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クラスメイト300層攻略2

寝坊しました。

 パワーアップしたウガルルムの攻撃によって負傷した木幡を一旦後ろに下げて体制を立て直す。


 「防御を固めるんだ。菱田はなんとかして攻撃破壊を当ててくれ!」

 「わかってはいるがあいつの速さとブレス攻撃でなかなか近づけない……くそっ……」


 あの爪を喰らえばたたでは済まない、菱田まで負傷すればうちの陣形は一気に崩れてしまうので、攻めきれずにいた。


 「まったく……簡単にはいかないな……」


 吹き飛ばされた木幡が復帰する。


 「木幡大丈夫なの?」

 「杉原、心配してくれるのか?」

 「当たり前でしょ!クラスメイトなんだから!」


 木幡は一瞬がっかりするがそんな暇もない。大野と秋山でなんとかウガルルムがこちらにくるのを防いでいるが、ブレス攻撃は尋常なく強く、防御魔法をしてもかなりのダメージだ。後衛の防御補助もいつまでもつかという状況だった。


 クラスメイト全体は疲弊する中、タピット騎士団長代理や玲奈先生がみんなを鼓舞していた。


 「くっ……どうすれば……」


 そんな嶋田の言葉を聞いたのか美里がフォローに入ろうとする。


 「落ち着いて!とりあえず私と雪が魔法で援護するわ。その間に……」

 「待って!」


 雪が美里の言葉を止める。


 「私の異能でウガルルムの元に飛び込むわ。大丈夫考えがあるから!」

 「でもそれじゃあ月島に危険が……」


 嶋田が言おうとしていることを遮り、雪は続ける。


 「それで隙を作るから作ったら橋本君はいつものあれをしてほしいのと菱田君お願いね!」

 「おう!」

 「わかった」

 「その作戦は俺も前にでるよ」


 申し出たのは東だ。


 「東君?」

 「なんとなく月島さんの作戦が読めたからね。おそらく僕の異能の(鎖拘束)チェーンリストリクションが役に立つ。二つの鎖は二つの前足を少しの間抑えられる。君がウガルルムに乗っている間の攻撃を微力ながら防ぐよ」

 「さすがは成績クラス一位の東君だね」

 「ハハッ、ここでは成績など関係ないけどね」


 作戦がよくわかっていないのが大半だったが、嶋田は作戦を理解し許可をだす。雪の身に何かあってからでは遅いが、今は打開策を考える時間もそんなにあるわけではない。


 作戦が実行される。


 「橋本と菱田と大野は前に、鮫島と田島は防衛をしっかり頼む」

 「まずは俺達二人が月島の道を開ける」


 大野と秋山が異能を使ってウガルルムを誘導する。ブレス攻撃は中衛の防御魔法を前衛に張り巡らせ防ぐ。


 「こっちに誘導できそうね……行くわ!」


 雪の異能であるキャットクイーンによる猫化をする。その間の攻撃力は下がるが、スピードは段違いに上がり瞬く間にウガルルムに近づき、上に乗る。


 「よし、橋本後ろ足に粘着沼を!」

 「了解」


 東の掛け声で橋本は異能を発動する。上に乗られたウガルルム暴れようとするが、後ろ足の身動きがとれない逆に動けない後ろ足を軸に利用し前足で月島を振り落とそうとする。


 「させるか!」


 東はそこで異能を発動し前足の動きを封じる。後ろ足が解除されたが、前足を拘束されているので顔の近くを移動中の月島を後ろ足で攻撃するのは不可能に近い。


 「月島さんそこだ!」


 雪はウガルルムの両目を爪で直接攻撃し、ウガルルムの視界を奪ったのだ。鎖が破壊される直前に雪はウガルルムの元を離れ、その場で暴れるウガルルムに菱田が近づく。


 「おらぁ!」


 攻撃破壊の異能を付与した剣でウガルルムの頭を斬り付けた。ウガルルムは飛び跳ね、その場を離れブレスを放つが、攻撃破壊の効果で防御も楽になる。


 「攻撃破壊は効いているようだな」

 「ええ、さっきよりぜんぜん防御しやすいわ。さすがは攻撃破壊ね」


 木幡と美里は感心する。雪達の攻撃で立て直した事でクラス全体に余裕ができる。


 大野と秋山は攻撃を止めずに異能を放つ。視界が奪われた状態で円槍撃サークルスピア落下弾フォールショットを完全に避けるは至難の業だ。しかも他のクラスメイト援護射撃もあるのでいくら攻撃の気配を読み取っても、無数に来る攻撃の完全な回避は無理に近い。徐々に攻撃が当たり始め、スピードが遅くなってきたのだ。

 さらに今度はウガルルムに円槍撃フォールショットと(サークルスピア)をあえて避けさせ中衛付近に誘導する。


 「みんな下がって!」


 田島の掛け声で全員が下がり、無数のクラッシュシードが仕掛けられた場所にウガルルムをおびき寄せた。


 「クラッシュ!」


 あたりは連鎖爆発し、ウガルルムは無数のクラッシュシードの爆発をもろにうけ怯む。


 「東に橋本頼む!」


 東と橋本が動きを完全に止めた所で嶋田が異能で腕を恐竜化し、ウガルルムの顔を中心に直接攻撃を始める。菱田や木幡も加わり、杉原も弓矢で後ろ足を中心に攻撃する。


 「よし、このまま顔を攻撃すれば…」


 ウガルルムの声は弱くなり、嶋田は勝ちを確信する。


 「竜也、菱田一旦下がろう!」

 「オーケー」

 「おう!」


 三人が後ろに下がると、嶋田は総攻撃を支持し、それぞれが放てる最大火力の魔法でウガルルムに総攻撃する。


 「いけぇぇぇぇ!」


 雪は第六位階魔法を、レベルの低い者でも四位階魔法ぐらいまでは唱えられる。総攻撃の魔法はウガルルムに直撃し、ウガルルムは倒れた。さっきのように復活がないか警戒するが、もう起き上がってくることはなく、ウガルルムはその場から消滅した。


 ボス階層の魔物は倒されると死体ごと消滅するのですぐにわかる。


 「た、倒したぞ!」


 クラス全員が歓喜の声を上げる。タピットは拍手をし、玲奈先生は涙を流して喜んでいる。


 「よっしゃあぁぁぁ!」


 菱田が大きな声で言うと、周りも一緒に声をだして騒ぐ。踊る者もいれば飛び回る者もいて、クラスのテンションは絶頂に入っていた。


 「やったね雪」

 「うん、東君が私の作戦に気づいてくれたからだね」

 「ああ、ナイスだ東、それに橋本もな」


 木幡はいつになくテンションが高く、あの寡黙な木幡はどこ行ったと言わんばかりだ。


 「木幡君もあの時はどうなるかと思ったけど、嶋田君のサポート役は伊達じゃないね」

 「嶋田、木幡のコンビは最強だね」

 「褒めすぎだぜお前ら……」


 東と橋本が木幡を褒める。雪はともかく、嶋田や木幡と東、橋本はグループが違う。東は秀才で頭はいいが橋本と同様のスポーツグループだったのに対し、嶋田達ははっちゃけるグループだ。地球にいたころでは絶対見ることのできない光景を間近で見た者には違和感があるだろう。


 「菱田もありがとう。大野も秋山がある意味一番の功労者だよ」

 「へへっ、お前もクラス背負って大変なのによくやってるよ。これからも頼むぜ~」


 菱田は手をグーにして嶋田の前に伸ばした。

 

 菱田ともこんな風に話すことはなかったな……迷宮攻略を経てクラスが文字通り一つになってきている。

 

 嶋田のやっていることが決して無駄ではなかったとがここで証明されたようなものだ。あの時、あの謎の女性に言われたくないことを言われてメンタルを折られかけた嶋田だが、何もそこまで自身の行いを卑下する必要はないと考えていた。確かに考えを改める必要はあるが、今まで自分のやってきたことは確実にクラスの助けになっているからという確信の元、自身を強く保っていた。


 俺はこいつらがいればこれからもやっていける!


 そんな想いを胸に俺は手をグーにして菱田の手に当てた。


 「それと俺も神山のことで内緒話があるから後でいいか?」

 「神山ことで?了解」


 一体何の話かと気になる嶋田だが、自信も聞きたいことがあるから好都合だった。


 「みんなおめでとう!」

 「タピットさん!」

 「もうすっかり俺を超えてお前らは本当に凄いよ。なんというかクラスの団結力は流石だな~」

 「浩二が引っ張ってますからね!」


 木幡は自身満々に言う。


 「僕なんてまだまだですよ。それに迷いもあります……」


 嶋田は少し暗い表情をだす。今回で少し晴れたとはいえ、まだ答えを出せずにいたからだ。


 「まぁこの世界にきて色々思う所があるのはわかる。後で俺の部屋に来い。お前の話を聞きたい。もちろん誰にも言わないし墓場まで持っていく」

 「はい、お願いします」


 嶋田にとってタピットは信頼に値する人物だった。この国で一番信頼できるのはこの人なのは、今まで色々話してきた自分がよくわかっていた。もしかしたら自分の迷いを払うためのヒントをくれるかもしれないかと期待していた。


 「さてみんな転移装置で上に戻ろうか。今日は宴だ!」


 タピットがそれを言った瞬間だった。砲弾のようなものがタピットの肩を直撃したのだ。


 「ぐあぁぁぁぁ!」

 「タピットさん!」


 タピットは悲鳴を上げその場で倒れた。そして目の前に女性が近づいてきた。



ちょっとクラスメイト編が続きます。

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