立花の独白
この話で立花ちゃんが独占欲強い子だってのがわかりますかね。
---立花視点----
私は夫であった周平が死んだとき悲しみのあまりその感情を抑えられなかった。原因も明確にわからなかったのもあり、私はぶつける所がわからず困惑してしまった。ただ周平が死んだ原因はこの戦争にあり、私はその報復も含めて戦争を終わらせようと考えた。仲間も何人か離脱していたが戦局は優勢だったし報復も含めて奮闘した。
怒りに任せ何人もの敵を殲滅し、九兵衛さんや妖精王のロードリオンには何度も落ち着けと言われたしエミリアやレイチェルはそんな私が恐ろしかったらしく、私にはいつも気を遣っていた。
それも当然か……敵サイドの街、今のファラリス連邦の首都あたりにあった当時の大きな街での戦いでは数万人の敵兵を石にして砕いてやった時の彼女達の恐怖に悶える顔を忘れない。それまでは周平やその他武闘派のメンバーが私の代わりに敵をなぎ倒していた事もあり、再開後の今の彼はとても優しくなったと思う。
戦争中も私は彼の転生した先を死体から特定していた。彼が転生していたのはわかっていたしその先を探し続けた。正直完全な特定はできなかったけど、転生先が地球なのは一緒に特定してくれた九十九ちゃんのおかげでわかった。そこで私は彼と同じ時代の近い場所に転生するように魔法をかけた。
さすがに色々捻じ曲げるためには自分一人の力では無理だったので、自身の死をもってそれがしっかりなされるようにロードリオンの助けを借りたのだ。
待っていればよかったのでは?
そんなことを言うメンバーもいたが私は我慢ならないことがあった。彼にとっての一番は常に私でないといけないのだ……私がいない間少しでも付け入る女がいては困るのだ。彼の一番は常に私で私にとっての一番も常に彼なのだ。これは彼と初めてあった時から私にとっての決定事項であり何者にも覆せない絶対的な決まりなのだ。
それを邪魔する奴には容赦はしない……
だから私が戦争終盤で偽神との相打ちをした時も一人が犠牲になれば被害が抑えられるという状況だったので私は進んで相打ちを選んだ。その時残っていたメンバーの大半には悲しがられたが、ロードリオンや九兵衛さんが後は任せろと言ってくれたので安心して死ぬことができた。転生するとき私は記憶と能力をしっかり引き継げるようにしたので、転生して生まれてから今に至るまでの出来事は大抵覚えている。
三歳になると隣に住んでいた周平の家によく行くようになっていた。私を産んだ親と周平の産んだ親同士が親しかったからだ。私と周平の仲をより決定的にするためにあの人達がお膳立てしてくれたのかもしれないが、それはあの人にいずれ会って直接聞かないとわからないところだ。
その時の周平はあの時の面影をしっかり残していて周平だと実感できたし、転生は成功したと歓喜したのは今でも忘れない。そこから私はアタックして刷り込みをした。卑怯かもしれないが付け入る隙を完全に与えないためだ。当時は無邪気でかわいい子供だったが、ちゃんと私になついてくれたので後は彼の記憶を完全にすれば完璧だった。
小学生に上がる頃には彼は私のことを幼いながらしっかり意識していたと思う。中学生になるともっと意識してくれたからつい私もじらしてしまった。中学生の時も私と周平の仲を邪魔しようとするやつはみな敵として扱い排除した。生徒会長になり副会長を彼にやらせた。それでも自分からのアタックは高校に入るまで延ばした。周平から来てくれるのを少し期待したが距離が近すぎて逆に躊躇してしまったらしい。だが高校に入る前にアクシデントが起きたのだ。
「なっ……」
エクリプスと地球をつなぐ時空の歪みを感じ取り、それを調査していたら私はそれに巻き込まれエクリプスに飛んでしまったのだ。ちょいちょい歪みを感じとっていたが、その時の歪みが特に大きく調査に行ったのが原因だ。
「ここは……」
「ここはファーガス王国の首都アスタルテよ。ようこそ大賢者」
「あなたは何者かしら?」
「私に名前などありません。私はこの娘の体に入りあなたに話しかけているだけの存在です」
「あなたの目的は?」
「迷宮の最下層まで行ってください。そこにあなたの望む答えがあります」
女の子はそれだけ告げ意識をなくしたので、仕方なく私は迷宮の最下層を目指した。
「ここが一番下ね……」
一〇〇〇層のボスはなかなかだったけど倒せないわけでもなかった。一〇〇一層の扉を開けると水晶がありそれに触れた。
「久しいな、フォルモサよ」
「あなたでしたか黒姫」
水晶から聞こえてくるのは二十柱のナンバー二、リンデント・ヘルム・クルシフィックス。通称黒姫と呼ばれており、私や周平を二十柱にいれたのもこの人だ。
「そう怒らないで欲しいものだ」
「あなたのせいで周平とまた離れてしまいましたがこの責任はとれるのかしら?」
「安心せい、転生後も小さい頃からあれだけ接触しておけば、お主以外の女がでてきても心を奪われることはない」
「ですが彼と離れる期間が長ければ隙もでてきます。私は彼の一番でないといけないのですが?」
「まぁまぁ、あやつは今から五五〇日程度したら今いるこの場所に来る。それは私が保証しよう」
「あなたの能力でそれを特定したのですね。でもこちらに来ることのできないあなたに太鼓判を押されても半信半疑ですね」
五五〇日も離れたら周平に変な虫がつく可能性がある。
そんなことになれば………駄目だ考えただけでこの国を滅ぼしたくなるわ。
「相変わらず変わらんな。だがその気持ちはわかる……私はまだだからな……」
黒姫が寂しげな声をだす。
そうだった、二十柱のトップはまだ眠ったままだったわね……
「それで変な虫がつく可能性は?」
「親しい異性はできるが、あやつにとっての一番はお前のままであることは覆らないし、初めてを他の女で捨てることはない。わらわの聖痕がそれを保証する」
「ちっ、虫がつくのか……まったく余計なことを……」
あの人と五五〇日も離れ離れか……まったくこの人じゃなければただじゃおかなかったのに……
「怒りはもっともだが、これもあやつの覚醒には大事なことだし、あやつがここに来てお主のそばにい続けるためにはこれは大事なことじゃ」
「未来と理想を見る能力はさすがですね。ではその五五〇日をここで待つことにしますよ。あなたから聞きたいことがありますし」
「うむ、この水晶はこの国が勇者召喚に使う魔力タンクから少しかすめ取ることで機能しているからあと五二〇日程度はお主の話相手になろうぞ」
「それは良かったわ。さすがに五五〇日も一人だと退屈ですからね」
私は黒姫から色々話を聞いた。
ただ一番聞きたかった前世での周平の死は黒姫自身もわからないらしい。彼女の能力を持ってしても、こちらの世界に来れないままでは完全には機能しないらしく、過去と本質を見る魔痕を使っても何かに遮られて見えないあたり、意図的に見えなくしたと考えるのが妥当だ。
五二〇日程度が経ち、黒姫との通信が切れた後は一人で色々準備をした。愛しくてたまらない彼が覚醒して私の元に来てくれるのは待ち遠しかった。
そして五五〇日が経ち彼は来てくれた……記憶こそ不完全だったが力を元に戻して来てくれたことはとても嬉しかった。あの時の続きがやっとできると歓喜したからだ。
私は早速関係を強要し彼もそれを受け入れた。予想通り付け入る虫がいたが、彼にとっての一番は私のままだったしそこは水に流そうと思う。
「ふふっ」
愛しているわ……私はあなたのことなら全部わかる。性格もしぐさも好きな食べ物もすべて……私以上に彼に相応しい者などいない。そのための努力はずっと欠かしていなし私はこの先もずっと彼の一番で居続ける。
私が王都でクラスメイトを変に手をかけたら周平はきっと怒るだろうから我慢だ。
ただ何もしないわけにもいかない。
彼のために良き妻の役目も果たさないと……
私は自分の中で整理をして、周平の仲の良かった二人に接触することに決めたのだ。
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