後、二つの気配の動きが止まり、ゲートが開かれる。


 「さすが早いな」

 「フフッ、作戦通りね」

 「すごいです……」


 ザルカヴァは唖然としている。ゲートは大賢者である、立花にしか使えない魔法だし無理もない。

 捕らえた妖精エルフは二人共若い。


 「く、くそ……離せ!」

 「つけられているのを気づかれないと思ったのかしら?」

 「くっ……」

 「ダリウスこいつらの顔を見たことがあるか?」

 「はい、リヴァーリッジの妖精です」


 一人は金髪にもう一人は黒髪だ。

 まぁビンゴだな。さて尋問を始めるか。


 「貴様ら、こんなことをしてすむと思うなよ……」

 「フッ、お前達こそ、俺達を敵に回してただで済むと思うのか?」

 「そうね……とりあえず村まで案内してもらおうかしら?」


 二人の表情はまだ反抗的だ。


 「誰が……貴様等なんぞに……」

 「そうだ、私達は貴様等なんぞに屈しない!」


 まったく……馬鹿な奴らだ。

 立花はそれを聞いてニヤリとしながらこっちを見る。


 「フッ、立花鎖で強く縛ってくれ、別にこいつらに聞く必要などない。こいつらの集落はダリウスに案内してもらえばいいだけだ」

 「了解、この二人は?」


 「集落まで引っ張ろうか」

 「俺が片方引っ張るよ」


 九兵衛さんが言う。


 「ま、待て引っ張るとは……」

 「文字通り鎖で縛った、お前等を引っ張るだけだよ。聞き分けのない奴を歩かせるほど俺は優しくないからな~」

 「ま、待てそれはいくらん何でも……」

 「そ、そうだ……我らにも尊厳が……」

 「知らんな」


 俺は二人を押し倒し、鎖を持って引っ張る準備をした。

 地面をこする事になるから、至る所をぶつけるだろうが死にはしないしまぁいい。

 昔ピザの有名な国で、戦争の首謀者の死体が、街中引っ張られるというようなことがあったな。

 あれはさすがにどうかと思ったが、こいつらはあれみたいに偉くはないし、問題ない。


 「ま、待ってくれ……」


 二人は顔を青くする。さて少しは吐いてくれるかな。


 「お前らの名前は?何で俺達をつけた?」

 「そ、それは……」


 二人の口が止まる。

 ふむ、聞き分けのない奴等だ。


 「あ、いいよ、別に答えなくても。引っ張るだけだし」

 「お、俺はリベロ、そいつはノノアルコだ……」

 「リベロと俺は、そこにいるエイムウェルの奴に嫌がらせの為に襲撃をした」

 「そうだ、そしたらお前らがそいつを助け、集落に入ったので出るまで待っていたんだ」

 「なるほど、それで私達をつけていたわけね」

 「そうだ……」


 さてこいつらをどうするか……

 とりあえず嫌がらせをしないように見せしめが必要かな。


 「ザルカヴァ、お前には少し刺激の強い奴を見せるかもな」

 「それは楽しみですね」


 俺達は鎖で縛った二人を歩かせ、リヴァーリッジの集落へ行った。中に入ると、集落にいる妖精達は縛られた二人を見て、すぐに集まる。


 「なんだお前達は?それにリベロにノノアルコ!?」

 「長老を呼べ、さもなければこいつの命はないぞ!」

 「ふふっ、周平さんのこの後の展開読めたよ」

 「まぁ長い付き合いだからな~」


 一応ロードリオンの国だし、ここでの虐殺行為は後に禍根が残る。

 つまりこの集落を従わせるには、立花さんの出番というわけだ。


 「な、なんだ貴様らは?」


 複数の取り巻きを連れて、出て来たのは長老というにはほど遠いが、そこそこ年はいっている、髭を生やした金髪の妖精エルフがでてきた。

 そもそも妖精エルフは長命なので、このおじさん妖精も齢三桁はいっているはずだ。


 「あれが長老?随分と若そうだね~」

 「ははっ、九兵衛さん自体かなりの年寄りだから、それに比べたら若いだろうね」

 「ちょっとみのるん、あんまし私の総長をおじいちゃん扱いしないで~」

 「ごめんごめん~」

 「お、おじいちゃん……」


 九兵衛さんはその言葉に少しショックを受けているようだ。

 まぁ齢四桁だから普通に爺だな。


 「ほら九兵衛さん気にしない気にしない」

 「おじいちゃん……」


 二十柱の意外な倒し方は、メンタル攻撃にあるかもしれないな。

 さてあのおじいちゃんはほっといて、ささっと終わらせるか~


 「さてお前さんがここの長かな?」

 「いかにもだ!うちの者二人にそんなことをして、ただで済むと思うなよ!」


 まったく……状況が読めていない奴等だ。今置かれている立場を分からせてやらないとだな。


 「立花」

 「エミリウスの宴」


 長らしき人物の横にいる取り巻きを全員石化させた。


 「なっ……」


 長含む周りで見ていた妖精エルフは何が起きたのかわからないと言った感じだ。


 「いまいち状況が読めてないようだが、ただで済むと思うなだぁ?」

 「ひっ……」

 「まずは貴様等へ聞く。なぜエイムウェルを狙う?」

 「あ、あそこはブルーピーター様に従わない反逆者の集落だ。狙って当然だ」

 「ではそれを指示したのは?」

 「き、貴様らにそれを言う必要などない」


 立花はそれを聞くと、さらに何人かを石化する。石化を戻せば生き返るが、砕けば当然そのまま死ぬ。


 「いまいち状況がわからんようだな?石のまま砕けば死だぞ!」

 「こ、国王様の勅命だ……ロードリオンに従う集落をすべて従わせろとのことだ……」

 「なるほどな、それで貴様の名前は?」

 「エズードだ」

 「そうか、ではエズード、これより貴様の集落へ罰を下す」

 「罰だと?」

 「ここの大半の妖精は今から石化だ」


 立花は、エズードとさっき捕らえた二人と、近くで見ている一部を除くすべての妖精を石化させた。


 「これを周りに告げれば全員砕く!」

 「そんな……これでは……」

 「時期ロードリオンを起こし、今の王は失脚する。それまでここの集落はこのままだし、それまでに貴様らがここの集落から出れば、全員石になった奴は戻らないと思え!」

 「馬鹿な……そんなことやれるものなら……」

 「やるよ~それでリオンからのキツイ罰も楽しみにしておくんだね~」


 さっきまで戦闘不能になっていたおじいちゃんがいつの間にか復活していた。


 「なぜリオンにそんなことをしたかは知らないけどさ~」


 いつも温厚な九兵衛さんだが、今回の件はとても腹を立てていた。

 ともに大昔の神争を戦い抜いた友が、そんな仕打ちをうけているのが許せないのだろう。

 何しろロードリオンは妖精族始祖だ。一介の妖精ごときが、そんな真似をしていい訳がない。


 「友に手を出してただで済むわけないだろ……」


 九兵衛さんは少し本気を出して、集落全体を威圧した。

 さっきまでメンタルをやられていた、おじいちゃんとは思えない程の強烈な威圧だ。俺も含めてその場にいたものは皆戦慄し、巨人王である事を改めて認識させられた。

 ザルカヴァも今の九兵衛を見て、恐怖心を感じていた。


九兵衛さんは怒ると怖いです(笑)

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