雑貨屋と掘り出し物
とりあえずアップ
ギルドを後にした俺と立花は街を散策することにした。
ギャラントプルームは色々な交易品などが集まる街であることから、各大陸の特産品なども手に入ることができる。
魔大陸と貿易しているのはこの街ぐらいだろう。他にもファーガス王国ないでは見ることができなかった、獣人族、エルフ族、魔族等の種族を見ることができた。
「この世界の種族は人間だけじゃないんだな……」
「何を今更言っているの」
本当にその通りである。
「いや、今まで見なかったから余計にな~」
ファーガス王国はともかく、ファラリス連邦ではエルフと人間以外を奴隷にしているらしく、それ以外の種族が街を堂々と歩くのが難しいらしい。もしファラリス連邦の人間がこの光景を見たら、違和感ありありで、自身が見る光景そのものを疑ってしまうに違いない。
「この街は色んな種族が共存していて素晴らしい街ね」
「九兵衛さんの作った街だからな。奴隷制度ありのファラリス連邦は見習うべきだな」
というか人間は他の種族を恐れているのだ。その表れとして、ファラリス連邦は他の種族を奴隷にしたりしているのだ。九兵衛さんは他の種族を恐れたりはしていない。だからこそギャラントプルームは他種族共存の街になったんだと思う。
「あそこもいずれ滅ぼそうかしら?」
「立花さんストップ~」
「あの国はいずれ戦うわ。どうせ潰すなら国の体制変えるぐらい徹底的にやらないと」
まぁ立花の言う通りだしやるなら徹底的にか……
というかロードリオンや九兵衛さんは自分の種族が奴隷にされている現状をなんとも思わないのか?
それとも時がきたら動くのか?
どっちにしろ再集結したら方針を話し合うべきだな。
「まぁそうだな、つかロードリオンがその現状を目の当たりにしたら、温厚なあの人でも動くに違いないかな」
おそらく彼が動かないのも、俺達を待っているのだと俺はふんでいる。
「そうね、本当はジェラードさんなんかがいてくれたら、私たちが手を出すことなく滅んでいるんだろうけど、あの人は今ここには来れないから」
「ハハッ、それは間違いないな~」
ジェラードさんがいたら、間違いなく消し飛ぶに違いない。あの人は過去の経験から、奴隷制度そのものに対して過敏に反応するからな。
「ねぇ周平雑貨屋いかない?」
「いいけどなんか欲しい物でもあるのか?」
「こういう街では掘り出し物があるかもしれないじゃない?王の書で物を見ればそれがわかるし」
「なるほど、レア回収業者になりますかね。歩く国家としては、そういう物がたくさんあるに越したことがないからな」
当たりをゲットできれば儲けものだ。昔はよく立花とデートがてらやっていたし、それで見つけたレアな武器もたくさんあるしな。
「フフッ、決まりね~早速怪しそうな雑貨屋を片っ端から回りましょうか」
何件か回った、¥が、特に目ぼしいモノが見つからないまま、最後に行きついたのが、街の裏にある雑貨屋だった。
「ここは臭いわね」
「臭うか?」
「ええ、入りましょう」
どうやら立花の直感で、ここには何かレアなものがあるらしい。中に入ると、いかにも怪しげなおじいちゃんが店主である物もすごく怪しげだ。
「いらっしゃいませ~こんなお店によく辿り着きましたな~」
「ええ、ここは目当ての物がある気がしたの」
「それはそれは、ただここに置いてあるものはガラクタで、使い道のわからないような物ばかりでしてね~」
「私や彼は物の価値を見抜けるわ。今まできた客と同列にしないでちょうだい」
まぁ俺はともかく、立花は王の書があるからな。
俺達は片っ端から見て回った。まぁ本当にガラクタっぽいのが多く、掘り出し物見つけるのは苦労しそうだったが、早速目に入った武器があった。
「うん、これは?」
俺は錆びついた槍に目がいき、手に取ってみた。
「それは伝説の四戦姫が使ったと噂の槍ですが、錆付いてますし果たして本当かどうか……」
戦姫?はてどいつだ。見た所外見は錆ついててボロボロだが力を感じるな。
「立花、こいつにマースクの嘆きをかけてみてくれ?」
俺は立花に槍を渡し、それを受け取ると、創生魔法マースクの嘆きを発動した。これはありとあらゆる防御系や認識阻害系の魔法をかき消す魔法だ。もしこれが戦姫の槍なら真なる姿を見せるはず。
「いくわよ」
立花が発動すると、槍は銀燭の美しい槍へと姿を変えた。蒼と銀に輝くその槍は、まさしく戦姫のものである。
「ああ、これはヒルデの奴のか」
「そうね……でもこれ見たら実がまたキレそうね……」
「あいつを死に追いやろうとした奴だからな……」
この槍は、四戦姫の一角である、ヒルデ・パーシアの物に違いない。四戦姫とは百年前に世界で恐れられていた、四人の戦姫を指すのだが、うちのメンバーのレダもその一人である。そしてヒルデ・パーシアは偽神側についた戦姫でもあった。
戦争の後、どうなったかは知らないが……
「おい、じいさんこいつはどこで手に入れた?」
「確かそれは……三十年ほど前でしたかな?魔大陸の中の大戦のとある跡地にて、大規模な爆発事故があったのですが、その爆発の中、唯一爆発に耐えて岩に突き刺さっていた槍です。当時は凄い槍かと調査したのですが、魔力を感じるだけでまともに使えず、ここに流れてきたのです。まさか噂に名高い戦姫の一人の武器とは……」
店主はどうやら関心を隠せないようだ。
「それ買ってくか?」
「そうね、ただこれ本人じゃないと使えないみたいだけどね」
どうやら契約武器のようで、契約者以外は自由に使えないようだ。
「これはいくらだ?」
「それは銀貨十枚ですな~」
「そんな安くていいのか?白金貨一枚はだすぞ?」
何しろ俺達金はたくさんあるからな。伝説級の武器だろうし白金貨一枚など安い。
「いえ、今までそれを見てきた者は、私含めてその価値を見出せなかった。それなのにあなたがたが来て、その武器の真の姿を暴き、それを見ていたからと言って、値段をあげるような真似はルール違反でしょう~」
この爺さんは良い考えの持ち主だな。何よりその信念は好感が持てる。
「ヘヘッ、店主のあなたがそう言うなら銀貨十枚で貰ってくぜ」
「ありがとうございます」
槍を購入し、他の掘り出し物にも期待し、店の中を舐めまわすように見た。
「しかしガラクタばっかだな~まぁそれなりに凄いのもあるが、俺達からしたらって感じだし」
「全部掘り出し物だったらさすがにびびるわよ」
「だな~」
立花の王の書の能力で鑑定すると、そこそこの魔具だったりするものが多く見られたが、解析すると大半が使用方法に一癖あるものが多く、その割に俺達的には不必要だったりする。
「じいさん的に臭い品を教えてくれないか?」
「う~んそうですな……何しろ二人の目が肥えすぎなんですな……こちらとしては、お二人のおかげでガラクタだと思ってたものの使い道がわかり、助かっていますがね~」
店主はそう言いながら少し考えるとこちらに来て首飾りを指した。
「あれか?」
「ええ、あとその下にある鍵のような物ですな」
店主に言われた二つを取り出し解析を始めた。
「この首飾りは強力な光の守りが付与されたもので、レイルリンク王国のものね」
「レイルリンクか」
かつての戦いで俺達を色々な意味で翻弄させたレイルリンク王国か、懐かしいな~
そういえばあそこの女王も確か……あれあいつはどうなったんだ?
俺はあいつと何か約束を……
記憶が引っ掛かり、頭痛がはしる。
「ぐっ……」
「周平?」
「大丈夫だ、レイルリンクの女王を思い浮かべようとしたら、少し記憶痛がでただけだ。どうやらなんかあったのかもな」
それを聞いた立花は怪訝な顔を見せる。
「そうね、レイルリンクの女王は……いいえ、この記憶は自身で思い出すべきかもしれない。あれを今ならどう捉えるのか、それは思い出してみないとわからないから……」
立花は難しい顔をしながら俺に言った。
それはいったいどういうことなのか……俺にはまだわからなかった。
「一旦出ましょうか?」
「もういいのか?」
「ええ、ちょっとお腹減ったし疲れちゃったわ。ここにはまたくればいいことだし。お爺さんこの二つも追加ね」
「銀貨三十枚ですな。まいどあり~」
「フフッ、ありがとうお爺さん。また来るわ~」
「こちらこそ今後ともよろしくお願いします~」
店を出たのはおそらく俺を気遣ってのことだろう。
まったく立花は……できた奴だよ。
戦姫の槍と首飾りと変な鍵のようなモノ三つを購入したが、低予算で思わぬ買い物をできたし、掘り出し物の発掘には成功だ。
冒険者ギルド
黒ランク
高天原九兵衛(総長)
神山周平
神明立花
白金ランク
天竜院実
シルキー・サリヴァン
イネーブル・モントヒルデ
ザルカヴァ・ストイコビッチ




