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陣とアンの脱出

久しぶりすぎて内容頑張って思い出してます(笑)

 夢の世界でのオンラクとの戦闘が終わり、元の世界に戻った。精神は完全に破壊したとはいえ身体は健在。元の世界で動かない抜け殻のオンラクを攻撃して消滅させればいい簡単お仕事だが、最後まで仕事はこなさなければならない。


 「さて君の身体を消滅させて終わりだ……」


 神樹の拘束を解き、オンラクを覆うクリスタルを破壊した。リオンが神弓グラートにて矢を放ったその時だった。


 「なっ……」


 放った矢がオンラクの身体に当たるとそのまま砕け散ったのだ。


 「どういう事だい?精神は破壊したけど身体は無事。この攻撃一回で身体ごと消滅するのはあり得ない」


 矢が当たって身体が砕けると同時にオンラクの気配が完全に消失した。


 「夢の世界での破壊はこの世界の破壊とイコールではない。一体……まさか!」


 リオンは気配探知を行うとその異変に気付いた。


 「ここは妖精の大陸ではない……木々や数キロ離れた村人の気配すら感じないのはおかしい!」


 リオンは来た道を戻り穴から出ると見た事のない景色だった。周囲に人の気配が感じない事や見慣れない地形から察するに偽神達の異空間移動が発動していた事になる。


 「あいつまさか……」


 リオンが頭に浮かんだのは、オンラクの節制の力の出力が、夢の世界にもかかわらずあがった瞬間があったが、あの時に自身の身体を自壊していた可能性だ。


 「予め僕をこっちの世界に呼び寄せる事が目的だったという訳か……あの力は見せてなかったから高を括っていたけど……」


 舌打ちをしながら森の中を進んでいると気配を感じた。


 「リオン~」

 「九兵衛か!」


 こっちの世界の事は夢の力を通じて聞いていたリオンだが、実際に再会できた事に安堵した。


 「君も来てしまったか~」

 「来るつもりはなかったんだけどね」

 「仕方ないさ~ただ君から聞いていた戦い方ならいけるとは思ったけどね~」

 「シンは魔法で異空間へと誘導して駄目だったから、僕は夢の世界で精神を破壊する方向でいったけど向こうの方が上手だったね」

 「来てしまった以上、気にしてもしょうがないさ~シンや彼の元に案内するよ~」


 九兵衛はリオンを目的の場所であるクリスタル状の宮殿へと案内した。そこには九兵衛とシンが滞在しており、そして持ち主とも言えるもう一人がリオンを待っていた。夢の力で九兵衛やシンと会話をしてその存在を知った時は驚きを隠せなかった。


 「しかし本当に彼がここにいるとはね」

 「ああ、俺もこっちきて会った時はびっくりしたさ~」

 「ハハッ、そりゃそうだね」


 宮殿の奥の玉座へ向かうと玉座で座っていた男が立ち上がる。

 リオンと九兵衛にとっては馴染みの深い人物であり、千年前の神争を経験したメンバーであれば知らぬ者はいない。あの時からの生き残りは数少ないが、死んでいった者達の無念を考えれば、そんな彼に複雑な感情を抱く者もいるだろう。リオンもいざ対面するとなると少し複雑な思いがあった。


 「こうしてまた会えるとは思いもしませんでした」

 「それは僕の台詞さ。あの時の暴走で消滅した君がこうして目の前にいるんだから」

 「それもそうですね」

 「昔話に花を咲かせたいけど、その前に話を聞かせてもらうよ、ガロピン!」


 リオンを待っていたのはかつて二十柱を目指し、神争時に力を暴走させたダークエルフ、ガロピンだ。自身の経緯やこの世界について語り始めた。



 ◇



 知恵の神カナーンと戦闘にて異空間で抜け出せなくなっていたジンとアンだが、体感で約一か月は彷徨っていた。


 「飽きた!どこ進んでもゴールが見えないし一体いつ解けるんだ!」

 「全く嫌な相手です。ですが私は陣と二人でいるので大丈夫です」


 アンは陣と身体を密着させながら何もない異空間を歩いており、何もない空間での陣と二人きりを楽しんでいたが、陣の方は抜け出せない事で焦りを感じていた。


 「一人じゃないのは救いだな。だが俺が力を使おうとしてもうまく機能しないしどうなっているんだか……」


 知恵の神カナーンの能力について、予め他のメンバーから聞いていたわけではないので、この技の対応策が分からず彷徨いながら様々な方法を試していた。過去に対峙した事があるメンバーなら対策を知っていたのではと思って、昔話を聞かなかった事を少し後悔したが、まさか百年前に倒している偽神と対峙する事を想定できるわけがなかった。


 「謎ですよね……歩いても喉も乾かなければお腹は減らないし、寝ようと思えば寝れますし」

 「少なくとも俺達の身体の時間と精神の体感とでズレがある事は間違いない。俺達の身体もどうなっているのか気になるが……」


 現実の時間とどれぐらいズレているかも気になる。いくつか考えられる事もあるが、それも仮説にすぎない。


 「恐らく止まっているとみて間違いないとは思いますが……」

 「きっとボリアルの主要戦力がファーガスを攻めているに違いない……クソッ!早く抜け出さなければいけないのに……」


 実際の戦争こそ周平が主導で動いて、撃退し殲滅したがこの時点では2人は知らない。カナーンが自分達の足止めに使われるぐらいには戦力が潤沢とみていたので、ファーガスに向かえず足止めされている事に苛立ちを覚えていた。


 「焦りは禁物ですよ……確かに体感約一か月はいる気がしますが、このままずっと2人でもアンは幸せです……」

 「おいおい……」


 陣は少し呆れながらアンを見ていると空間に異変が起き始めた。


 「なんだ?」

 「分かりませんが大きく揺れ始めています……キャッ!」

 「危ない!」


 陣はとっさに羽を生やしてアンをお姫様だっこで抱えて飛ぶと、さっきまで歩いていた所に亀裂が入り崩れ始めた。


 「大丈夫か?」

 「はい、すみません。しかし急に何が……」


 空間の揺れは大きくなり、歪みと共に空間にヒビが発生する。


 「空間が消滅する。脱出するチャンスかもしれない……抜けるぞ!」

 「はい!」


 アンを抱えたままバリアで身を覆い、ヒビの生えた先へと突っ込み、光の見える方向へと向かった。



 ◇



 「気づいたかしら?」

 「え、エミリアさん!」


 気が付くとカナーンと戦っていた場所に戻っており、エミリアが陣とアンを介抱していた。


 「気が付いたのね」

 「アンは!?」

 「隣でスヤスヤ眠っている、そのうち目が覚めるわ」


 アンが横でスヤスヤ寝ており、さっきまでの異空間での崩壊での焦りが嘘かのような良い寝顔だ。


 「良かった……カナーンは?さっきまで戦っていたのですが、異空間に引き込まれそのまま姿を消して……」

 「やはりカナーンと戦っていたのね」

 「はい……クラウン・ポーターという男と対峙した後、奴が出てきて追い込んだら異空間に飛ばされて……」

 「そういう事だったのね。あいつならもう大丈夫、今のカナーンならこれよ?」


 エミリアは宝玉のようなものを陣に見せた。


 「これは?」

 「カナーンはもう消滅して、これはその力の一部ね。もしかして奥の手である禁断の幻想を使われたんじゃない?」

 「そうです」

 「あれは対象を精神世界に誘い、精神的に追い詰め、身体を封印してくる技なのよ」

 「なるほど……現に一か月ぐらいは体感で彷徨いました」

 「あの技は発動して閉じ込めている間は術者自身も身動きができなくなるから、破れば抜け出せる。だけどあの技の発動で陣達を抑え込む為の力が足りずそのまま命を使って消滅したみたいね」


 カナーンは陣に術を破られた時点で陣達への術の展開を半永久的にして封印状態を維持する為に命を代償にしていた。本来のカナーンであればそこまでしなくても抑え込む事はできたが、一度倒され全盛期の力を失っているカナーンに二十柱を抑え込む力はなかった。

 だがリヴリアがファーガスを攻める為に脅威になると感じたカナーンが命を懸けて陣を足止めしたのだ。


 「なるほど……確かに最後にカナーンと会話してからあの世界で気配もなかったし、破った後は幻覚もなかった」

 「一度消滅して、全盛期の力を失っているカナーンには二十柱を抑える力はないからね。ただ発動中に命を削ったから術が変な形で永続発動して、陣達は封印状態としてクリスタルに覆われていたのよ」

 「最後向こうで空間が崩れましたけどもしかしてエミリアさんが?」

 「ええ、クリスタルを破壊したわ。この宝玉はカナーンのエネルギーの残滓でクリスタルを破壊した時に手に入ったの」

 「そういう事ですね。何はともあれ抜け出せて良かった……そうだ戦争は?俺達はどれぐらい封印されていました?」


 陣はハッと思い出し切羽詰まった表情を見せると、エミリアはニヤッとしながら言葉を返す。


 「陣達が封印状態だったのは一か月ぐらいね。だけどその間に戦争は終わったわ。ファーガス王国の勝利よ!」

 「良かった~」


 陣は安堵の表情を見せる。


 「周とアーシアと椿と私で、敵の主戦力だった反魂(リバース)憑依(ソウルチェンジ)で復活した猛者達を殲滅したわ。特に首謀者だったリヴリアはアーシアが倒したのよ。結果アーシアは巻き添え喰らって無の空間にいるみたいだけどね」

 「リヴリアって確かアーシアちゃんのお父さんで百年前の戦争で周平達が倒した奴ですよね?」

 「そうよ、ボリアルではドミノと名乗りボリアルの裏で暗躍していたみたい。クラウン・ポーターに狂気の研究をさせて反魂憑依を実現させたのが今回の戦争に繋がった」


 エミリア自身もドミノの正体やクラウンの研究までは突き止められてなかった。反魂憑依の研究や、今回のファーガスを攻める計画も含めて悟られないようにそれだけ秘密裏に行っていた。


 「クラウン・ポーターはカナーンと戦う前に対峙しましたが彼は?」

 「周の炎で飲まれて跡形もなくなったわ。だからもう安心よ」


 クラウン・ポーターはリヴリアと別れた後、ファーガス軍が撤退した際に好機と捉えてゾンビ兵を引き連れて攻めた所を魔神化した周平の獄炎に焼かれ、ゾンビ兵もろとも消滅、研究資料もエミリアの手によって全て回収された。


 「それは良かったです。早く戻って次の一手の為に動かないといけませんね」

 「ええ、周には陣達を見つけて連れて帰ってくるように言われているわ。ギャラントプルームに戻りましょう!」


 一月に及ぶ陣とアンの戦いは終わり、二人はギャラントプルームへと帰還した。


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