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ちょっと長めです。

 ------立花視点------ 


 王都を探索していた。


 「さて、周平のクラスメイト達の顔を何人か見ておきたいとこね」


 私は創生魔法バードキャッチャーの線を発動し王都全体に張り巡らす。


 「城のほうに一人そこそこなのがいるわね。たぶんこれは騎士団長ね。後城にいるそれに近いのが何人かいるからこれは召喚者ね。それぐらいのが全部で三十人ぐらい各地にいるわね。騎士団長よりも強いのが何人かちらほらいて……近くにいる四人組は恐らく周平と親しかった子がいる可能性は高いわね」


 私はその方向に向かって歩いた。ここにが来た目的はいくつかあり、まずは周平と親しかった二人の女性を見ること。私と周平の恋路を邪魔するようなら何かしらの手を打たなくてはないからだ。そして周平をないがしろにしてきたクラスメイトの顔を見ておくこと。


 最愛の人が受けた痛みを私は忘れない。


 今後何かしらの形で戦うかもしれない相手でもあるのでしっかりと見ておきたい。まぁそうなったらその戦いは殲滅になるけどね。


 「しかし来た時よりもにぎやかなになったわね~」


 街の雰囲気が一年前来た時と少し変わっているのを気づいた。おそらく勇者の召喚だろう、にぎわっているのは悪くないが、そもそも魔族を倒すための遠征など馬鹿げている。


 本当に醜い国だと私は嘆くところだ……騎士団メンバーが全員揃っていればこの国を十三人で制圧してやるのに……


 「このお店か……」


 立花はそのおしゃれなレストランヘと足を運んだ。


 「おいあれ凄い美人じゃないか……」

 「ほんとだ、召喚された勇者様達と似たような感じだな」

 「なんて綺麗な人だ……」


 さすがに目立つわね……だけどこの姿で会うことに意味があるのだ。


 そんな外野を無視して席の方へ向かうと、男女の四人組の日本人が目に入る。


 「あれね……」


 さっそく近くに座り四人を観察し始めたのだ。



 ◇



 その少し前に四人は昼飯にそのレストランに入って昼食をとっていた。


 「ここの料理は城の飯より美味しいだろ?」

 「ほんとね、なかなかだわ」

 「王宮の料理は味が薄いだろ、だから浩二と色々回って探したんだ」

 「木幡も嶋田もいい仕事したわね」

 「うん、二人ともありがとう」


 雪と美里が喜色な表情を浮かべているの見て、二人は心の中でガッツポーズをする。


 「二人が喜んでくれて何よりだ。竜也と色々探したかいがあったね」

 「ああ、他にも色々あるからまたおいおい案内させてくれ」

 「ええ、よろしくね」

 「明日で迷宮攻略を終わらせられるといいね」


 雪が明日の話を持ち出すと、他の三人も少し忘れていた現実に一瞬で戻され表情が硬くなる。


 「これ以上いなくなってほしくないからな……」

 「ああ、そのためにもこれからも僕が引っ張っていくつもりさ。これ以上誰も欠かさず元の世界への帰還を果たしたいからね」


 嶋田は正義感が強い。

 これも本心で言っているのは間違いないのだろうが杉原が怪訝そうな顔を見せる。


 「果たしてそううまくいくかはわからないわね」

 「俺も同感だ」

 「二人ともそれはどういうことだい」

 「もし迷宮攻略が終われば、今度は魔王軍との戦闘が始まるわ。そうなれば死者がでる確率もあがる。そういった意味じゃ尾形君の判断は元の世界に帰るのと、クラスメイトを気にしないのであればいい判断だったと言えるわ」

 「確かにそうだな。俺達は仮にそう思ってても、重要な戦力が脱走などしたらクラスの士気が駄々下がりだ。それと……」


 木幡は横を向きこちらをずっと見る女性へと声をかけた。木幡の目から見て、日本人のようにも見える。とても綺麗でスタイルがいいその女性は、二人の目から見ても雪や美里以上にも思えた。


「あんたさっきからこっちジロジロ見て一体何か用か?そんなに俺達の話に興味があるのか?」


 四人をずっと見ていた立花は口を開いた。


 「あら、気づいていたのね。嬉しいわ」

 「あんた、見た所日本人か?」

 「ふふっ、召喚された勇者を一目見たくてね。ちょっと偵察にきたの」


 立花を見た四人は得体のしれない何かを感じ取っていた。自分達以外に日本人がいること事態に驚きだが何より感じるオーラが只者ではない気がしたからだ。


 「君は一体何者だい?もしかして俺達と同じように召喚されたのかい?だったら俺達と一緒に魔王を倒さないか?」


 嶋田の言葉に立花は不快を隠せない。この男はいったい何を馬鹿なことを言っているのかと立花は嘲笑する。


 「ふふっ、あなたは本当に愚かね」

 「なっ……」

 「私は自身でここに飛んできたのよ。あなたたちとは違うわ。それとあなたが勇者のリーダー格っていう噂を聞いて来てみたけど実に期待外れね……」


 立花は溜息をつく。素直にあの国の言うことを聞いてるからこんなことが言えるのだと落胆する。勇者達は元の世界への帰還が最優先だ。それ故に視点を変えれば気付くかもしれない召喚のからくりにも気付く事もなければ、ファーガス王国を疑うこともない。


 「なぜ魔族と戦うの?なんで魔族と人が戦っているか知っているのかしら?魔族が悪なんて誰が決めたのかしら?」

 「あなたが何者か知らないけどここであまり魔族を擁護する発言をしても得はないわ。周りの人も考えて発言すべきね」

 「だったら周りが聞いてなければいいのかしら杉原美里さん?」

 「なぜ、私の名を……」


 美里は自分の名前を言われて一瞬動揺する。そして立花は魔法を唱えた。


 「エミリウスの宴!」


 立花のこの魔法で王都全体の人間を石化させた。昔の戦争ではこれで大きな街をいくつも機能停止させ、時には石像となった人間を砕いた。


 「なっ、周りの人が石に……」

 「王都全体にいるすべての生物を石化したわ。これで話を聞かれる心配はないわね」

 「貴様……」


 四人は戦闘態勢を取ろうとするが、どうやっても勝てないであろうことを体で感じ取っていた。四人だけ意図的に石化をしなかったことを考えれば、やろうと思えばできたのがわかるからだ。


 「ふふっ、四人とも体が震えているわ。別に話が終わればここを去るし石化も解除するわ。あなたたちをどうにかしようなんて思ってないから安心しなさい」

 「それを信用しろと?」

 「あなたは本当に愚かね嶋田浩二君、信用も何もあなたたち殺すつもりならもうやっているわ。それもわからないのかしらね?そこの月島雪ちゃんはそれをわかっているから私に対しての敵意はでていないわ。彼女を見習いなさい!」

 「うん、そこの女の人の言う通りね。もの凄く得体は知れないけど私たちは素直に話を聞くべきかも」


 三人は雪の言葉を聞いて落ち着きを取り戻す。


 「それで一体何しにここに?」

 「ふふっ、いずれ戦うかもしれないあなたたちの顔を見に来た感じね」

 「何!」

 「まぁ戦ったら私のワンサイドゲームでただの殲滅になってしまうでしょうね。今石像になった人間を全員砕けば王都は壊滅、王様も勇者もみな死ぬでしょうからね」

 「やる気か……」


 立花は四人を挑発する。これは周平を少なからず何かしろの形で傷つけた男二人へのささやかな報復だった。もちろんこれで終わるつもりはなく、他の相手にも報復も徐々にするつもりだった。すぐに終わらせず、徐々に追い詰める。そのほうがより効果的であり、相手をより苦しめることができるからだ。

 殺す相手への報復はまず精神を破壊し、その後に肉体を破壊する。立花の中ではこの二人は殺すほどの報復を与える必要はないと考えているので、直接何かするような事はしないが、相手によっては手をかける可能性もあるだろう。だがそれ同時に愚かな勇者には変わってもらう必要もあった。


 「それ本気で言っているのかしら?」


 その言葉に三人の表情が曇ったままだ。まともに戦ったら5秒と持たないのは一目瞭然だからだ。


 この女は一体何者なんだ?

 なんで自分達の名前がわかるのか?

 加えてこの魔力に見たこともない魔法。

 

 雪を除いた三人は得体のしれない立花に恐怖を感じ、雪はまた別の感情を抱いていた。


 「この国とファラリス連邦は魔大陸の資源と人より強い魔族やその他の種族の根絶やしのために一方的に魔大陸へと遠征を行っている。そのためにあなたたちは召喚されているわ。ちなみに最初に吹っ掛けたのは人間側よ。この争いを起こしたのは人間側でそれまでは平和だったのよ」


 その言葉に三人は考えている風だったが嶋田はすぐさま反論をした。


 「それはつまり人側が悪というのか?」

 「それは考え方ね。あなたはどうも考えたくないことや自身の思い通りにならないことに関しては考えないで目を背け自分のいいように解釈するくせがあるのね。少しは国を疑うことを覚えたほうがいいわ。」

 「そんなことは……」


 嶋田は言い返そうとするが、立花はそれをさせまいと嶋田の口を紡ぐように続ける。


 「きっとあなたは今回のことも悪い夢で片づけるわね。自分の考えたくないことや手を出したくないことは目を背けても代わりに仲間がサポートしてくれるものね?そんなあなたはなるべくして勇者になったのだろうけど所詮それまで。都合の悪いことに目を向けなければ進歩はない。ただの愚者そのものね」

 「貴様、浩二の何を知ってやがる。言いたい放題言いやがって……」


 我慢できなくなったのか木幡は怒鳴るように言うが、嶋田の表情は曇ったままだ。


 「じゃあ木幡竜也君、今の私の話に間違いはあるかしら?彼の目はそれを物語っているわ。それに私の今の問いかけに唯一否定的な顔をしたのも彼だけよ。ちなみにそれが事実だとしてというか事実なんだけどそれを踏まえて嶋田浩二の意見を聞きましょう」


 立花のその質問に嶋田は答えた。


 「俺は……魔族がなぜ人を襲うかなど考えたことはない……魔王を倒せば俺達は元の世界に帰れるかもしれないし元の世界に帰るためにはそれを信じて戦うしかないと思っていた。仮にそれが事実だとしても俺はそのことに胸にしまい戦うだろう」


 嶋田は元の世界に帰るためにはそれしかないと考えていた。元の世界に帰る為なら国の言うことを聞いて動くしかないと。それがそのための近道だからだ。


 「浩二……お前……」

 「これが彼の答え、彼に正義の味方の自覚があるなら少し考えを改める必要があるわね。はっきりいって偽善者そのものね」

 「もういいだろ……これ以上浩二を……」

 「木幡竜也、あなたは少なくともその疑問は頭にあっただろうし、今の話を聞いた以上国を疑うことを覚えたはずね。そこの二人とあなたは力をつけたら王国に反旗して帰還方法を吐かせるというビジョンを多少なりとも浮かべただろうけど、その男はそのビジョンすら浮かんでない。そしてそんな男がリーダーとして周囲を引っ張る。これがどういう意味だかわかるかしら?」

 「それは……」


 木幡は何も言い返せない。そう彼もまたわかってしまったのだ。嶋田が今のままリーダーであり続ける事が危険である事を理解したのだ。


 「あなたはこのままいけばクラスメイトを殺すわね。国という大きな力に身をゆだねて動いている王国の狗そのものよ。何しろ彼は汚れるということに大きな抵抗を感じている。汚れないことを前提にしか考えていない以上いずれはそうなる」


 嶋田は何も言わない。というか何も返す言葉が出てこないのだ。目の前にいる絶対的強者の圧力と冷たい言葉は、嶋田のメンタルを容易に崩壊させることができるだろう。しかし立花とて嶋田を壊すためにここに来たわけではない。


 「もしあなたに変わる気があるなら……リーダーとしてみんなを引っ張る自覚があるなら何が一番大切で自分が何をすべきかしっかり見極めるべきよ。あなたならその素質はあるみたいだし」

 「俺は……」

 「今は目の前のことに集中してそれはおいおい考えていけばいいわ」


 それを告げ嶋田を石化する。


 「なっ……」

 「さて木幡竜也……あなたはどうやら一皮むけかけているみたいだし私の言葉はいらないわね。もともとあなたは物事を客観的に見る能力はあるみたいだしね。しっかり彼をサポートしてあげるといいわ」

 「お前は一体……」


 木幡も石化させる。


 「さて目的は果たしたし私もそろそろ帰るわ」


 立花は立ち上がり雪と美里に近づく。二人は近づく立花に警戒するが動くことはできない。その鋭い眼光とさっき見せた力が二人を委縮させているのだ。


 「わ、私たちも石にするつもり?」


 美里はオーラにのみ込まれる中精一杯の声をだして言う。


 「私がここから離れたら自動的に王都全体の石化は解けるようにしているわ。だから安心しなさい」


 立花は優しい顔を見せる。まだ名乗るわけにはいかないが、あんまし敵意をだすのも後々よくないだろうと態度を軟化させる。


 「ごめんなさいね、少なくともあなた達二人に敵意はないわ。一応彼があなたたちを導くために必要な試練を与えただけだし」

 「試練?」

 「そう、試練よ。彼が自分自身の牙を持つためのね。迷宮攻略頑張りなさい。あなた達二人は死んでは駄目よ」


 急に態度が変わり二人は困惑する。

 彼女は一体何がしたいのか?真の目的はなんだ?と頭で推測する。しかし二人ともその答えはでてこないまま、立花は二人に近づき囁く。


 「連れがお世話になったわね……ありがとう……」

 「えっ……」


 囁くとすぐに離れゲートを開く。立花としてもこの二人はちゃんと生きていてもらわう必要があった。

 その為すぐにでも連れ出すべきだろうと考えたが、今はまだ駄目だと自制する。それに周平の記憶が完全に戻るまでは連れて行きたくはなかったからだ。加えてこの二人がこの国にしっかり絶望してもらう必要もあった。立花の中で周平にとっての一番が常に自分である必要があるからだ。


 「それじゃあね」


 立花がゲートで消えた直後店が急に騒がしくなる。石化した人が全員一斉に動き出し、外で石になっていた人もしっかり動き始めたのだ。


 一体今のが何だったのか?

 彼女は何者なのか?

 四人は当然この時点はわからなかった。わかったのは自分達と同じように地球の出身者で、相当強いということだけだった。



主要メンバーの独白はちょいちょいいれていきます。

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