特訓の成果
眠い……おかしかったら指摘お願いします。
-----裕二視点-----
僕は生まれてまだ六歳の頃家族ごと別の世界に来た。
その世界は地球とは違う世界で、両親はそれを受け入れるのに時間がかかったという。
ただ僕達家族を助けてくれた人がいた。蒼髪のメイドのお姉さんが、金髪の魔法使いと黒髪の戦士を引き連れて僕達家族を支援してくれた。結果、両親はこの世界の田舎町で地球と変わらず農業をやることができたし、僕も地球にいた頃の記憶を忘れないようにこの世界に順応していった。
十歳も過ぎた頃にはレダさんを意識し心を奪われていた。いつも優しく時に厳しかったレダさんに僕は色々なことを教えてくれた。
「祐二!」
十に歳になった頃、レダさんのいいつけを破り街の外にでたら盗賊団に襲われ、死を超えるダメージを受けた。レダさんが駆け付けたその時には僕は死にかけていが、僕はその時の記憶を忘れない。
「よくも……私の祐二を……貴様ら……」
普段優しかったレダさんが修羅と化した姿を見たのは初だった。盗賊団全員を一人ずつ殺していくその様は死にかけながら惹かれてしまった。その一瞬の出来事は僕にはまるで時間が止まったかのように長く感じた。
僕は気づくとベッドで目が覚め、看病していたレダさんにまず謝った。
怒られるかと思ったけどまず僕を抱きしめてくれた。
「僕強くなりたい……レダさんみたくなりたいよ…手b」
「ふふっ、私みたくなんて百年早いわ祐二。でもあなたが望むなら少し鍛えるわ」
僕はレダさんに少し鍛えてもらうことになり、金髪の魔導士と黒髪の剣士も一緒に鍛えてくれた。
「遅いよ~」
「はい!」
黒髪の剣士は神代椿という名前の女剣士だ。なんでも僕と同じ地球出身で、レダさんの仲間らしい。長い黒髪にスラっとした体は大和撫子と呼ぶに相応しいだろう。父はレダさんよりも椿さん押しだった。
「そんなんじゃ姉さんの横には立てないわよ!」
「くっ……」
椿さんには刀の扱いを教わった。結局刀は使ってないが、剣を扱う上での基礎中の基礎は習得できたと思う。
「さぁ祐二君行きますよ~」
「はい!」
「まず精神を統一して魔法を思い浮かべるのです。魔法を上達させるコツはその魔法を頭で想像することです」
金髪の魔導士の名はレイチェル・アレクサンドラ。金髪の美女と言えば今でも僕はこの人が目に浮かぶ。とても真面目でこの人には魔法の基礎を習った。
レダさんがお母さんのような感じだとすればこの二人はお姉さんのようだった。結局三人とも忙しくてあまり見てもらうことができなかったが、それでも基礎は叩き込まれたしギルドに入ってからもかなり役に立った。
十五歳になる頃にはレダさんが二人を連れて離れる日がやってきた。そもそもそれまでもいろんなところに行っていたりと、あの事件があった後ぐらいからはアルマンゾールを離れることも多かった。
僕はその時レダさんに告白をするとにっこりと微笑み、強くなるまで待っていると言われテンションが上がりまくっていた。
その時僕に加護を与えるために過ごした一夜は一番の思い出だ。
そしてそれから一年……僕は言われていた通り二人と出会ったのだ。
その二人に戦闘の訓練をしてもらい、何度も死にかけながらそれをなんとか耐え続け、期限の一ヶ月はあっという間に経過した。
「さてと……最後の試験に行かないと……」
一月前までの自分はどこか足りなかった……いや今でも足りない部分はたくさんある。レダさんに少し鍛えてもらってから入ったからか、ギルドのレベルは低くどこかもの足りなかった。そんな毎日を過ごしていたらあの二人が現れた。絶対に届かないであろう圧倒的強さと、レダさん以上の何かを感じ近づいた。
案の定二人は圧倒的な強さを見せ、勝者が正義となり法を作るというのを見せつけられた。
果たしてそれが正しいのか………僕は彼らとは違う答えを導き出した。
僕は山脈内の魔物はすべて倒せるようになり、最後の方は一人で勝てないながらも神殿内の敵の討伐を周平さんと行った。
それは三日前のことだ。
「祐二、ホーリードラゴンを討伐するぞ」
「えっ、さすがにあいつは僕一人じゃ……」
「大丈夫、俺がついていかないわけないだろ」
一瞬焦ったものの周平さんが横にいるならと安心して神殿内を進んだのだ。奥に進むとホーリードラゴンが姿を現す。
「祐二、俺は最初何もしない。まずはお前が突破口を開くんだ」
「はい!」
まずあらかじめ一時的に魔力量を上げる魔力増強薬を飲んで挑んだ。そう……今回はあらゆる手を使ってでも一人で倒してみたいと思ったからだ。
異能である戦いの唄を発動。これは自身を含む周りの味方の攻撃力をアップさせるという効果だ。次にハイプロテクトとハイマジックガードを自身にかけ長い呪文を唱える。
「メガフレア!」
不意打ちでメガフレアを発動した。そして次に、すかさずスティールビジョンを相手にかけ視界を盗む。
「クイックスター!」
ドラゴンに近づきまずは一太刀柔らかい部分を斬り付ける。ドラゴンはこっちに向かって爪で攻撃しようとするが、バックステップですかさず後退だ。
「出だしは悪くないぞ。あの手この手と使って真っ向勝負ではないが、格上に勝つには手段を選んでいてはいけないからな」
ホーリードラゴンはブレスを吐いてくる。
「無心流剣術心斬!」
これは流体であるブレスにも有効で、見事真っ二つに斬る事が出来た。本来この技の習得にはかなりの年数がかかるが、周平さんは自分がこの技を発動した時の状態を魔法で僕と共有させ、感覚を身体にしみこませ、この技を伝授してくれた。
「スペースクエイク!」
ドラゴンの周りの空間に揺さぶりをかける。揺さぶられたことでバランスを崩したドラゴンは慌てて飛翔しようとするが、そのわずかなスキを狙わないわけがない。
「黒天流剣術覇剣!」
飛ぶ前に首を思いっきり斬り付けると、ドラゴンはよろけ飛翔が中断する。正直ホーリードラゴンよりも戦闘能力の劣る僕がなぜここまで圧倒できているか。当然このドラゴンの癖や弱点を教えこまれたのも一つの理由だがそれだけではないはず。正直自分でも何故こんなに戦えているのか理解が追い付ていない。周平さんに戦闘のセンスと分析力を褒められたけど、まだまだだという認識だ。
よろけたドラゴンに覇剣を連発し、翼を斬り付け飛翔能力を封じる。
だがここでどこか安心してしまい、両翼が斬られたところで隙ができた。
その瞬間をドラゴンは待っていかのように爪で僕を斬り付けたのだ。
「ぐはっ……」
「祐二!」
痛みが身体にはしり、よろけて倒れた。
そうか僕はつい油断を……まさかこんなところで死ぬのか。
嫌だな……レダさんにあえずに死ぬとかほんとごめんだよ……まだ死ぬわけにはいかないんだ……まだ。
ドラゴンはそんな僕の想いなんざ知らずにブレスを放とうしている。
もう終わりかと思いきや当たるその瞬間、僕の周りを囲むような防壁が出現する。
「えっ……」
周平さんが助けてくれたかと思いきや、それは予想外な事態だった。
自分の中に不思議な力がみなぎり、ラ・ヒーリングで体の傷を癒す。
「そうか……これはレダさんの……」
それを理解し、その場で呪文を唱える。瀕死のドラゴンにそれを唱えれば、勝ちは確定する。危なかったがこの力が身体の傷を癒し、僕を死から救った。
そうこれはレダさんの守りだ。
「メガフレア!」
メガフレアを直撃した事でホーリードラゴンはその場で倒れ息絶えた。
◇
「ハァハァハァ……」
裕二は満身創痍になりながらもなんとか勝つ事が出来た。
だが勝つことができたものの、少し複雑な表情を浮かべる。
「まだこの敵は僕には早かったってことだね。この守りはレダさんの警告でもある」
それはレダさんが裕二に与えたコントラクトスキル戦姫の加護の効果によるものだ。死を超えるダメージを受けた時それを防ぎ、守るバリアを発生させるもので、死にかけてこれが発動したら逃げないさいという警告も込めたスキルだ。レダさんは裕二を守るためにこのスキルを施したのだ。
「祐二、倒したな」
「はい、でもこれは自分の真の実力では……」
「わかってる。でも今回はどんな手を使っても倒すのが目的だ。だから今回はいいんだ」
祐二の表情はどこかしょぼくれている。おそらくあのバリアもレダさんが与えたスキルだ。しかもあれは察するに死を超えるダメージを受けた時に発動するものだ。
立花との訓練では祐二は何回も死んだはずだが、立花はあらかじめ祐二に瞬間蘇生の高等魔法をかけて特訓しているから発動しなかったのだろう。
あのスキルはピンチになった祐二を逃がすためのスキルであり、それを発動させてしまったということは、祐二は一人で勝ったとは言えなくなる。
「まだお前にはあいつは荷が重い。だからこれから強くなって倒せるようになればいいんだ。その悔しさを忘れるなよ」
祐二はゆっくりと頷いた。
しばらくそこを動かなかったところを見るとよほど響いたのだろうが、今後の成長のためにいい体験ができて結果的には良かったのだろう。
◇
特訓を終えた裕二は、訓練の成果を見せる為に今から俺と模擬戦闘を行う。
「遅かったな」
「すいません。精神統一をしていたもので」
「でもとてもいい顔つきよ。一月前とはまるで違う」
「昔の自分を思い出しちゃいましたね」
今の祐二は人月前とは顔つきもオーラも違う。
まだナヨナヨしたところは残っているものの、心の芯が出来上がったのか真っ直ぐな顔つきだ。
特訓したかいがあったというものだ。
「周平さん行きますよ!」
「ああ、来い!」
もう模擬戦闘は必要ないと思っていた。
こないだのホーリードラゴンとの戦闘で祐二が技を習得しているのはわかったし、想像以上に強くなっているのも理解できた。
ただ祐二は模擬戦を希望した。
おそらく三日前は未完成だったあれを見せるためだろう。
「魔法剣!」
魔力を剣に纏い火を纏った剣で周平に斬り付ける。
「完成したか。合格だぜ」
「まだまだですよ~」
祐二は追加で風、水、地の魔力も剣に纏う。
「四属性か……あいつなかなかやるな~」
「ふふっ、あなたもそういえば昔見せてくれたわね」
「あの祐二は将来が有望ですね。レダさんが唾をつけたのも納得だ」
「はぁぁぁぁ!」
祐二は剣で猛追撃する。
四属性の魔法剣か……俺の想定していたのを超えたな。
少し本気をだしてしまうか……俺は神刀絶門を手にとり覇剣の構えをとる。
「祐二そのまま覇剣だ」
お互いに覇剣を繰り出す。
刃と刃がぶつかると祐二の剣は二つに折れ、模擬戦終了だ。
「合格だ」
「ありがとうございました!周平さんは凄すぎですね~」
「だろ~」
祐二と握手を交わし、お互いに微笑むと見ていた二人もそれにつられて微笑んでしまうぐらい絵になる光景だった。
そろそろ祐二編終わりです。




