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思わぬ拾い物

かつての仲間の1人と再会です。

 「二人とも戻ったのね」

 「ああ、あいつはどこだ?」

 「わからないわ……空間に穴をあけてどこかに行ったわ……」


 ようやく一区切りというとこで暗夜之礫を受けた四人……特に嶋田は憔悴しきっていた。それだけ立花の言葉は重かったのだ。言われたのが他のクラスメイトとかであったら、言い返して自分を偽り、うまく解釈したのだろう。しかしあのすべてを見透かすようなあの眼の前ではそれはできなかった。力に飲まれた嶋田は立ち上がろうとしたが上手く立ち上がれずよろける。



 ◇



-----立花視点-----


 四人の前から姿を消した立花は、今度は城への侵入をしようとしていた。


 「しかし脆い……あれで勇者とは笑わせてくれるわ……しかしあの子はなかなかね……」


 ただ私は月島雪を評価していた。彼女は私が威圧しても動じなかったし、それどころか彼女は私が手をかける気がないのも理解していた。


 「ふふっ……彼女はいったいどういう人生を歩んできたのかしらね……」


 周平があれだけ信頼していたのだ。


 それにはそれ相応の理由があるはず……ぜひ知りたいものだ。

 ただ嫉妬して排除するのだけは抑えないとね……恋愛感情はなかったみたいだけど油断はできない。


 「さて次は城への潜入ね」


 城潜入のために認識阻害の異能に加えて、創生魔法ブライアムの影を使用し姿と気配を消し何喰わぬ顔で城内を探索する。


 「さてクラスメイトの顔やお偉方の顔をチェックね」


 王座では王や上官と思われる貴族が話をしていた。


 どうやら悪い話のようだ。


 「地下牢の守りは万全か?」

 「問題ありませんぞ、あれは眠ったままです」

 「そうか……あれが目を覚めれば勇者達の士気にかかわるかもしれぬ。我々を嗅ぎまわっているやつらもいるし油断はするな」

 「もちろんわかっております。勇者には魔族の殲滅のために動いてもらわなければなりませんからな」

 「ふふっ、たくさんの犠牲のもと得た魔力で召喚だからのう。それに見合ったものを見せてもらわねばならんからのう……」

 「もう二人も消えましたからな。かつての勇者召喚と比べたくさんの勇者を召喚できる分そういったことの起こる確率も上がりますゆえ致し方ないかと」

 「うむ、それに肝心の主力メンバーは残っておる。消えたのは目立たないお荷物だ。むしろ消えてくれて都合がよい」


 (まったく吐き気がするほど不愉快なこと……今ここで殺してやりたいとこだわ……)


 しかしこの男にはまだ死んでもらっては困る。この男はもっとひどい形で落ちてもらわなければならないからだ。滑稽な事に謀略が私に筒抜けなのは死んでもわからないのでしょうからね。


 「とりあえず今は嶋田浩二を含むあの四人を中心に育成するようタピットに言っておけ。迷宮の三〇〇層攻略が終わったら魔大陸への侵攻の準備だ!」


 (とりあえずここには定期的に来て調査ね)


 気になった地下牢へと足を運んだ。地下に続く道は鍵がかかっていたが、衛兵に催眠術をかけ衛兵に鍵を開けさせる。そこには軽犯罪をおかした者等が収容されていた。


 (ここじゃない……もっと奥ね)


 もっと奥に向かうと魔力のこめた鍵がいくつもかかった扉を見つけた。


 (これは複雑ね……ぶち破るのは簡単だけどさすがにばれるか……)


 少し考え解除方法を模索する。


 (ハマジクをかけるとして……それを悟らせないよう別の魔法をかけるか…とりあえず王の書でこの解除方法を解析するか……)


 王の書でこの鍵の解除方法を解析し、その後創生魔法レキシントンの壁を発動する。

 これは一定空間の外部からの魔力の流れや動きの情報を一切遮断する魔法で、その状態でハマジクを使用し魔力効果のついた鍵を解除する。


 (ちょろいわね)


 奥に進むとそこには厳重な檻が何層にも張り巡らされた場所だった。


 「これはハマジクの檻……どうしてこんなところに……」


 ハマジクの檻の鍵を無理やりこじ開け中に入る。


 (これはだるいわね……)


 ハマジクの檻は純粋に同じハマジクが付与された鍵で開ける以外は無理やり破壊するしかない。開けるにしても、ただハマジクを付与するのではなく、その檻の特性を見極めた上でそれに合うように付与する必要がある。ちなみにそれができるのは世界でも皆無であるため、ハマジクの檻は神の遺物の伝説級のアイテムなのだ。


 少し時間がかかったものの解除に成功した。


 (さて何があるのかしら?)


 さらに奥へ進むとそこには男がいた。見た所眠っているみたいだが、近づくとバリアのようなものが発動する。


 というかこの男は……


 「神物理障壁と神魔障壁か……まったく暢気なものねミノル。てっきりあの時死んだものだと思っていたけど……転生せず生きていたのね」


 天竜院実、境界騎士団ナンバー十三。初代勇者にして災厄の英雄デス・ディザスターと呼ばれた居合の達人。周平の最初の弟子でもある。


 まさかここにいるとは……


 「マースクの嘆き!」


 実を囲むバリアは解除され、実は目を覚ます。


 「ふはぁ~長いこと寝てたな。うん……ここは?」

 「お目覚めかしら実?」

 「立花さん!なんで……というかここはどこ?檻?」

 「あなたなんでここで寝ているのかわかってないのかしら?」

 「たしかあんとき心臓を突き刺されて……横で九十九ちゃんが泣いていて……」

 「落ち着きなさい実。ここはあなたが心臓を貫かれてから百年ちょいがたっているわ」

 「百年?つまり瀕死だった俺は百年ほど眠ってたんだな」


 状況を理解していない実に今の自分の状況を伝える。転生した自分と同じく転生した周平と二人で旅をしていることや、今生存が確認されているメンバーは高天原九兵衛とレダ・スパイラルのみであるということを。


 「そうか……あの戦いはどうなったのか覚えてる?」

 「私が死んだ時点では戦いは終わってなかった。ただ勝利目前ではあったけどね。あの時点では騎士団もレダさん、九兵衛さん、ロードリオンしかまともに動けるメンバーはいなかったけど、たぶん勝利で終わったんだと思うわ。だからそれを九兵衛さんに会って確かめる所よ」


 あの時偽神と相打ちをして私は死んだ。偽神が表にでてきていない現状、あの戦争は私たちの勝利はほぼ間違いない。だがまだ推測でしか語れない部分が多く、まだまだ聞きたいことはたくさんあるのだ。


 「そうなんだ、周平さんと一緒に旅してる立花さんについていくのは気が引けるけどとりあえずついて行っていい?」

 「ええ、かまわないわ。あなたがいても私たちはイチャイチャするし何の問題もないもの」


 それを聞き実は苦笑いをするが、実の笑い顔を久しぶりに見て懐かしく感じた。

十三人で神殺しの戦争をした時から百年ちょっと……私は百年待ったわけではないけど、実際に百年待ち続けているメンバーもいるはず。


 早くみんなと再会したい……


 「さてここからでましょうか」

 「ああそうだね、そういえばここはどこ?」

 「ファーガス城の地下牢よ」


 それを聞いた実は温厚な表情から一転、怒りをあらわにする。


 「ファーガス城……なぜ俺がファーガス城で眠っているんだ。何故この国はまだのうのうと存在しているの?あの時ここも潰すはずだったよね?」

 「それは私もわからないわ。忘れていたけどあなたはこの王国にたいしてはそうだったわね……」


 初代勇者としてファーガス王国に召喚され数々の功績をあげたものの裏切られ自身も死にかけた。私たちが彼を仲間にいれたのはその時だ。実の絶望と狂気に満ちた目を元に戻すのには周平も苦労していたのを覚えている。


 「立花さん……ここをでようか……ここにいると壊しちゃいそうだ……」


 実は伝説級の武器愛刀、虎徹零式を具現化する。


 「そうね、ここはまだ利用価値がある……だから今は私と行きましょう」


 ゲートを開き、鍵をふたたびかけ、魔力の鍵の扉も元のままに復元する。


 「さぁ行きましょうか」


 実を宥め、ゲートでアホヌーラ山脈へと戻った。



次は久しぶりに主人公の出番です。


境界騎士団

周平や立花を含む十三人で構成されており、一人一人が超人的な力を持つ。

かつての大戦で活躍したが、死亡・転生等で現在では離散している。

(最終的に全員登場します)



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